いさひな+ふきさこ 避難場所の話「ヘイしゅーちゃん! これ着てて!」
「なんでだ」
「バスケのダンクには邪魔なんだよー。すぐ戻ってくるからさ」
学ランをアンダースローで投げて寄越した伊佐は、颯爽と腕まくりをしていた。12月もそろそろ終わろうというこの時期に寒くないのか。
あぶないあぶない、と小声で呟きながらお気に入りのヘッドホンもそそくさと外す。
「TikTok用にね? なかっちともっちゃんがダンクキメてる動画撮りたいんだって〜。カッコよく撮ってねって言っといたから、あとでしゅーちゃんにも見してあげる」
なかっちともっちゃん。クラスメイトの田中と橋本か。バスケ部の冬の選抜予選も終わって余裕が出来たのだろう。詳しくは知らんが。
折角生まれ持っての高身長で男のロマンであるダンクシュートをしないのは勿体ないんだって。知るか。そんなもん。
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