女性が少し、苦手だった。
押しの強い人だと尚更。今はまだマシな方で、昔はあの独特な匂いを嗅ぐだけでも座り込みたくなる程気分が悪くなってしまう程だった。
良くある理由だ。過去のトラウマ。竜の一族なんていう、碌でもない里の碌でもない因習。長の息子であるからと、ある年齢になってから夜な夜な女を送り込まれる日々。世間の常識からは大きく逸脱した行為は、この歳になっても未だ根深く小生の記憶の奥底に巣食っている。
今はもう、自分の交友関係をある程度制御出来るし、そもそもこの歳の男にあからさまに近付こうと思う者も少ない。愛し尊敬する人生のパートナーも得ることも出来、愛される喜びを知る事ができた。
恵まれていた。幸せだった。だから、突然のそれに、自分自身上手く対応が出来なかったのだ。
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