己の血で霞む視界の先から、高らかに叫ぶフィンの声が聞こえた。幾度となく聞いてきた、彼が自身の相棒を呼び出す時の声だ。
彼の手の内で光を放ちながら形成されていく小さなリボルバー銃。世の中の法則なんかを一通り無視してしまう、この世でたったひとつ、彼にしか生み出すことの出来ない武器。
クリスはそれを、綺麗だな、と思ってしまう。たとえ今視界には映っていなかったとしても、綺麗だということを知っている。大事に、大雪に守りたいもののひとつだ。
ひとつずつ、返せるものは返していきたい。何も出来なかった自分にも、せめてこれくらいはさせて欲しいと思わずにはいられない。フィンはもう充分だと笑うけれど、クリスからしてみれば足りるわけもない。人生まるごとをもらったのなら、どうしたって返せないとすら思っている。
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