Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    sio_kawa

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 7

    sio_kawa

    ☆quiet follow

    なんかしっくり来なくなったのでボツですというのを念頭に読んで欲しいバディです。書きかけなのであんまり推敲もされていないしすごく中途半端に終わる。

     己の血で霞む視界の先から、高らかに叫ぶフィンの声が聞こえた。幾度となく聞いてきた、彼が自身の相棒を呼び出す時の声だ。
     彼の手の内で光を放ちながら形成されていく小さなリボルバー銃。世の中の法則なんかを一通り無視してしまう、この世でたったひとつ、彼にしか生み出すことの出来ない武器。
     クリスはそれを、綺麗だな、と思ってしまう。たとえ今視界には映っていなかったとしても、綺麗だということを知っている。大事に、大雪に守りたいもののひとつだ。
     ひとつずつ、返せるものは返していきたい。何も出来なかった自分にも、せめてこれくらいはさせて欲しいと思わずにはいられない。フィンはもう充分だと笑うけれど、クリスからしてみれば足りるわけもない。人生まるごとをもらったのなら、どうしたって返せないとすら思っている。
     これは身勝手な、どうしようもない独りよがりの感情だ。
     クリスが背中を追う間にも、フィンの腕は真っ直ぐに前を向いて。
     ――流星が、はしる。




     いつも通りと言えばいつも通り、とはいえいつもよりはちょっぴり大掛かりなお仕事。メンバー総出でかかって、かすり傷を無視すれば怪我人はクリス一人。カロリーも問題なく足りてすぐに五体満足に戻ったのだから、まずまずの出来だと言える。
     しかし、そう思っていたのはクリスだけだったらしい。他のみんながそれぞれ気にかけて近寄るのに対して、ひとり足音荒く駆け寄ってくる。いつも通りにやぁお疲れ様、なんて顔を上げて声をかけようとして。
    「ふざっけんな!」
     叫んだフィンの拳が、躊躇いもなくクリスの頬を捉えて、殴った。ばき、と鈍い音すらして、反射的にぐっと顔を顰める。慌てたウェンディに構うでもなく、フィンはネクタイごとクリスの胸倉を掴んだ。目を逸らしたくなるほどに真っ直ぐな激情が、彼の形を取ってこちらを向いている。
    「頼んでねぇことすんな! なんで聞いてくんねぇんだよ! アンタはアンタで俺は俺なんだって、ただそう言ってるだけだろ!?」
     悲鳴のような怒声に、脳裏に蘇るのはつい先日のことだ。
     ──もう庇わないでくれ。俺の命は俺のもので、アンタのはアンタのもんだ。そう静かに語ったフィンの瞳が、篝火のように熱を帯びているのを思い出す。
     そうか。フィンはあの時から、怒っていたのか。
    「……フィン」 
    「カードの力で治るから? 任務の上での役割分担? ンなの知るか、クソ喰らえ!」
    「……」
    「アンタなんか、大っ嫌いだ!」
     叫びきって、それでようやく、フィンは呼吸を思い出したかのように肩で息をして二度、三度と噎せた。投げ出されたクリスの足の上にへたりこんで、それから深く息を吐いている。様子を伺ってくる三人に向け、視線だけで大丈夫と答えて、クリスはそっとフィンの頭に手を伸ばす。
    「分かれよ、俺、もうヤなんだよ。俺のせいでアンタばっかり怪我すんのなんて見たくない」
    「いやぁ、愛されてるなぁ俺ってば」
    「おいコラもっぺん殴るぞ」
     噛み付かんばかりに睨み上げてきたフィンに、クリスは小さく肩を竦めた。
    「そうは言ってもさ、これくらいしなきゃ釣り合い取れないのよ俺としては」
    「アンタの自己評価なんてどうっでもいい。俺がアンタのことをどう見たいかだろ」
    「そういうところなんだって」
    「わかんねぇ、全然わかんねーよ。何が言いてぇの、アンタ」
     苛立ちなのかそれとも別の何かなのか、フィンの声は涙混じりになっていた。疲れてさえいるのかもしれない。
     こうしていると、年齢よりずっと幼い子供を相手しているかのような気分になってくる。泣かないで、と撫でてあやして、拗ねて怒るのを宥めるような。
    「それじゃあ、まぁ、そーね。もうちょっとでいいから、時間を頂戴」
    「……」
    「人間、そんなに早く変われないのよ? 俺みたいなのは特にね」
    「そしたら、アンタ、ちゃんと自分のこと大切にしてくれんのか」
    「努力はするよ」
    「……。やっぱキライ」
    「そうは言うけどさあ、フィンもフィンじゃない? さっきもまた俺のせいだって言ってたけど?」
    「ゔ」
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works