酒席 瘴奸が小笠原郎党になり、少し経った頃。親睦のためにと守護館に招かれ、ささやかな宴会が催された。宴会といっても招かれたのは瘴奸と副将の赤沢常興、その弟と他数名。そして同盟相手という市河助房だった。
宴会といえば略奪後の乱痴気騒ぎだった瘴奸からすれば、小笠原郎党たちはあまりにお行儀が良く、少々居心地が悪いものだった。その中でも貞宗は正座をして背筋を伸ばし、飲んでも酔っている風もなく、近くにいる市河と話をしている。退屈さを感じる瘴奸は早く宴会が終わらないかと思っていた。あるいは、酒席らしい混乱が欲しいという思いが心の底にはあったかもしれない。
すると市河の酔った声が響いた。
「貞宗殿はぁ、俺のことどう思ってるんですかぁ?」
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