【ゼン蛍】それは自分だけの その日アルハイゼンが塵歌壺に赴くと、何やら邸宅内が騒がしかった。ここの主が認めた者しか入れない為、不法侵入者の類ではないだろうが邸宅の前にいるマルに近づく。
「おや、アルハイゼン様。ようこそいらっしゃいました」
「何やら騒がしいようだが、何が起きている?」
「今日は蛍さんが模様替えを始めたようですよ」
なるほど、と知らずうちにしていた警戒を解いて邪魔をするとマルに一言掛けて邸宅内に入ると、小物を抱えた蛍の姿がすぐに目に入った。蛍の方も室内に入ってきたアルハイゼンの姿を認めておはようと挨拶をする。
「アルハイゼン、もしかして今日はここを利用するつもりだった?」
「あぁ、少し書斎を借りたいのだが」
「書斎……」
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