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    Yikilth_sio

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    メロクロ「クロード買い物? お兄ちゃんも一緒に行く~♪」
    「何でお前がここに居るんだよ」
    「ついでに新しく出来たカフェも行こ。クロードが好きそうなとこだよ」
    「どうしよう会話が成立しない…」

    クロードは恐怖した。
    ここ最近まともに連絡をとっていなかった兄が、外出先に突然現れたのだ。
    今日はどうしてもこの街でしか手に入らない物を買いに足を運んだ。誰にも行き先は告げてないしSNSでつぶやいたわけでも無い。
    確かにここは赤陣営の街で、クロードの兄が所属してる勢力の街だ。だからって、こんな入り組んだ大都会でピンポイントに兄が弟の前に出現するのはどう考えてもおかしい。

    なんで僕の居場所知ってるんだよこいつ。しかもなに自然に腕組んで次の行き先まで決めてるんだよ。こわ。

    恐怖で絶句してるクロードを無視してメロードはキャッキャと笑っている。好きピとデートしてる女の子並のフワフワな笑顔だ。でも弟と恋人繋ぎしてる握力は万力並みで、クロードが振り解こうとしてもびくともしない。若干ミシミシという音がしている気さえする。最強のフラガリアは伊達じゃ無い。筋力も最強クラスなのだ。

    「シロノワール食べたくない?」
    「食べたくない…」
    「クロード少食だもんねー、大丈夫、残りはお兄ちゃんが食べてあげるから。」
    「ねえなんでここに居んの…」
    「ん~?クロードが近くまで来てたから。」

    理由になってないんだよ。

    そう言いたいのを飲み込んでクロードは諦めモードに入った。メロルドは究極のゴーイングマイウェイのマイペースだ。もうこうなったら、相手が満足するまで付き合ってやる以外に解放される術はない。
    どうせ兄の事だ、クロードの携帯端末にGPSを仕込むなり何なりして居場所を把握していたんだろう。この兄の弟への偏執は今に始まったことじゃない。

    「…売り切れる前に先に買い物行くから。」
    「こっちの道行った方が近いよ」
    「…」

    だから目的地の店を何故か知っていたとしても不思議ではないのだ。恐怖はするけど。



    メロルドのクロードへ対する愛情は、一般的な兄弟愛の範疇を遥かに超えている。

    キスをされたのが幼稚園で初めて女の子に告白されたとき。
    クロードに手を出せば兄にボコボコにされるという風潮ができたのが小学生のころ。
    クロードに思いを寄せた女子が、悉くメロルドの彼女になってはすぐ捨てられるようになったのが中学生あたりから。
    仮にクロード彼女が出来ても、すぐメロルドが寝取ってポイ捨てした。
    まあ所詮兄にすぐ鞍替えしてしまう程度の女だったと言えばそれまでなのだが、そもそも兄の破壊兵器並みの甘い美貌と声で言い寄られて落ちない女が居ないのだ。

    そして、とうとうクロードがメロルドに抱かれたのが高校生になった時だった。

    きっかけは何だっただろうか、クロードははっきりと思い出せない。
    些細な言い合いだったような。
    その頃のクロードは、何とかして兄から離れようと必死になっていた。優秀な兄と比較されるのが嫌で、それなのに肝心の兄がずっと付きまとってくるのだ。少々乱暴な言葉を使った記憶はある。それでも多少の暴言なら兄はのらりくらりと躱すぐらいに図太い精神を持っていたが。
    ただ、「どうせ俺の事見下してるんだろ」と言った時は違った。
    口喧嘩になればよく出る言葉だ。それなのに、それを言った瞬間メロルドの周りの空気が一気に凍り付いた。
    いつも砂糖菓子のような声を吐く口から、「は?」と地を這うような男の声が出て、場違いにもクロードは「こいつこんな声出せたのか」なんて驚いたものだ。
    そうしてクロードが呆けている間に、あれよあれよと兄の部屋へ連れていかれ、ベットにたどり着くまでもなく床に押し倒されて乱暴に抱かれた。
    とても処女相手にするようなものではない、労りも無い殺人じみたセックスだった。
    終わったころにはクロードは歯型まみれになって、押さえつけられた時に青痣までこさえてぐずぐずと泣くばかりしか出来なくなっていたぐらいだ。
    最中のメロルドはずっと「クロードより大事なものなんてないんだけど」「クロードはこんなに綺麗なのに自分でわかってないんだ」と行為とはチグハグな言葉ばかり繰り返していた。
    かくいうクロードも「レイプ魔」「死ね」「クソ野郎」など結構散々な言葉で言い返し、さらに殴り蹴りで抵抗していたが、それも本当に序盤までの事で、後半は言葉らしい言葉を喋れていたかも怪しかった。

    そんな事があった後も、メロルドは次の日には学校でケロっとして弟にべったりと引っ付いていた。
    ズキズキと痛む身体に容赦なく抱き着いてくる兄に「なんで学年違うのにクラスまで来てんだよアンタ」なんて悪態をつきながらクロードは決心した。

    そうだ、家出しよう。



    そういう積み重ねがあって、クロードはそんな兄から逃れる為に国を出たのだが。

    「はい、クロード。あ~ん♡」
    「…」

    こうして成人した今でも、結局兄から逃れる事が出来ないままでいた。

    メロルドに連行されて来たカフェは、なるほど確かにクロード好みのシックな隠れ家的喫茶だった。
    向かい合わせに座った兄から”あ~ん”されて渋々食べるシロノワールも、クリームは甘すぎず生地もサクサクで大変美味しい。今度一人でまた来ようと思うくらいには。

    結局の所、国から出て所属を変えた今でも、こうして兄との交流は続いていた。
    流石に毎日顔を出しに来る事はなかったが、どこからかクロードの居場所を把握しては、こうして拉致まがいの事をするようになった。
    連れ戻そうとしない辺り、これは兄なりの譲歩なのだろうか。もう国境を越えても追ってくる兄をどうにかする気力はクロードに残っていなかった。

    「美味しいねえクロード」
    「自分で食べれるんだけど」
    「もう一口いる?」
    「いらない」

    差し出されたフォークを拒否して、無理やり口に詰め込まれる前に目の前のメロンソーダのストローを咥えた。こんな不愛想な態度を取っても、目の前の兄は警戒心の強い野良猫でも見ているかのような目でニコニコとこちらを見るばかりだ。

    くすくすと笑う合間にシロノワールの残りをペロリと平らげて、メロルドはスマートな仕草で伝票を手に取って席を立った。

    「行こ」

    どこへ、とは返さずにクロードはため息だけをついて立ち上がる。
    こうして外食に行ったあとは決まってるからだ。



    「あ"っ、っう、…ッ♡」
    「クロード〜?大丈夫?水飲む?」

    ところ変わってメロルドの家。
    生活感の感じられないモデルルームのような家だ。その奥の寝室のクイーンサイズのベットの上でクロードは死にかけていた。中途半端に残されたシャツはすっかり汗で肢体に貼り付いて、小さい舌が開けっぱなしの口から覗いている。
    元々敷かれていた黒いシーツには、クロードの吐き出した精液やら潮やらで小さな水たまりが出来る程の惨状だ。
    目の焦点が合わない弟を組み敷いている兄は、呑気に「今度は吸水シート挟んどこうか」なんてニコニコ笑いながら、仰向けで痙攣しているクロードの脚を抱え直した。
    メロルドがまだ続ける気だと気づいたクロードは、ぜぇぜぇと息も整えられないままに震える上体を起こす。シーツに擦れてぐちゃぐちゃになった髪も、ダラダラ垂れる涙や涎もそのままにクロードはメロルドを睨みつけた。

    「…っは、まだ、やんの…」
    「まだ始まったばっかでしょ?」

    かわゆい弟の顔が近づいてきたのをこれ幸いと、メロルドはチュッと可愛らしい音を立ててキスをした。その拍子に奥を抉られて、クロードは腕で上体を起こしていられずに再びシーツに倒れ込む。

    「も、もう無理」
    「無理じゃない無理じゃない、クロードなら出来るでしょ?」

    逃げようとするクロードの肩を片手で押さえつけて、メロルドは再び腰を打ちつけ始めた。
    何回も突かれて泥濘んだ腸壁はすっかり柔らかくなって、降りてきた結腸の入り口がぐぱぐぱと亀頭を受け入れるたびにクロードは悲鳴を上げた。瘧のように震えるクロードの身体を抑え込むメロルドの腕に血管が浮かぶ。

    「っぅ"〜!あ、アッ♡アッア!っふ、っぐ、ンッ!」

    あぁ、しまった。
    衝撃に思わず目の前の肩に歯を立ててしまい、クロードは一瞬正気に戻った。
    少し頭を離して見れば、普段から手入れに気を使っている身体にくっきり赤い歯形がついている。
    流石に怒っただろうかとメロルドを見上げ、そしてクロードは硬直した。

    いつも余裕そうな表情しか浮べない兄が、眉を険しく寄せて、まじめ腐った顔に汗を滲ませてこちら見下ろしていたのだ。

    「っ、は、クロードッ…」

    あの完璧な兄が、俺のことしか見えてない。
    皆に愛されて尊敬されている存在が、自分なんかにいっぱいいっぱいになっている。
    背中に好き放題爪を立てられ、艶のある肌に思い切り噛み付かれるのにも甘んじて。
    その事に非常に気分が良くなって、苦しく喘ぎながらもクロードは密やかに笑った。



    気絶するように眠ったクロードに掛け布団をかけて、メロルドはベットサイドにあるタバコの箱とライターを手繰り寄せた。
    日も暮れて暗闇に沈んだ部屋に、ポ、と小さく赤い点の光が灯る。

    あぁ、またマットレス買い替えないとなあ。
    ぼんやり考えながら、タールの重たい煙をゆっくり肺に落とす。

    自身のイメージを気にして表では吸わないが、こうして偶に吸う煙草は格別に好きだ。
    咥えた煙草の灰が落ちないように気をつけながら、すぅすぅ眠る弟の髪をそっと撫でた。

    メロルドは天才なので、クロードが兄に組み敷かれるたびに仄暗い優越感に浸っているのもしっかり勘付いていた。そして、それを都合がいいと思えるぐらいには図太い。
    この可愛い弟を手元に置いておけるなら、この行為にどんな思慮が絡んでいたとしても気にしない。

    弟は、自分の魅力に鈍感なきらいがある。
    学生の頃、周りが思春期に差し掛かったあたりからは殊更酷かった。少女じみた中性的な美貌に集る不埒な輩は男女問わず多く、クロード自身は友人としてのスキンシップ程度にしか思っていなかったようだが、彼にベタベタと下品な目的で触る連中が絶えなかった。
    その為にメロルドは奔走したものだ。男は裏で呼び出しては拳で分からせ、女はメロルドの方に興味が向くように仕向けた。結果として学校という閉鎖的なコミュニティの中では「クロードに手を出せば兄からの制裁を受ける」という風潮を流すことができたが、それで弟を守れたのは学生のうちまでだった。

    成人となった今ではそうもいかない。
    だからといって、このメロルドの世界一の宝に何処ぞの他人の手垢が付くなんて耐えられない。女だろうが男だろうが関係なく、クロードに他人が触れることが許せない。

    だからこうやって、時折彼を連れ去っては抱き潰して「お前は特別な人間なんだ」と教えこむ必要があった。クロードが一番尊敬する兄が狂ってしまうぐらい、自分には価値があって、それを狙う奴らはごまんといるのだと。

    幸い、今弟が身を置いている所は信用できる連中ばかりで構成されている。あそこなら弟を狙う不埒な輩が居たとしても、それとなく牽制するなり、こっそり始末するなりしてくれるだろう。だから連れ戻すまでの事はしていない。弟の自由意志を奪うのは本望でもないし。

    短くなった煙草を灰皿に押し付けて、弟の隣に潜り込む。抱かれて火照った身体は抱きしめると暖かく、湯たんぽのように心地いい。

    朝には何か作ってあげよう。昔よく作ってあげたパンケーキなんか良いだろうか。

    たとえ弟からどんな風に思われていようと、メロルドからの弟への気持ちは小さい頃から変わらない。家族愛も性愛も、メロルドの全部はクロードのものだ。

    何でも思いのままにいく退屈な世界の中で唯一煌めくものを抱きしめて、メロルドはゆっくりと眠りについた。
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