子犬の青い春 松本side 少ないバスケ部のオフ日、松本は親友と将棋をしていた。提出する課題があるわけでもない、最近の噂から注目される事もあり、バスケの自主練をしようという気持ちも起きず、ぼぅっとしていた時、目の前にやってきた黒井は折りたたみの将棋盤を掲げ「まっつー、久しぶりに将棋やろ」と誘ってきたのだ。
二人っきりの教室でパチと音を鳴らしながら、駒を指す。松本の人差し指と中指で持った駒は小さく見えた。6月の少し蒸し暑い時期、半袖から伸びる腕は入学した頃よりも筋肉がつき、指先の爪は綺麗に整えられ、松本がバスケに真摯に向き合っていることを物語っていた。お互い無言で駒を指し、松本の手が止まったところで黒井は口を開く。
「まっつーさぁ……最近、バスケ楽しい?」
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