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    sunaba

    @sunabane

    イラストぽいぽい垢。古いものは時々まとめます。
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    sunaba

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    漫画の話を考えるときにつらつらとテキスト入力するのですが、思わぬボリュームになったのでSSにしました。3PCDのおまけ話/三井さんver。読まなくてOKなやつ。他人に見せる文章に慣れていないため、悪文ご容赦ください。

    you say go, I go高校3年、夏を迎える前、俺は暗黒の2年間に終止符を打った。それまでつるんでいた不良グループを抜け、忘れようとしてどうしても忘れられなかったバスケを再開した。同時に、ひとり、気になる人間ができた。水戸洋平という男だ。

    水戸は一見尖った不良で、でも付き合うと案外くだけた話しもできるヤツだとすぐ気づく。ダチ思いで面倒見がよく、気配りが巧くて、いざという時には落ち着きがあって。とにかく、コイツすっげー頼れるいいヤツ!を絵にかいたような男。
    普段受ける印象は柔らかいばかりだが、しかし侮ったりナメたりすると即座に痛い目を見る。小柄な外見に似合わず実はめっぽう喧嘩が強い。俺も初対面で対峙したときに容赦なく殴られていた。まったく敵わなかった。しこたま殴られた後で、ヤツは中学時代はそれなりに荒れて、いつもつるんでる「桜木軍団」は、地元でそれなりに名が知れていたのだと聞いた。

    水戸を見ると、俺は、この「イイヤツだ」と「怖いヤツだ」がごちゃ混ぜになってわけがわからなくなってしまう。
    バスケ部を襲った時の敵対関係はすでに解けている。水戸は1年、俺は3年。水戸は俺の所属する部活の後輩のダチ、俺はダチの先輩…。なので比べるなら俺の方が当然断然偉い。なのに、水戸の前に立つと身体が硬直して、進めていた足は重くなり、居たたまれなく、逃げ出したくなってしまう。
    そんなふうに途方に暮れる俺を、水戸はすぐに見つける。人好きのする顔でどうしたのミッチーと笑いかけたり、聞いてよミッチー今日狙ってたパンが売り切れててさ、と眉を下げて世間話を始める。力の抜けた笑顔に、ああよかった、俺はコイツと一緒にいていいんだと、安心と嬉しさが一気に押し寄せ、今度は胸が詰まってかなわない。

    水戸は余裕のある男なので、俺がどんなに慌てふためこうと気にしないだろう。だが後輩相手に毎度無様をさらす俺の心境は複雑だ。どうして俺は水戸の前に立つと、こんなにチグハグになってしまうんだろう。さすが先輩、頼りになる、くらいは思われたいじゃねぇか。
    相手の事もっと知れば対処できるんじゃないか?と思い立ったのは、ニュースで梅雨明けの宣言が流れた朝だった。一回り存在感を増した太陽がどんと背中を押す。

    とにかく知りたいのは水戸洋平について。最近付き合い始めた、年下の恋人についてだ。





    水戸の出身は高校近くにある和光中学。そこそこの規模の学校で、交友関係をたどっていけば友人知人、友人の友人にも卒業生や当時を知ってるヤツは見つかる。しかし結局漠然とした人脈から得られるのは誇張されて無制限に膨らんだ噂ばかりだった。水戸、おまえ有名人でバケモノで腫れ物になってるぞ。コレを全部信じたら大変だ。

    広いようで意外と狭い校内だ。手あたり次第に聞いて回るのはよくない。裏で探ってるって、本人が知ったらやっぱいい気しないだろ。そこで時間があるときにはマメに屋上に通う。狙い通り、2人だけで暇そうにダベる野間・大楠との合流に成功した。
    こいつらは水戸の中学時代を直接知る、まごうことなき水戸のダチである。バカだけど、水戸と同じく気のいい奴ら。
    恋人の過去を当人のいないところで聞き出す後ろめたさはある。でも2人はすでに俺らの関係を察してるようだから、俺の心情についても察して大目に見てほしい。時間つぶしのバカ話に乗って、他愛無い世間話を巡り巡って、目当ての話題にたどり着く。ビンゴ!


    「洋平?すっげー悪かったよ」

    そりゃそうだよな。喧嘩強いし。おっかない噂もアホほど聞いたぜ。
    でもアイツ、あの喧嘩の時以外はいたって普通に見えんだよなぁ

    「そりゃね。ガッコーではおとなしくしてるんだよ」
    「そうそう、一般人に迷惑はかけちゃいけないからさ。筋は通してんのよ俺達。」
    「全校生徒と教師に愛される牧歌的不良をめざしてんの。」
    「俺達、大人の階段上って丸くなったのよ」
    「「なー。」」

    ヒゲと金髪パーマのむさくるしい声が仲良くハモる。
    確かにお前ら、高校で大きなトラブル起こした話は聞いたこたないな。体育館の…アレ以外…
    「アレ」は俺が起こした事件で、こいつらは尻を拭っただけなのだ。胸が痛い。

    「暴力沙汰は中坊の時に花道とつるむようになってから減ったな。なんたって花道がさ、見るからに狂暴だし、2人ともガンガン強くなってったし。」
    「2人でいると半端な小競り合いがなくなったって、本人たちも言ってた。」
    「そのかわり、喧嘩の回数が減ると実力見せつける機会も減るじゃない。無駄に有名になるじゃない。いっちょ名を上げてやろうってヤツが出てきたり、数で勝てると勘違いするやつがいたり、マレにデカい案件にぶち当たるんだよな。(ミッチーみたいな…)」

    へー強くてもいろいろ大変なんだな(気づいてない)


    会話の合間に短い沈黙が訪れる。ヒゲと金髪パーマは素早く目くばせを交わし、声のトーンを落として話し出す

    「なぁ、ミッチーはさぁ、洋平が荒れてた時のこと知りたいんだろ。…あんま大っぴらには言えんが、ちょっとすごかったよ。」
    「とんでもねーホラ話も流れてるけどさ、俺らが直接知ってる分については正真正銘のガチネタだぜ」
    「どんだけあったかな、えーと…」
    「名前を悪用されて、犯人をシメて、所属してたグループのアタマも因縁つけてシメて、強制解散とか」
    「仲間の姉ちゃんを孕ませて捨てたクソを、集団に指示出して探しだしてきっついオトシマエかましたり」
    「みんなでまじかよっておもったのは、下手な喧嘩売って慌てて山ン中に逃げたやつがいてさ、ブチ切れた洋平は5時間山ン中を追いかけ続けて結局捕まえたとか」
    「あったなー」
    「みんなヒいてたもんな」
    「あと、突然休校してそのまま転校したヤツが何人かいたよな」
    「あれは洋平絡みだったか?あんときは俺らもちょっと距離があったからな」


    ずらずら並ぶ話のどれもが、俺の知ってる平均的な中学生の周りでおこる出来事と、かけ離れている。気が、する。冗談だろ。体中の筋肉が突然弛緩して、サーっと血が引く音が耳を揺らす。
    もしかして、俺は話のどこかに紛れたフカしやギャクを聞き逃してたのかもしれない。オチはドコだ?口元を無理矢理引き上げ目の前の証人を見るが、2人の表情はいたって神妙、かつ心配気だ。

    「体育館でさ、洋平がミッチーの前に立った時、アレ?逃げないのかな?って話してたよ。ミッチーってモグリだった?」

    えっコワ、
    えっコワ、なんだよなんで俺が殴られる前に教えてくれなかったんだよ

    「それは無理だろw」
    「洋平が本気ださなくて命拾いしたよなー」







    付き合いたての、しかもこちらから惚れ込んだ恋人だ。気になることは尽きない。
    水戸洋平がどれほどモテるのか。同クラスの噂好きな女子共に何気なく振ってみる。予想通り、ヤツはかなり女ウケがいい。水戸って知ってる?知ってる!喧嘩強いんでしょ。背は低いけど顔がかわいいからアリ。ヤンキーだから怖がってる女子もいる。でも女の子に優しかったという話もよく聞く。とある部活の後輩たちが、密かにファングループを作っているらしい。etcetc…。高校に入ってから異性関係の話は誰も知らない様子。ふんわりした好意にあふれた話しか出てこない。(ミトって最近ミツイと仲いいよね、今度呼んでよ、どっか遊びに行こ♡と誘われた)

    そこで登場するのが水戸のダチその3、高宮である。
    そろそろ食欲の秋を迎えるのはラッキーだった。水戸情報によると、この時期の桜木軍団は気ままに集って、ジェネリックBBQだの高コスパ鍋だのなんだのやってワイワイ楽しく過ごすらしい。ジェネリックBBQてなんだ?
    最初、高宮はシラを切っていた。だが仲間との楽しいイベントに向けて、俺の家の冷蔵庫を圧迫している貰い物の高級食材提供を宣言すると、個性的なグラサンの奥が鋭く光る。ヤツはあっさり情報を吐いた。


    「洋平?すっげーモテるよ」
    そりゃ水戸はモテるだろうよ。どのくらいモテてたんだよ。過去の女はどんなだよ。オレが知りたいのはソコなんだよ

    「うーん…洋平、この話題されると、あからさまに面白くないって顔すんだよな。いま俺とミッチーが話してること自体、内密にたのむぜ。
    洋平は、小学校時代から女子によく話しかけられてたぜ。
    女子共がいうには、煩くなくて弱くなくて、優しくて小ぎれいで大人っぽくて、そこがイイんだって。時々喧嘩してケガするけど、あいつだとそういうのもクールに見えちゃうから。得してるよな。
    そんなのが中学の間までずっと。だから免疫ばりばり」

    へー。まあ納得だわ。アイツ、フツーに優良物件だもんな

    「花道とつるむようになってから更にモテだしたんだよな。
    ほら、洋平は花道といると機嫌いいし、甲斐甲斐しいし、隣の赤くてでかいお子ちゃまとのギャップもあって、女子共の好感度が跳ね上がるわけよ」

    オイまた桜木か!!なんなんだよいっつもいっつも水戸の話をすると出てくるが!抱き合わせ商法か!幼馴染ってのはそんなに偉いんかよ!

    「ただ、それが手放しで羨ましい話でもないワケ。
    普段の洋平ってホラ、気が利くし頼もしいし、男からも女からもウケがいいし、無難にすげーいい奴じゃん。それが女と付き合うどうなると思う?洋平は普通に彼氏してるのに、なぜか付き合う女の方がおかしくなるの。
    ズブズブに依存して寄りかかっていくとか、
    干渉がエスカレートしていくとか、
    独占欲が暴走するとか。
    お互い子供だからどれも大した問題には発展しなかったようだけどさ、周囲の人間関係もちょっと微妙になるんだよな。友達とか、親とか。どれもこれも長くて数か月で破局だよ。」


    その話を聞いた途端、俺の胃はグッと重くなった。
    好きな相手への迷惑行為はダメだろうというまっとうな感想、…それと同時に、俺には水戸に依存したという少女たちの心情も、少し…いや、かなり想像できてしまったのだ。
    だって、水戸だぜ?アイツならきっとどんなことも受け入れてくれる…って、願ってしまうだろ?
    二人の間に満ちた熱を奪い取るように、自分だけが我を忘れて夢中になって、夢中になるだけ相手が醒めて遠のいていく。キツい話だ。それが実際にあったのなら、なおさら。


    「そりゃ男だし、お年頃だし、しばらくは女とも遊んでたけど、ダチの方がぜんぜん楽しいって言ってたぜ。高校に入ってからも告白は何度かされてる。けど、その後の話は聞かないし、たぶん火遊び程度も遊んでねーんじゃないかな。
    俺らが見ても、成り行きの恋人の機嫌をとってた頃より、花道の世話してる方が楽しそうだったしよ」

    また。また桜木だ。
    しかし高宮の言ってることはとても腑に落ちた。桜木は…

    桜木はバカで自分勝手で野生で頑丈で、扱い辛いバカ。しかし、何が起ころうと誰と向かおうと変わらずブレずに「桜木花道」なのだ。
    あれがほしい、これがしたい、好き、嫌い、嬉しい、悔しい、負けねー、やってやるぜ。天才だからな。
    そばで聞いていた、まっすぐで折れない言葉の数々。
    桜木相手に、水戸は、純粋に全力でダチでいられんだたろうな。

    俺は水戸とそんな対等な関係になれるのか?わからない。
    そして自分が一筋縄ではいかない厄介な性分だということは、過去のやらかしを持ち出されれば否定するすべはない。
    まずい…悲しくなってきた…


    沈黙したまま動かない俺をみて、案外気遣いの高宮がフォローを入れる。

    「…ミッチーはいい線行ってると思うよ
    だから洋平がずっと黙秘してる過去を敢えて教えたワケだが」

    嘘つけ、高級肉と海鮮につられてたじゃねぇかよ

    「まあ、正直それがなかったら言わなかった。」

    いい線って…どうなんだろうな。自分じゃわかんねぇし、自信もねえ…
    俺達がとりわけ不似合いとは思わないが、アイツとの接点は数えるほどもねぇ。いまだに、なんで付き合えたのかもよくわかんねぇ。
    俺は水戸のことを人当たりの良いサラッとした、とにかく頼れる男と思っていたんだ。だが話は全然違うようだ。
    探れば探るほど、俺の知ってるたかだか数か月の水戸と、俺が知らない過去の水戸の姿はズレていく。

    アイツが優良物件だから付き合い始めたわけじゃぁ、決してない。だが、予想以上に、結構、かなり、先行き厳しい予感がするじゃねーーかよーーー
    ちった手加減しろよ水戸のアホーーーー!


    その後も高宮はぽつぽつと話をしてくれた。

    「花道はもうバスケに夢中だからさ。
    俺達とつるんでる場合じゃないんだよな。
    俺達も暇して応援にいってたけど、洋平は最近あんたと付き合いだして、また楽しそうだよ」

    「将来なんて男と女でさえどうなるかわかんないんだから、
    上手く行ってるウチはミッチーも自信持ってりゃいいんじゃないかな
    俺が洋平に一番似合ってるってフカしてりゃいいんだ」

    「実は、ミッチーたちがいつまでもつか、3人でこっそり賭けしてるんだ。
    小銭でも負けるのは癪だからさ。
    できるだけ長く続いてくれよな」


    思わぬ方向からの応援に感謝をしかけて気づいた。
    つまり、桜木軍団3人のうちの誰かは短期破局に賭けたわけだ!

    ヒデー話、と苦笑しながら、でも先行きの不安が尽きない相手だ。彼氏の親友に生暖かく見守られるのは悪かぁねえ。
    小さくサンキュと呟く。
    俺ぁがけっぷちで食らいつくのは大得意なんだよ、やってやんよ。






    2023/03/17sunaba
    2023/08/07加筆修正
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    sunaba

    DOODLE【50代 洋三】歳を取ってしみったれはじめた壮年達の話を書きました。読まなくてOKなやつ。特に若い子はに虚無かもしれません。
    50歳としてるけど~60みたいなノリです。一度ジジババ描写の解像度を上げた話を作ってみたかった。3PCD、夜時、YSGIGと同軸設定。他人に見せる文章に慣れていないため、悪文ご容赦ください。
    Knowing our destiny5月22日。水戸洋平は、長らく同棲している三井寿の誕生祝いのために用意した小ぶりなケーキを、照明を落としたダイニングテーブルの上に慎重に置いた。
    シックなバタークリームのアートをまとった直径10センチの美しいケーキ。1カ月前から予約した。特別な日のための特別なものだから、華美さが少し鼻につくくらいが丁度いい。傍らには温めたケーキナイフ、サーブ用の皿。ちょうど50歳の誕生日なので、すらっと長いろうそくが5本。キメ細かいクリームに覆われた美しい表面に付属のろうそくをグイグイと差し込む。毎年、この1分にも満たない時間、素晴らしい手腕を振るった顔も知らぬケーキ職人に、ほんの少しの申し訳なさを覚える。

    早々に帰宅した三井は、テーブルに好物の手料理と酒を見つけて明るい声を出していた。が、席に着き、水戸がケーキのろうそくに火をつけ、それを三井が吹き消し、半分に切ったケーキを受け取るときとき。そこで、少し居心地が悪そうな顔で、声を落として呟いた。
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