運命とも呼べない関係ならば②【最悪で最低の再会(中也)】
「太宰さんを捕縛しました」
それを聞いてすぐに、ピンと来た。そんな筈が無い、と。丁稚を見るが、嘘をついているようには見えない。
成程。此れは奴の企みか。じゃなきゃ、捕まるなんて莫迦な事はしねぇ。それを暴いてやるか。
クックッと笑うと、丁稚は引き攣った顔をした。
「あぁ?なんだ?」
「い、いえ。久しぶりにそんな凶悪な顔をされていたので」
おっと。拙い。コホンと軽く咳払いをして、表情を戻す。
「地下には誰も近寄らすなよ」
丁稚に念を押すと、「承知しました」と頭を下げた。
他の人間を近づけてはならない。彼奴の口車に乗せられて、逃してしまうかもしれない。太宰は俺の獲物だ。殺すのは俺だ。
そう意気込んで地下へ行ったのにも関わらず、結局、俺自身が逃してしまった事は一生の恥なので、誰にも言わないつもりだ。
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