すったもんだして復縁する洋三① ──水戸のセックスって、砂糖の雨が降ってくるみてぇ。
まるで人生最大の秘密を打ち明ける時のように小さく囁いて、カメラで切り取って永遠にしたいくらいに美しく微笑んだ彼を、きっと一生忘れられない。
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「アンタ、私に興味なんかないんでしょ!!」
三宿の路上、真昼間の往来で水戸は彼女に頬を張られた。パシン、と水戸が大昔によく聞いていた肌を殴る音よりずっと大人しい音が、真横を通る大型トラックにかき消される。
目の前の彼女は顔をぐしゃぐしゃに歪めて泣いていた。ファンデーションとチークが乗った丸い頬の上を大粒の涙がこぼれ落ちていく。その様子を『こんな男のために泣くなんていい子だな』とどこか他人事のように見つめた。……いや、事実他人事だった。その証拠に水戸の手は彼女の涙を拭おうとも、彼女の震える体を抱きしめようともしない。爪の先さえ彼女のために動かなかった。
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