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    アロマきかく

    @armk3

    普段絵とか描かないのに極稀に描くから常にリハビリ状態
    最近のトレンド:プロムンというかろぼとみというかろぼとみ

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    アロマきかく

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    もしかしたら裏側でこんなことがあったかもしれないし無かったかもしれない。
    クリスマスにかこつけた(遅い)二人のサンタの話。
    あくまで動画の裏側という体で、動画からつながりづらくならないように。
    にしてもUCR-10/L AGNI 送ったの誰だよ!

    偶然のプレゼント「いくら要望があったからって、まさかポ○モンセンターまでできるとは……」
     果たしてL社内に出店しても良いものなのかはわからないが、あるものは使うべきだ、とのことでアーニャにあげるクリスマスプレゼントを見繕いに来た。荷物持ちという名目でダフネも連れ出した。
     どうせダフネは面倒臭いと言ってバッサリ断ってくるだろうと思っていたが、少々思案の後
    「……そうだな、行くか」
     と、驚くほどにあっさり同伴を承諾した。予想外すぎて何か裏があるのではと勘繰りもしたが、裏があったところで自分にはきっと関係のないことだろうと思い直し、詮索するのはやめた。

    「時にダフネ」
    「何だよ」
     声を顰める。
    「以前にもこういう……わりと無茶な施設の実装というものはあったりしたんですか?明らかに翼の運営には必要ありませんよね?」
    「それを俺に訊くか?あんたもわかってんだろ。大して興味ないもんは覚えちゃないってな」
     だろうな、とは思っていた。駄目元に近い気持ちで訊いたので然程落胆も無い。
    「一応、あなたはL社の変遷を見てきた生き証人みたいなものですし」
    「ンな変遷って言えるほど見続けてもねェよ。結構穴だらけだぞ。それなり記憶が残ってる点だって、覚えてるのは管理人のことばっかりだ」
     へらりと笑いながら。
    「その記憶だって、死ななきゃここまで持ってこられねェんだ。生き証人が聞いて呆れら」
    「……その、すみません」
     本人の中ではとうに割り切っていることなのだろうが、やはり今でも”死を重ねた末に今のダフネが居る”という事実は、例え茶化されても深く突き刺さる。自分で話を切り出しておきながら自己嫌悪に陥る。
    「今更謝るようなことでもないだろうがよ。やっぱ面倒臭ぇなぁ、あんたは」
     へらへら笑いながらあっけらかんとした調子で。
    「ようやっと慣れてきたけどな。その面倒臭さも」
    「た、多少なりとも自覚はありますけど。そこまで連呼することもないでしょう」
    「ハハ、多少か。ま、そんくらいが丁度良いのかもな、あんたは」
     けらけらと笑うダフネ。最近はすっかり角が取れて丸くなった。素直に笑うことが増えたようにも思える。
     途方も無い日々を生きては死んでの繰り返し、まるで想像もつかないほどの時間、溜めに溜め込んだ己の事情を打ち明けてから。
     あの時から、管理人や僕たちを見るダフネの目が少しずつ変化していった。

    「で、アーニャは何を欲しがってるって?”コービンお兄ちゃん”」
    「ちょ、もう!それは誤解だって言ったでしょう!」
    「わーってるわーってる。けどよ、実際そう変わりないだろ?ありゃぁ誰が見たって実質”お兄ちゃん”みたいなもんだ。諦めろ」
    「それを言われると……弱いですが……。たまにはアーニャに歯止めを掛ける僕の身にもなってくださいよ、まったく」

     絶望の騎士収容時、アーニャが言い放った言葉がよぎる。「お兄ちゃんを取っちゃ嫌だ」「お兄ちゃんになるって約束した」。
     そんな約束、交わした覚えは全く無い。それは確かだ。
    ……僕の中では

     業務が終わってもいまだ情緒不安定なアーニャを宥めていた時。身に覚えの無い記憶が突如脳裏をよぎった――よぎったというよりも、さながら白昼夢かの如く鮮明な記憶として目の前に顕れたというべきか――。


     ――――


     目の前に少女が居た。今よりもずっと大人びて、物静かな雰囲気を湛えていて、かなり気疲れしているように見える、アーニャ……アナスタシア。
     記憶の視点の主は”私”という一人称を用いていた。その話し方も態度も、兄を彷彿とさせる。ただし、その声は兄ではなく――僕のもの。実際、後に一人称は”僕”に変化する。
     僕はとうに兄の皮を被ることをやめた。それでも兄が立派な人物であることには変わりないから、せめて兄の尊敬できる部分を少しずつ取り入れていきたい、とは思っているし、それに伴う努力もしているつもりだ。
     だがそれは皮を被ることとは似て非なるもの。良い部分は取り入れるべきだが、何も一人称まで変える必要はない筈。
     兄の一人称は、”私”だった。そこまで完璧に兄をトレースしていたとでも言うのか。その意志を貫くには、どれほどの覚悟が必要なのだろう。「あなたの前では兄の皮を被る必要はない」。つまり”アナスタシア”と二人きりでいる時以外は常に兄の皮を。
     実際、記憶の視点の主は大分気疲れしているように思えた。……違うな、そう感じた
     やはり、あの視点は”僕”なのだろうか。

     ”アナスタシア”が着ていたE.G.Oは蒼の傷跡。少し前にアーニャが蒼の傷跡を着ていたとき、やたらと似合っているように感じたのはこの記憶のせいなのだろうか?あながち違うとも言い切れない。
     その”アナスタシア”と”僕”が、約束を交わしていた。

    『甘えて、いいですか?その、お兄ちゃんに甘えるみたいに……。あの、お兄さんの皮を被っていたあなたじゃなくて、あなた自身をお兄ちゃんって……』

    『や、約束ですからね!』
    『わかっていますよ。ええ、約束です』


     ――――


     あれは……僕の記憶じゃぁ、ない。ない、筈なのに……。
     何故”僕”の視点なんだ。何故、身に覚えがない記憶が僕の中にあるんだ。

     仮に視点の主が”僕”だったとして、差異がいくつもある。
     視点の主は「兄の皮を被っていた」とされている。言動からして、”僕”はおそらくそうだったのだろう。僕自身は大分前に皮を被るのをやめている。アーニャがチーフになった、その日に。
     ”アナスタシア”と「お互いに内心を暴露した」と話していたが、内心を暴露したのは僕だけだ。少なくともアーニャのことに関して知っているのは家族構成程度。”彼女”は「お姉ちゃんでいるのに疲れた」らしい。……アーニャは、どうなのだろうか。
     そして、「お兄ちゃんのように甘えても良い」という約束。兄の皮を被っていない”僕”に対して。
     間違いなくそんな記憶は身に覚えがない。なのに。

     何故こんなにも真実味を持っているんだ、この記憶は――!



    「おいコービン、何……」
     覚えのない記憶のほうに思考が持っていかれて、すっかり黙り込んでしまっていた。名前を呼ばれ、我に返る。
     いつの間にか、ダフネと僕の距離がだいぶ離れていた。元々ダフネが早足気味であることと、思索に耽っていた僕の足が殆ど止まっていたせいもあるのだろう。
    「あ、……あぁ。何ですか?」
     おそらく僕の様子を見て途中で言い淀んだのだろう、怪訝な目をしてダフネがこちらを見ていた。
     いつもは目を合わせると即座に視線を逸らすダフネ。今は真っ直ぐこちらを見据えている。全てを見透かされているような、深い翠に射竦められる。歩みが止まる。
     耐えきれず、伏せがちに目を逸らしてしまう。やましいことなど何も無い筈なのに。
    「……」
     記憶にない記憶。僕のものではない。だから僕自身にやましいことは無い。無い筈なのだ。
     近づいてくるダフネの姿が視界の端に映る。この心苦しさは一体何なのだろうか。何故こんなにも後ろめたいのだろうか。

     ぽん、と背中を優しく叩く手のひらの感触。骨ばってごつごつだが、染み込むような温かさを感じた。
    「あんた次第だ、無理強いはしない」
    「――っ」
     自分は散々「隠していることは全部話せ」と言っておきながら、いざ自身の身に何かが起きると途端に臆病になる。浅ましい自分に嫌気がさす。
     全て明かせ、と詰め寄った当のダフネに気を遣わせてしまっている。その事実が更なる罪悪感となって自らを責め立てる。
     自分でも確証の持てない記憶。アーニャの不可解な言動。迂闊に話したら精神汚染判定されかねない。しかし、あるいはダフネなら。
    ……いや、確証が持てないのなら時期尚早か。そもそも今の状況を何と説明するべきか自分自身がわからないのだ。

    「いえ……何でも、ありませんから……」
     明らかに何かを隠していますと言わんばかりの態度。発言した後に自分で呆れる。もう少し何か言いようが無かったのか。
    「そうか」
     短く返すダフネ。声音から、僅かばかりの言葉の中に色々な感情が詰まっていることは容易に想像がついた。
    「それでも……何かあったら、できれば辛くなる前に言ってくれ。話聞くくらいならいくらでも付き合うから」
     懇願するように。諭すように。
    「な。待ってるからさ。……無理だけはしてくれんなよ、”お兄ちゃん”」
     もう一度、背中を叩かれる。今度は力強く。
     きっとダフネだって、酷く気になっているに違いない。
     胸の内を打ち明けなかったがために首を吊ってしまった彼の親友。二の轍は踏むまいと、管理人に対しても頻繁に気にかける様子が見て取れる。記憶同期を阻止して以来、それがかなり顕著だ。
    ――ダフネは、僕たちのことを”友達”だと言ってくれた。”友達”が同じように苦しむのだって避けたいはずなのだ。
     それを、僕は。
    「今は、まだ……もう少しだけ、様子を見させてください。……いずれ、話しますから」
     兄の皮を被らない僕は、ここまで臆病者だったのか。

    「ほら、目当てのモンはどこにあるんだ?アーニャが欲しがってたヤツ」
     先程までの声音など全く感じさせない調子で。
     無理はするな、無茶はするなと言っておきながら、僕自身がダフネに無理をさせているではないか。
     いずれ話すべきときのために、もう少し自分の中でも状況をまとめておかないと。
     まだ、わからないことだらけだ。

    「えっと、ぬいぐるみですね、大きいやつが欲しいらしくて。確か最初の3匹の赤いやつ……」
     そのためには、もう少しだけ時間が必要かもしれない。情報を集めるための時間が。
    「ホゲー○か?なんか意外だな。画面見せてもらったが、そこまで活発そうなヤツでもなかったし」
     ひとまず今は目の前のこと。アーニャへのクリスマスプレゼントを買わないと。売り切れていないと良いのだが。
    「なるほど、えっと、向こうのコーナーですね……ー!ダフネ!違いますそっちじゃありません!!どこ見て歩いてるんですかあなたは!!」
    「あーん?俺は広い店と人混みが苦手なんだよ。ちゃんと案内してくれよな、兄ちゃん」
     どうもダフネはL社の売店でも時折迷うらしい。まぁ、確かにあそこも売店というには大概広いけども。
     多くの客でごった返す店内。時期的に考えて、僕たちと同じようにクリスマスプレゼント目当ての客も多いのだろう。
    「誰が兄ちゃんですか、あなたのほうが年上でしょう!迷子アナウンスだけは勘弁してくださいよ、本当に……」
     特に深い意味は込めていない。職員データ上では単純に2つか3つ、ダフネのほうが年上だと示す記録があった。ざっと見ただけなので正確には覚えていないが。
     生きてきた時間を数えるのであれば、年上どころの騒ぎではない。ただ、それを真面目に考えたくはなかった。

    「あれ、売り切れ……?すいませーん、こちらのぬいぐるみ、まだありますか?……あ、はい。ありがとうございます」
     在庫はまだあるので、すぐ商品の補充をするとのこと。「裏から出してまいり……捕まえてまいりますので少々お待ち下さい!」――店員さんも大変だな。
     実家にいた時分は買い物なんてする機会など殆どなかった。おおよそ家政婦任せで事足りていた。
     だが、こうして自分の足で色々なものを見て回るのはとても楽しいことだと知った。
     いつも死と隣合わせのL社ではあるが、僕は確実に沢山のことを学び、沢山のものを貰っている。
    「――はい、クリスマスプレゼント用なのでラッピングをお願いします。会計はこれで。……うわ、凄い。ラッピング含めるとこんなに大きくなっちゃうのか。”荷物持ち”連れてきてよかっ……ダフネ?あれ?ちょ、ダフネ!?」



     暫しの後、僕は店内に響き渡るアナウンスによって膝から崩れ落ちることになる。



    「遅ェぞ兄ちゃーん」
     へらへら笑いつつ、ふてぶてしく足を組んで座るダフネ。
    「なんであなたは迷うとわかっている店内を当て所もなくうろつくんですか!あと兄ちゃんではありません!」
    「いやさ、精々ただの玩具屋かと思いきや色んなモンがあんのな。珍しくてつい色々見ちまった」
     この態度を前にしては、生きてきた時間を真面目に考えようとする気持ちなど何処かへ吹き飛ぶ。
     ただ矢鱈に仕事のことばかり知識と経験が豊富で、無茶しがちで、ヤンチャすぎて手に負えなくて、時折悟ったような顔を見せる、かけがえのない――

     目の前の、一人の友人。

    「ほら帰りますよ、はいこれ持って!」
    「うおでっけぇ!俺コレ持つのか?ちょっと誰かに見られたら恥ずかしいからコービンが持てよ。元々あんたの買い物だろ?」
    「最初に言ったじゃないですか荷物持ちだって!その上でついてきたんでしょうが!もう忘れたんですか!!」
    「言ったっけか?忘れちまったわ」
     思わず溜息と共に項垂れる。この男を自由にさせたらアーニャにも匹敵する厄介さだな。

    「外に出たら、森林浴だけじゃなくてその後のことも考えないといけねぇんだ。ずっと籠もりっきりで、趣味らしい趣味も特撮くらいで。――色々、見ておきたいと思ったんだよ。今は要らないけど、今後必要になるだろうからさ。どれくらいかかるかわかんねェけど……絶対に、外に出る日が来るだろ。それ意識したら何か、ワクワクしちまって」
     あぁ。そういうことか。
     面倒臭いはずの買い物にわざわざ付き合ってくれたのは。
     とんだサンタも居たものだ。

    「あ、ちょっと!本当に何のためにあなたを誘ったのかわからないじゃないですか!もう!」
    「まかり間違ってアーニャに見つかったらコトだぞ。早く帰ろうぜ、サンタさんよ」
     早足で歩くヤンチャなサンタが振り向き、歪な乱杭歯をむき出しにして
     にかっ、と笑った。


     ――――


     あれ?
     ふと、違和感を覚えた。

     いつの日か、突然ダフネが何の脈絡もなく礼を言ってきたときがあった。あれはいつだったか。
     そうだ、審判鳥を収容して、装備を抽出して……僕が、その装備――ジャスティティアを預かることになって。
     ALEPH装備を任されたというプレッシャーを感じながらも、その明らかに強力な性能に胸踊らせて袖を通した、その日のことだ。

     業務が終わって、ロッカーにて。
    「……なぁコービン」
     本当に唐突だった。
    「ありがとうな」
     瞬時に頭が疑問符で埋め尽くされた。あまりに唐突すぎて、大層間抜けな顔をしていたに違いない。
    「なんですかいきなり……」
     率直な疑問しか出てこない。不意打ちにより完全に思考停止してしまっていた。
    「――いや、あんたには世話になってるなって思ってな」

    「それを言うならこちらだって。感謝してますよ、ダフネ」
     思考停止がゆえの、率直な感想。世話をかけて、かけられて。僕たちの関係が対等になるのにも、随分と時間がかかったように思える。

     ダフネがすべてを打ち明けるまでは、僕たちは殆どダフネの誘導で生き残ってきたようなものだったから。彼の知識と経験がなければ、僕たちは……いや、管理人は、何日間まともな業務ができただろうか。
     ダフネが管理人を誘導し、乗せられた管理人の指示で僕たちが作業を進める。全てダフネが持っていた知識と経験。そして、上層セフィラコア抑制という大きな一つの目的のための、入念な誘導。
     知っているがゆえの無茶もあった。ジャスティティアだってそのひとつだ。上層の時点で審判鳥を収容した際、ダフネは(毎度のことではあったが)真っ先に作業に入る。審判鳥が青ダメージを与えてくることを知っていて、それでも、なお。
     何度も作業して、何度も倒れて。一体何度死んだのだろう。途中からは見るのも辛すぎてあやふやだ。
     何故死ぬことがわかっていて、それでも作業を続けようとするのだろうか。当時、疑問に思っていた。
     装備が手に入った今ならわかる。上層のあの時点で手に入れられたならば、間違いなく今後の作業なり鎮圧なりに役に立つから。上層の時点のALEPH装備はどう考えてもオーバーパワーだ。

     理由はもう一つ。なまじ最初の作業で生還できてしまったから。何度も回数を重ねれば運良く死なずに装備抽出まで持ち込めるだろう、という期待を持ってしまった。
     回数を重ねること……イコール、死を重ねること。
     当時のダフネには、それが見えていなかった。ジャスティティアの圧倒的な性能に目が眩み、最も守るべき存在である管理人のメンタルを完全に蔑ろにしていた。
     結局あのときは管理人が半ば半狂乱になりつつもかろうじて記憶貯蔵庫に戻る手順を実行し、強制的に作業を中断させて事なきを得た。小さな王子の装備をひとつ失ってしまったが、そんなものは再収容すればまた手に入る。失ったら永遠に戻ってこないかもしれないものを、あのときのダフネは犠牲にしかけた。
     流石にあの件に関してはダフネも引きずっていたらしく、中層で再び収容した際は”気に入っている”黄金狂を脱いで青耐性のある防具を借りてまで、リベンジという名の作業に臨んだ。その結果抽出できた、ジャスティティア。
    ――そうだ、あのあと管理人が誤って記憶貯蔵庫に戻ってしまったから時系列が曖昧だったのか。まったくもう……。

     あの時点では、もう僕たちは対等な関係の筈。わざわざ正面切って礼を言うようなこともあるまい。いくら”世話になっている”といえど、それだってお互い様だ。
     あの礼には、きっと裏がある。

     よくよく思い返してみれば、礼を言ってきたときのダフネの目。真っ直ぐ僕を見ているようで、もっと遠く、どこか僕の知らない場所を見ているようにも感じられた。
     ダフネは、”誰”を見ていた?
     僕の向こう側に見えたのは……”僕”、なのだろうか。

     僕のものではない記憶を思い返す。
     兄の皮を被っていたであろう僕の声。随分と大人びてはいるが、気疲れした様子の”アナスタシア”。何故か記憶の中の彼女をアーニャと呼ぶのを躊躇ってしまう。
     彼女は蒼の傷跡を着ていた。ならば”僕”は?僕のものではない記憶の中の僕は、一体何を着ていた?
    ――まさか。

     確信が持てない。しかし拭い去ることもまた、できない。

    『あいつの顔も声も覚えちゃいないが、もし偶然に許されてまた出会えたのなら……』
     まさか。
    『礼をしたいよ。俺は』
     そんな。

     そんな、馬鹿な――
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    アロマきかく

    DOODLEたまにはサブ職員さんの解像度を上げてみよう。
    49日目、オフィサーまでも一斉にねじれもどきになってその対応に追われる中、元オフィサーであったディーバにはやはり思う所があるのではないか。そんな気がしたので。
    甲冑で愛着禁止になったときも娘第一的な思考だったし。
    なお勝手に離婚させてしまってるけどこれは個人的な想像。娘の親権がなんでディーバに渡ったのかは…なぜだろう。
    49日目、ディーバは思う 嘔吐感にも似た気色の悪い感覚が体の中をのたうち回る。その辛さに耐えながら、“元オフィサー”だった化け物共を叩きのめす。
    「クソっ、一体何がどうなってやがんだよ……ぐ、っ」
     突然社内が揺れ始めて何事かと訝しがっていたら、揺れが収まった途端にこの有様だ。
     俺がかろうじて人の形を保っていられるのは、管理職にのみ与えられるE.G.O防具のお陰だろう。勘がそう告げている。でなければあらゆる部署のオフィサーばかりが突如化け物に変貌するなどあるものか。

     もしボタンを一つ掛け違えていたら、俺だってこんな得体のしれない化け物になっていたかもしれない。そんなことをふと思う。
     人型スライムのようなアブノーマリティ――溶ける愛、とか言ったか――が収容された日。ヤツの力によって“感染”した同僚が次々とスライムと化していく。その感染力は凄まじく、たちまち収容されている福祉部門のオフィサーが半分近く犠牲になった。そんな元同僚であるスライムの群れが目前に迫ったときは、すわ俺もいよいよここまでかと思ったものだ。直後、管理職の鎮圧部隊がわらわらとやって来た。俺は元同僚が潰れてゲル状の身体を撒き散らすのを、ただただ通路の隅っこで震えながら見ていた。支給された拳銃を取り出すことも忘れて。
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