そのパイは食べられない 村雨は夜勤明けだった。
故に、受けてしまった。烏銀行名物トンチキペナルティを。
「パイはパイでも、食べられないパイはパ〜イパイ?」
「どうしよう……礼二君が壊れちゃった」
黎明は友人が愉快な事態に陥っている様に嬉々としてスマホを向けるかと思いきや、肩をすくめつつ背中を丸め、怯えたように距離を取った。
「ねえ、天堂さん。アレ治せる? 神様の奇跡見せてよ」
「えっ、無理」
「うわっ、ユミピコが素面になっちゃった」
村雨はフレーメン反応の猫のような表情のまま、顔の真横に掲げた両手で何かを揉むような仕草のまま「パイ……パイ……」と呟き続けている。そんな友人を目にした天堂は、ついうっかり神から人へ戻ってしまった。
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