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    tumekirihasyuu1

    NAGIKOHA

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    海に行く凪砂とこはく

    暗闇、波音しか無い砂浜をさく さく と鳴らす。
    白い息をはき、人気のない海を凪砂とこはくは足を進める。

    どうしてこうなったのだろう。

    遡ること数時間前
    まだ外が明るいお昼時、こはくは暇を持て余していた。最近は注目度が高まったが故Crazy:BはTVや雑誌の取材、ラジオへ仕事する機会が多い。だが今日は違う、暇なのだ。俗に言うオフの日だ。
    ゆっくり本を読むにしても部屋に置いてあるものは全て読了済み。書庫にでも...と思うだけで書庫へ足を運ぶほど本を読みたい訳でもない。
    共用スペースで何をしよう、と考えていたら「こはくくん」と後ろから声をかけられた。振り返るとそこにはこはくをじっと見つめる乱凪砂が佇んでいた。
    「なんや?」
    こはくは凪砂に問いかける
    お互い同じ事務所仲間といった顔見知り程度の関係なのだが凪砂の誕生日以降どうも一緒にいる事が増えた気がする。
    (距離が縮んだとでも言っておこう。)
    凪砂は少し間を置き、海に行かない?と言った。
    「こない寒いんに海?」
    「うん、図鑑みてたらいきたくなっちゃって」
    と凪砂は【海の生き物図鑑】を見せてきた。
    魚見たいなら水族館行けばいいのでは・・・と疑問が残るのだが凪砂の気分なんだろう。
    「海行っても魚は見れへんよ」
    「それでも構わない、海に行きたいんだ。」
    それなら、まぁ暇だし・・・ と重い腰を上げ海へ行く支度をし始めた。

    海へ着いたのはもう星がハッキリと見える時間。
    近くの海岸へ足を運ぶ予定だったが慣れない電車に乗ったせいか逆方向へ来てしまった。
    「・・・ここは何処だろうね」
    「・・・さぁ」
    2人とも知らない土地へ来てしまい少し戸惑いながらも海の方へ足を運ぶ。

    道路沿いには街灯が数メートル間隔で灯りをともしている。それに比べ海沿いは月明かりしか足元を照らすものが無い。
    冬の潮風が身体の芯まで冷やしてく。
    こはくが先頭に波の跡を辿り歩いてると後ろにいる凪砂が
    「ふふ、なんだか冒険してるみたいだね」
    と笑いながら呑気な事を凪砂は言うものだから
    こはくもつられて笑ってしまう。
    10分程歩いたところで腰を下ろす。
    「乱はん見てみ!星が綺麗やよ」
    「本当だ、ESでは全く見えないのに...久しぶりにこんなハッキリ見えたよ」
    「冬は空気が澄んでるし、ここは街灯しかないしなぁ......あっち(ES)は眩しすぎるんや」
    「そうだね、でも都会の夜景も素敵だと私は思うな、人にしか作れない景色だし.......あ、ほら見て今日は満月だよ...綺麗だね」
    こはくは少し間をとってから そーやね といつもより小さな声で返す
    凪砂はそれを不思議に思いながらも月や星、海など本の知識から学んだのだろう、淡々と雑学を話していく。
    「凪砂はんは、お月様見たいなお人やな」
    話に区切りがついた途端、こはくは呟いた。
    「どうして?」
    凪砂の頭の上にははてなマークが生まれる。
    「やて、日和はんは太陽なんやろ?過去のことはよう分からんけどいつも日和はん、乱はんの事照らしとるやん、まぁメンバーの皆照らしとるけど。その照らされた中で1番光っとうし、太陽と月、連れ添っとるから。」
    まぁAdamとEveは大体そう言うイメージやで。
    とつけくわえる。
    「確かに日和くんは私にとって太陽だ。だけど私は私自身輝くアイドルに成りたい...なんて、私はメンバーが居てこそアイドルとしてやっていけてる。あながち間違ってはないよ」
    眉を八の字にしながら笑う。
    「なんやぁ、わしなんてアイドルかどうかも危ういのにそんな弱気ならいつか乱はん達のこと抜かしてしもうかもしれんね。」
    にひひ、と無邪気に笑うこはくは凪砂を挑発するように言う。

    話題が途切れた。
    そもそも深い関係ではない凪砂とこはくは話す話題がないのだ。
    「へくしゅっ」
    2人の空間に響き渡る
    「大丈夫?防寒具、もっと持ってこればよかったね。」
    「すまへん...せやな、こんな所まで来る予定では無かったし仕方ないわ。...乱はん、ちとそっち寄ってええか?」
    「構わないよ。」
    「よいしょ、乱はんあったかいなぁ」
    「それは良かった」
    「それにええ匂いやなぁ...」
    こはくは凪砂の肩にもたれかかり暖を取る。
    少し時間が経つと凪砂の横から寝息が聞こえてきた。
    「...最近忙しかったからね、ゆっくりおやすみ。」
    そう言って凪砂はこはくの頭をひと撫ですると目線を逸らす。
    「月が綺麗だね。とある文豪がI love you,の日本的意訳として言ったんだけどな...気づいてたらいいのに。」

    白い息で霞む月の光に照らされながら静かにそう呟いた。



    「閣下ーーーー!」
    遠くから車の弟と共に茨の声が聞こえる。
    そろそろ帰る時間か。

    「閣下!探しましたよ!!ほら立って!」
    「...茨煩い、こはくくんが起きちゃう。」
    「は?桜河?...はぁ、ジュンが サクラくん居ないんすけど って言ってましたね...とんだ迷惑な人なんだ...ジュンに連絡するので待っててください。」
    凪砂が煩いと言ったからだろう、茨はスマートフォンを片手にその場を離れた。
    明日は説教されるな...。
    そんなことを思いながらこはくの方を向く。
    (睫毛ながいな)
    しょうもない事を考えていると茨が戻ってくる。
    「閣下、帰りましょう。」
    「うん」
    よいしょ、とこはくを背中に乗せ茨が手配した車に乗り込む。
    「次からはきちんと連絡してくださいね。」
    茨は呆れた顔で言う。
    楽しくてつい忘れてた
    なんて言うと茨は何もかも諦めた様子だった。

    車を走らせる事1時間、やっと星奏館へと着いた。
    そんな遠くまで行っていたんだ...。
    と思いつつ、ジュンの部屋へ向かう。
    コンコン、とノックをすると少し焦っているジュンが出てきた。
    「あぁ!...っとサクラくん寝てるんですね、すいません凪先輩。」
    「ううん、私も悪いから...こはくくんのことよろしくね。」
    睡眠の邪魔をしないようそっとジュンにこはくを預ける。
    「おやすみ」
    そう言って私も部屋に帰った。
    また、一緒に知らない場所まで行ってみたいな、なんて思いながら。
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