二人の父さん ある日のゲゲゲハウスで、鬼太郎はねずみ男と共にお茶を飲んでいた。
「相変わらず菓子はでねぇのかよ鬼太郎さんよぉ〜」
「あるけど…今日は客が来るから出せないよねずみ男」
その言葉に「俺は客じゃないのかよ鬼太郎ちゃんよぉ〜」等とねずみ男は言ったが、鬼太郎は「君を客と呼ぶのは何かが違う」と返すのだった。
「所で親父さんは?居ないみたいだが……」
「父さんなら横丁の入口まで迎えに行ったよ。僕も行きたかったんだけど…父さんが自分だけで行くって聞かなくてさ」
鬼太郎はそう言いながら「僕も行きたかったのに…」と珍しく拗ねている様子であった。
ねずみ男はお茶を飲みながら鬼太郎も迎えに行きたかった人物とは誰なのか考え、ある人物を思い浮かべた。
「あ〜……今日はあの人が来る日なのか」とねずみ男が言えば、鬼太郎は同じ人物を思い浮かべていると考えながら「そうなんだ」と何処か嬉しそうに返してきた。
「良く考えたら鬼太郎ちゃんも中々稀有な人生歩んでるねぇ…」
「ねずみ男にだけは言われたくないかな」
そう返しながら、鬼太郎は自分の父達の事を思い返していた。
自身を育ててくれた人間の男、そして目玉だけとなった実の父親。
この二人は自分にとって大きな存在であった。
今の自分があるのはこの二人が居たからだ。
そして今日は、その男がやってくる日であった。
今日をどれ程待ち望んだか。
時々ねずみ男と二人で遊びに行くのも楽しみであったが、それ以上にあの人がやって来てくれるのが鬼太郎にとって楽しみであった。
「全く、親父さんもお前も、本当にあの人が好きだねぇ」
「そりゃあね。僕にとってはもう一人の父さんだから」
鬼太郎はそういうと、「ねずみ男はいつの時代でも変わらないね」と父から聞いた話を思い出しながらそう言えば、「そりゃあ俺様はねずみ男様だからな」とドヤ顔でねずみ男は返してくるのだった。
そうこう言いながら二人が話をしていれば、ゲゲゲハウスの外が騒がしくなってきた。
「お前は相変わらずじゃな!」「ゲゲ郎こそな」と二人の父親の会話が聞こえてきた。
鬼太郎は待ち切れずゲゲゲハウスの暖簾を開ければ、目玉親父を肩に乗せながらあーだのこーだのと話している水木が居た。
鬼太郎は二人を見て、ただ一言「いらっしゃい。おかえりなさい」と伝えるのだった。