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わたしよりあなたに似合う新色のリップを前に立ち止まる夜
信号とテールランプと街路灯 夏を孕んだチュールスカート
なにもかも顔も性根も天と地のきれいなきみに好きといわれた
意外とさ、距離感近いタイプよね。肩にあご乗せ否定されても
ささやかな切り傷ひとつおおげさに甘やかすからにやけるばかり
自分より華奢な指先、細い脚、白いうなじが格好いいとか
数センチばかし見上げる身長差 背伸びの靴を手に取った朝
暑すぎとスリッパ放り過ごすきみ ねえ、帰らないでよシンデレラ
好きにしていいと言うからお揃いの赤でぬらしたきみのつま先
コンビニのアイス売り場に零時過ぎおとなの歳のこどもが二人
可愛いとはしゃぐあなたが可愛いと口には出さず何度も言うの
空色のネイルを落とし、まるで雲 コットン片手のロマンチスト
おぼろげに壁を感じる「何見てた?」わたしおジャ魔女きみはプリキュア
ころころと二度目の映画なぞりつつテープに絡む二種類の髪
休みだし 雨降ってるし 生理だし きみとだらだら寝たいだけだし
ずるくない? 怒る顔までかわいくて「ちゃんと聞いて!」とまた叱られて
ふと「好き」とあなたは「やき」と返事して卵とお肉買いに行こうか