瞳よりも物言う物目の前に揺れる尻尾は、持ち主のお髪と同じように夜の帳色をしていた。光を全て飲み込むような、深い色。
ふわふわと柔らかく絡まりやすいその性質は、まさに子猫の腹の毛のよう。
そんなふわふわした誘惑に吸い寄せられる様に目を奪われてしまい、手元の作業は止まる。
「ミコッテてさ、尻尾、人に触られたくないもの?」
「えー…人による。」
「ふーん…、君は尻尾嫌な人?」
目線は尻尾を凝視したまま会話を続けるもう一方の彼は、エレゼン族である故に尻尾という概念を理解出来きず、急所になり得るかどうかも判断がつかなかった。
同じFCの同僚として友好な関係を築いていかねばならない反面で、その尻尾という種族的に持ちえぬ未知の部位に興味が無いわけでもなく。折衷案として、持ち主の許可を取るのならば触る事くらいは許されるだろうかという好奇心に似た何かを滲ませながら、あのふわふわもこもこした物体に触れるかもしれないという期待に胸を膨らませる。
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