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    Nm16_syy

    ねむいろの創作論破を載せるところ

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    Nm16_syy

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    創作論破「イマジナリーロンパ」
    1章(非)日常編①です!
    よろしくお願いします!

    CHAPTER.1:あやめあやまることばのあや朝焼けの空と、一面の緑、そして小さく白い花。どうやらまた同じ夢をみているらしい。

    「…いや、マジでデジャヴが重なりすぎじゃないか…?」

    そういえば、「これは夢だ」と気付く夢を、明晰夢と言うらしい。そして、明晰夢では夢の状況を自在に変えられると聞いた事がある。
    試しに足を動かしてみると、少し動いた。が、同時に鋭い激痛が走った。




    「……………ッ〜〜〜〜〜ッ!?!!」

    「…わ、東雲くん…!起きたんだね。」

    あまりの激痛に目が覚め飛び起きると、俺は患者服を着せられどこかのベッドで寝かされていたらしく、横には心配そうな顔の鈴井が座っていた。

    「…す、鈴井…?!一ノ瀬は無事なのか?!!ここは、ここはどこだ…ッ?!あれからどのくらい経った?!!」

    「え、えっとね……」

    「…………うるさい、少し落ち着け。『保健室』では静かにと習わなかったか?これだから猿は困る。」

    「ほ、保健室………?!保健室なんてあったのか?!」

    どうやら瀬戸口もいたらしく、彼の冷たい一言で少し冷静になった。そして、鈴井が口を開いた。

    「うん。なんというか…色々あったんだ。起きたばっかりだから頭に入りにくいかもしれないけど、順番に説明するね。えっと…まず、どこまで覚えてるかな?」

    「えーっ…と……俺が一ノ瀬を突き飛ばしたら足に痛みが走って…何かで貫かれたんだったか。それで確か……瀬戸口が応急処置をしてくれたんだった…よな…!あ、ありがとな瀬戸口…!!」

    「…………礼など結構。医者として義務を果たしただけだ。それに僕は、応急処置までしかしていない。」

    「そ、そうなのか……?!保健室に居るし、ちゃんとした治療も施されてるからてっきりお前かと……え、じゃあ誰が…?!」

    「今説明しようとしてたところだよ。
    あのね、きみを治療したのは多分……………モノヴォルパー、なんだ。」

    「………………はぁ?!!?!」

    耳を疑った。まさかあの訳のわからない未確認生物に治療されてるだなんて…。そんな事すら記憶に無いのが、ひどく恐ろしく感じた。

    「うーん…やっぱりそうなるよね。えっとね、東雲くんが意識を失ったあと…に、なるのかな。モノヴォルパーが」

    『ちょっと、話が違うじゃん!!ボクは一ノ瀬クンを狙ったハズなんだけど?!自己犠牲の精神は結構だけどさぁ…これじゃ「見せしめ」にならないじゃん!!はぁ〜やれやれ、これだから最近の若いモンは……仕方ない、今日はサービスしてやんよ!!ボクの心の広さに感謝しろ!!次はないから!キミタチはここで待機してなさいッ!』

    「…って言った次の瞬間、大量のモノヴォルパーが担架を持って現れて、きみを乗せて去っていっちゃって…。モノヴォルパー達が体育館に出たあとはもう鍵がかかっちゃって出られなかったんだ。だから仕方なく待機してたんだけど、数時間後に地震?が起きてね。びっくりしてたら、最初のモノヴォルパーが体育館の扉を開きながら」

    『ふう……いや〜長い戦いだったよ………東雲クンはボクが責任を持ってちゃ〜んと治療しましたんで!!もう完璧に治りました!!!東雲クンは今保健室で寝てるよ!え?保健室なんてさっきまで無かったって?教室だけだったろって?アハハッ!さっき校内を全改装しちゃったから、教室なんて1つも無くなってるよ!その代わり、キミタチの個室とその他諸々用意したよ!ま、自由に探索でもしなよ……そして殺せッ!!エクストリームな絶望を、ボクはいつでも待ってるからね!!』

    「って言って去っていったんだ。地震は改装で起こったんだと思うんだけど……気味が悪い、よね。やっぱり、東雲くんはこの間の記憶はないのかな。」

    「あ、あぁ……無いぞ。流石に覚えてたらもう言ってる…と、思う。」

    話を聞いてもさっぱり訳が分からなかったのは、寝起きのせいではないと信じたい…なんて考えながら、頭の中で話を整理していた。聞く限り、数時間程度で橋本が見てきた15個の教室は消えたらしい。本当にそんな事可能なのか…?

    (とりあえず、一ノ瀬が無事なら本当に良かった。)

    「そうだ、個室!…ちなみに、何部屋あった…?」

    「大丈夫、ちゃんと16部屋あったよ。部屋なんてなくても、ここから出してくれるのがやっぱり一番嬉しいんだけどね。…あ、そうだ。わたしたち、それぞれ個室に行ってみたんだけど、モノヴォルパーが部屋の持ち主の大切なものを用意してくれたみたいなんだ。」

    優しいのかそうじゃないのか分からないよね、と言いながら、鈴井はふわふわの猫のぬいぐるみを俺に見せた。

    「わたしは、昔から大事にしてたぬいぐるみが部屋にあったの。『おもち』っていうんだ。この子、手作りで二つとしてない子だから…きっと本物だと思う。」

    「おもち……へぇ〜、可愛い友達だな。あ、瀬戸口は?」

    「言って僕になんのメリットがある?」

    「す、すまん………。」

    他の皆はどんなものを与えられてるのだろうか?そして自分には、何が与えられたのだろうか?気になって仕方がないが、足を診てもらわないことには動けないので、俺は少しおずおずと瀬戸口に声を掛けた。

    「な、なぁ!瀬戸口。言いにくいんだけどさ、足…診てもらってもいいか?俺も保健室の外見て回りたいんだが…さっきも激痛で目が覚めて……」

    「……足以外で痛むところは?打撲などもあるだろう。」

    「特にない…な。」

    「そうか。なら早く足を見せろ。」

    やっぱこいつ高圧的だよな…と少しモヤつきながらも足を見せると、包帯を丁寧に解いた瀬戸口が驚いた顔をして声を漏らした。

    「……モノヴォルパーが治したと言っていたが……いや、こいつは『幸運』だったな…しかし…流石に………………」

    ブツブツと独り言を呟いている瀬戸口を見て困惑していると、急に声を掛けられた。

    「君!本当に何も覚えていないのか?モノヴォルパーに何をされたか…会話でも良い。本当に、何も覚えていないんだな?」

    「ま、マジで何も覚えてないんだって!!どうしたんだよ瀬戸口?!」

    「…僕には君の方がよほどおかしく見えるが、僕の様子が変だと思うのなら、自分で患部を確かめると良い。」

    グロいのは好きじゃないんだが…と思いながら薄目で痛かったところをそっと見ると、俺は一瞬にして瀬戸口の気持ちを悟った。きっと酷い有様のはずの傷跡は、かすり傷のような傷跡だった。傷や怪我には詳しくないが、あの痛みは尋常じゃなかったし、こんな傷では到底あれに達するとは思えなかった。

    「ど、どういう事だ……?!」

    「知らん、僕が聞きたい。止血をしたのは他でもないこの僕だが、このような傷ではあんな量の血は出ないはずだからな……。」

    混乱する俺たちを見て、さっきまで黙っていた鈴井が小さく手を上げて声を出した。

    「瀬戸口くん、東雲くんは大丈夫そうかな?」

    「……傷は見ての通りだし、こいつも元気そうなので動くくらいなら問題はない。外見がどうであれ骨はまだ分からんので、走ったり跳んだりは念の為控えた方がいいと思うが。」

    「そっか、ありがとう瀬戸口くん。…東雲くん、保健室の外に行かない?怪我のことは怖いけど、気分転換がてらに、どうかな?」

    「そ、そうだな!診てもらったのもその為だったし。……この服で出歩くのは少し気まずいけど…」

    「それなら大丈夫だよ。ベットの横のカゴに新しい着替えも入ってたから。変な話だけど、同じ服のセットが何着もあるみたいなんだよね。ね、瀬戸口くん。」

    瀬戸口はそっぽを向いた。なんでこいつに話を振ったんだろうと思っていると、白衣がどこも破れていないことに気づいた。なるほど、と納得しながら自分の服のズボンを見た。やっぱり脹脛の位置に穴は空いていなかったので、ベッドの周りのカーテンを閉めて患者服からいつもの制服へ着替えた。



    着替え終わり保健室を出る直前、保健室に訪れた夜桜と小野寺に声を掛けられた。

    「わーーーっ!!!東雲くん!起きたんだーっ!!心配したよ〜〜っ!!」

    「……やっと起きたか、よかったな。」

    小野寺は今にも泣きそうな顔でそう言った。夜桜は他人事っぽい不器用な言い方だが、その声色は俺を心配してくれているというのがとても伝わってくる優しいものだった。

    「ありがとう。…そういや、なんで保健室に?」

    「いや何、少し頭痛薬をもらいにな。」

    「うちは付き添いっ!!夜桜ちゃん一人じゃ心配だったから……」

    「手持ちの頭痛薬が丁度無くなってしまったんだ。知らない施設にある薬は怖いが今なら瀬戸口先生がいるだろうと思い、キミが目覚めて一緒に去らないうちにと急いで来たのだが…急いで正解だったみたいだな。」

    「頭痛薬が欲しいのか?それならそこの左の棚の……」

    「いやまて、保健室に医者と呼べる者がいる内に聞いておけることは聞いておきたい。キミだって、これからずっと保健室に留まるつもりはないんだろう?」

    「…はぁ、仕方ない……。一回しか言わないから、よく聞いておくんだぞ。」

    「ありがとう、瀬戸口くんっ!!…という訳で、二人にはごめんなんだけど瀬戸口くんお借りするね〜〜っ!!」

    「わかったよ。それじゃあ行こっか、東雲くん。」

    「おう……!」

    なんやかんやあったが、結局鈴井と二人で個室のある場所に向かう事にした。



    「ここだよ。東雲くんの大切なもの、なんだろうね。…あ、鍵は持ってるよ。待ってね。」

    保健室から少し歩くと、扉が沢山並んだ廊下があり、「シノノメ」と書かれたプレートが提げてある扉の前に着いた。扉自体は至ってシンプルだが、知らない場所に自分の名前が書いてあるというのは、なんとも言えない気持ちの悪さがあった。
    鈴井が「おもち」から俺の部屋の鍵を取り出し扉を開けてくれている間、俺は思考を巡らせる。

    俺の大切なものってなんだろう。鈴井の大切なものを見たところ才能に直接関係のあるものではなさそうだよな。まぁ、『超高校級の幸運』に関係するものってなんだよって思うけど…。なら真っ先に思いつくのは家族や友達だが、流石にありえるか?ていうか居ても困る!じゃあ、他に何があったっけ。きっとないことはない…。

    …そう信じたいだけかもしれないが。

    「開いたよ。さ、確認してみよっか。」

    ドアノブに手をかけ、扉を開ける。
    そこには、机と椅子、簡素な棚に一人用ベッドといった家具が並ぶ簡素な部屋が広がっていた。どこを見ても至って普通だが、何か変わったところを挙げるなら、カメラとモニターがあることくらいだろうか。時計は既にあるので、このモニターはデジタル時計という訳でもなさそうだ。カメラは…監視カメラだろうか。だとするとあまり落ち着かない。そしてやはりここにも窓はなく、少し窮屈に感じる。

    「で、件のものは………あ、あれか?」

    机を見ると、紙のような薄い何かが乗っていた。それを手に取り確認すると、両親と妹が写っている微笑ましい一枚の写真だった。
    なるほど、家族は連れて来れなくても写真なら『大切なもの』として贈れるということか。
    何か違和感を感じつつも、だんだんと家族が懐かしむ気持ちが強くなり、じっと写真を眺めていると、それを見ていた鈴井が口を開いた。

    「その写真の人は…東雲くんのご家族の写真、かな。」

    「あぁ、そうだぞ!父さんと、母さんと、これが妹だな。やっぱ分かるもんか?」

    「東雲くんと雰囲気がなんとなく似てるなーって思って。…この写真、東雲くんが撮ったの?」

    その言葉を聞いて、感じていた違和感の謎が解けた。
    俺は、この写真を「知らない」。撮った覚えもないし、俺抜きで出掛けることはあっても写真を撮ったなら必ず見せてくれたし、俺に限って忘れることはない。そもそも、背景も知らない場所だ。この写真は一体なんなんだ…?

    「……いや、俺は撮ってない。いつ、どこで撮ったのかも分からないし、この写真の存在を知らなかったな…。」

    「………そっか。でも、東雲くんは、『家族』…というか、ご両親と、妹さんが大切だっていうことは確かだよね。謎が残ると変な感じはするけど、今は一旦置いておこう?もう『夜時間』だから、今日はお互い休んだ方がいいんじゃないかな。」

    そう言われ少し落ち着くことにしたが、聞き慣れない言葉があり思わず声に出す。

    「『夜時間』?って………?」

    「あ、説明してなかったね。ごめんね。モノヴォルパーによると、夜10時〜朝8時までの間を『夜時間』ってことにするみたい。」

    夜時間か、そこら辺はわりと健全というか、きっちりしてるんだな。…いや、『コロシアイ』だとか言ってる時点で、全く健全ではないのか。
    それはそうと、ここまで頼りっぱなしだと流石に申し訳さを覚えてしまう。

    「何から何までありがとうな。…ごめん。鈴井だって初めてここにきて、不安なことも多いだろうに…。」

    「気にしないで。わたしはやりたくてやってるだけだから、お役に立てたならなによりだよ。それより今日はゆっくり休んで。眠れなくても、横になるだけできっと楽だと思うから。……何も起こらず、皆で出られたらいいね。……それじゃあ、おやすみ。」

    「…ありがとう。おやすみ。」

    手を振った鈴井が部屋を出る。
    一人になった途端急に疲れが出て、とりあえずベッドに横になってみた。
    ……なんだったんだろう。全てが分からない。
    変な夢を見たと思ったら知らない人しかいない知らない場所に来て、コロシアイだなんだとヘンテコな未確認生物モドキに告げられて、人を庇って倒れて、なんだかんだあって今に至る。考えないようにしているだけで、謎もあまりに多すぎる。
    やっぱ全部夢じゃないのか…?あまりにも理不尽だろ、こんなの。
    本当に自分の才能が「幸運」なのか疑ってしまう。…まぁ、一人を除いて出会った人は悪いやつじゃなさそうな人ばっかだったし、庇った一ノ瀬は無事だったし、俺の足も動くからツイているのかもしれない。でも、こんなの…

    「こんなの、不幸中の幸い…じゃないか……。」

    思わずそう呟く。
    また寝たら、またあの不思議な景色の夢を見るのだろうか。そもそも、明日はちゃんと訪れるのだろうか。もし全部夢なら早いうちに覚めて欲しいと願いながら、夜時間になる前に、俺は意識を手放した。


    ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

    Side:???

    「……へぇ、俺には写真?」

    これから自室となる場所の机に置かれていた、『大切なもの』…もとい、一枚の写真を手に取る。その写真に写るのは、夜明けにも夕暮れにも見える空と、一面の緑が美しい爽やかな風景だった。

    「…えー。よりにもよって、なんでこの場所?」

    この場所自体に見覚えはあった。でも、この場所が大切かと問われると、別にそんなことはない。なんの思い入れも無い場所の写真を贈られても、大して嬉しいとも思わなかった。

    「……センスねーな。なんかもっと実用的なもの欲しいんだけど。ほら、コロシアイさせたいならさ、ナイフでも持ってきたらいいじゃん(笑) 俺なら上手くやるけど?」

    監視カメラにちらりと視線を送ったが、カメラはこちらをじっと見つめるばかりだった。
    心地よい音楽を奏でていたかと思えば急に気分が変わり耳障りになった音を垂れ流していたヘッドフォンを外し、ベッドに横になる。
    イレギュラーな状況だが、特に何も思わない。
    こんな変な閉鎖空間に連れてこられたなら、やるべき事は一つだけ。
    悪夢を見ませんようにと心の中でぽつりと呟いた後、明日から始まる生活に備え、俺はゆっくり目を閉じた。
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