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    Nm16_syy

    ねむいろの創作論破を載せるところ

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    Nm16_syy

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    創作論破:イマジナリーロンパのプロローグです!!!文章に起こすのは今回が初となりますので、拙い文章ですがお許しください……!!
    ※キャラの出番にムラがあります
    ※投稿後に添削する可能性があります

    Prolog:君は絶望の夢の中で、果てない希望を想像する最初に見たのは、朝焼けの空と一面の緑。所々には小さな白い花が咲いていた。
    風が吹き抜ける音が聞こえ、草花と共に自分の髪が揺れたのを視界の端で確認する。でも、不思議と風を感じない。そもそも、身体が思うように動かせなかった。

    「あぁ…そっか。俺は今、夢を見てるのか。」

    気づいた瞬間、直立したままだった俺の体は力が抜け、一面の緑に包み込まれるようにして後ろに倒れ込んだ。
    不思議と痛くは無かったが、俺の目の前は途端に真っ暗になった。

    ___どうしようもなく眠い。夢の中なのに。




    「…………!………、……!」


    何か聞こえる気がする。


    「ねぇ…だ……?!……て……!」


    人の…声………?誰だろう。



    「ど……し……よう…!」



    「___起きて!」

    鮮明に聞こえた声にハッとし飛び起きる。
    急に目を開けたのでまともに前が見えなかったが、目に力を入れてみると、ぼやける視界の先には見知らぬ少女がいた。夕焼けのような色の瞳を揺らし、心配そうにこちらを見ている。

    「おはよう。大丈夫?」

    「あ、あぁ、大丈夫。さっきまで夢を見てたくらいだし。」

    笑って返事をしてみると、「よかったあ」と、溢れ出すように声にし、心配そうな表情は安堵した表情に変わっていた。
    優しいやつなんだなと心が温まったが、「いやいや」と周りを見渡すと、知らない教室だった。机も椅子も教卓もなく、教室にあるはずの窓も見当たらない。おまけに電気も点いていないため不気味だった。唯一出入口と建物に面しているであろう右側には窓はあるが、丁寧なことに全て閉まっていた。(見たところ鍵は掛かっていない。)
    ふと黒板を見上げると、「ようこそ!『超高校級』!」と書かれていた。
    そうだ。俺は確か、高校に進学したと同時に政府がルーレットで決めたとか訳の分からない理由でで、『超高校級の幸運』と認定されたんだったか。じゃあ、この子も才能を持ってる…のか…?
    さっき見た「夢」と、知らない場所と、知らない女子………。情報が多すぎて、寝起きの頭ではさっぱり訳が分からなかったが、夢を見る前まで自分がどうしていたかも思い出せない事に気づいてしまい、不安感がどっと押し寄せ取り乱してしまった。

    「…ちょ、ちょっと待て!!ここどこなんだよ…ッ?!そもそもお前は一体誰なんだ……?」

    「お、落ち着いて!わたしは鈴井寧夢、超高校級のカウンセラーなんだ。 聞くのは得意だから、不安なら、きみさえよければお話聞かせてね。…あ、そうだ。きみのお名前は?」

    「………俺は東雲翔。…ごめん、少し焦り過ぎたよな。才能は超高校級の幸運…だけど、普段はあんまツイてないんだ。こんなのでよければ、よろしくな。」

    「知らない場所だし、不安になるのも仕方ないよ。東雲くん、だね。素敵なお名前!よろしくね。…そうそう、この場所なんだけど…ごめんね。わたしもよく知らないんだ。東雲くんと一緒で、気がついたらこの教室で目を覚まして…。」

    「そうだったのか…。」

    自分が取り乱してしまったことをますます恥ずかしく思っていると、思い出したように鈴井がまた口を開いた。

    「…あ!そういえばね、さっきわたしが起きたとき、廊下側…?に、なるのかな。右の窓で人影を見た気がしたんだ。あくまで気がしただけだったから、東雲くんを起こしてから確認しに行こうと思って。」

    「人影…?!俺たち以外にもここには人がいるのか?!」

    「多分だよ?!ほんとに多分だから分からないけど…わたしが見た影は1人だったよ。」

    もしその「1人」が存在するなら、随分勇気のある人なんだな…なんて考えていると、急に出入口の方からガラガラッ!!と音がしたので驚いて目をやる。
    そこには、燕尾服を着た長髪の男が立っていた。

    「うわ、ほんとにいた…。すりガラスの窓で部屋も暗いのに、あの人もよく見つけたっすね。」

    「え、えっと…お前は……?」

    「あぁ、失礼。オレは榊利仁、超高校級の執事っす。急で悪いっすけど、あんたらも超高校級の才能、持ってるんでしょ?」

    「な、なんで知って……?!」

    「オレを含め、あんたらの他にもいるんすよ。『超高校級』の人間が。…案内するんで、着いてきて下さい。全員体育館に集まってるんで。」

    期待と不安が一気に押し寄せる。信じていいのか分からなかったので、俺は鈴井に顔を向けてみた。鈴井も同じ気持ちだったようで、「どうしよう」という顔でこっちを見ていた。

    (こいつも同じ境遇なのか、信じていい人間なのかは分からないけど、今はもう信じるしかない…よな………。)

    少しの間の後、覚悟を決めて、俺は鈴井の目を見て頷いた。出会って間もないが考えは一致したようで、鈴井は微笑み頷いた。

    「…連れて行って、欲しい。」

    「りょーかい。…ほら、早く行きますよ。」

    改めて自己紹介を済ませると、緊張しながら教室の出入口から1歩を踏み出した。


    体育館へ歩いていると、頭がスッキリしてきたようで次々に疑問は浮かぶ。それは鈴井も同じだったらしく、何も知らない俺と鈴井の、榊への質問大会が始まった。

    「そういや、お前はこの場所に見覚えはあるのか?」

    「いーや、ないっすよ。あんたらと同じで気づいたら気味悪い教室で目を覚まして、周り見渡したら『ようこそ超高校級』やら『体育館に集合』って黒板に書いてあったんで、無茶言うな〜と思いながら添えられてた地図見て歩いてった感じっすね。他の人もそんな感じって言ってました。」

    「いや、俺たちの教室の黒板に『体育館に集合』なんて文字も地図も無かったぞ?!」

    「あ〜…?そういやそうだったっすね。というか、教室に2人だったのもあんたらだけなんっすよ。………あ」

    そう言うと榊はにっと笑って、

    「所謂"そういう"イベントを誰かが仕組んだ、とか?」

    と、冗談っぽく言ったので「コイツ…!」と思ったが、この話は終わりとでも言うように、次は鈴井が榊に尋ねた。

    「ねえ、榊くん。どうしてきみはわたし達のいる場所を知ってたの?さっきの教室にいたとき、人影を見た気がしたんだけど…それってきみのことだったりしないかな?」

    「あー、それはオレじゃないっすね。オレはもっと別の教室で目を覚ましたんで。多分、その人影は橋本君じゃないっすかね。」

    「橋本、くん?」

    「ええ。あんたらが居るって教えてくれたのは橋本君だったし。…ま、着いたら色々聞いてみたらどうっすかね。ヘッドフォン付けてるの彼だけなんで、多分すぐ分かるっすよ。」

    「そうなんだね、教えてくれてありがとう。」

    流石「超高校級の執事」、仕事ができるやつってこういうやつのこと言うんだろうな…とぼんやり考えつつ歩き進めていると、大きな扉の前で立ち止まった。

    「さ、着きましたよ。どうぞ。」

    扉が開くと、ざっと見て10人ちょっと男女が揃っていた。集まって話している人もいれば、怯えた目でこっちを見ている人、無関心そうに顔を背けている人など、様々な人がいるようだった。

    「わ、思ったよりたくさんだね。」

    「そうだよな。とりあえず…まずは、挨拶回りだな。」

    そう呟くと、どこからともなく小さくて元気そうな女子が現れ、声を掛けてきた。

    「ご挨拶?!それならうちからさせて!うちは小野寺咲楽!!超高校級のつまみ細工士で、作品を作ったり、たまに神社さんとかお借りして体験教室を開いたりしてるんだ!!よろしくねっ!」

    びっ……くりした……!!!

    つまみ細工って、ちりめんとかの布を使った小さい装飾の事…だよな?失礼だとは分かりつつ、こんなパワフルな女子が細かい作業って出来るもんなんだな…。

    「俺は東雲翔、超高校級の幸運だ。よろしくな。」

    「鈴井寧夢、超高校級のカウンセラーだよ。
    ねえ、小野寺さん。橋本くんって、誰か分かる?」

    「橋本くん…?あ!ヘッドフォンの!うーんとね……あれ、い、いない!!お、おかしいな………さっきまではいたんだよっ!榊くんとお話してて、半ば強制的に榊くんに君たちを呼ばせに行ってたとこは見たんだよっ!!」

    「あれー?!」と言いながら困った様子で小野寺はキョロキョロと周りを見渡す。
    ……なんとなく「橋本くん」がどういうやつか理解しそうになったが、まだ見てない人の事を決めつけるのはよくないと思い直すことにした。

    「うーん…ちょっと待っててね!おーい、夜桜ちゃーーん!!」

    「……大声を出さないでくれ。どうした、小野寺。」

    小野寺が誰かを呼ぶと、目つきが悪くミステリアスな雰囲気の女子が現れた。

    「……キミたちは?」

    不思議な色の瞳の鋭い目に捉えられ、思わず背筋がピンと伸びる。

    「…あ!あぁ!俺は東雲翔。」

    「鈴井寧夢だよ。よろしくね。」

    「東雲と鈴井だな。…夜桜透、超高校級の占い師だ。宜しく頼む。………あぁ、キミ達を睨んでいる訳ではない。元々こういう目付きでね。それに、今は頭が痛くてな…。…そういう訳だ、怖がらせていたらすまない。」

    「あぁ、いや、全然……!」

    大声が嫌だったのと目付きは頭痛からだったのか。それにしても思ったより真面目というか、優しいやつなんだな…やっぱり、何事も決めつけるのは良くないな、と改めて思いながら口を開こうとすると、先に夜桜が口を開いた。

    「キミたち、今来たのか?なら………大方橋本を探しているが姿が見当たらないので、ワタシに聞こうとしている…というところか。」

    「えーーーっ!!大正解だよ!!すごい!なんで分かったの??!やっぱり占い師だから?!」

    「…このくらい、考えれば分かる。それに、占いは未来を視るものでは無くてだな……」

    「ま、まぁまぁ…!えっと、夜桜さんは橋本くんがどこにいるか知ってたりしないかな?」

    「すまないが、ワタシも知らない。アイツと少し話したが…フラフラしていて、ワタシからしたら信用に足らないと感じたな。まぁ、ああいうヤツは暫くしたら戻ってくるだろう。戻ってきたら教えてやるから、先に他の者に挨拶を済ますのはどうだ?」

    「そっかあ……どうする?東雲くん。」

    「そうだな…俺も夜桜の言う通り、他の人に挨拶を済ました方がいいと思うぞ。…どう考えても。」

    「だよねえ…。」

    決めつけは良くないと思ったばかりだったが、どうやら橋本というやつは想像通りの人間だったらしい。ここまで来ると才能が気になってくる。超高校級のマイペースだろうか…?

    「あ!いたいた、きみたちがさっき来た人たち?どうせなら最初に声を掛けるつもりだったのに、見た感じ先を越されちゃったみたいだねぇ!」

    「…………。」

    小野寺、夜桜と別れると、またすぐ声を掛けられた。次はハーフアップの陽気そうな男子と、本を読んでいる、マフラーを巻いた寡黙な女子だった。

    「やぁ!ぼくは美郷千景。老若男女に夢を届ける、超高校級の絵本作家だよ。きみたちとぼく、きっと仲良くなれると思うんだ!よろしくね!!」

    「……宮澤飛花。ただの図書委員だよ。」

    「ただの?!いやいやまさか、彼女は凄いよ!彼女が1冊だけ出した詩集、きみも知ってるでしょ?ぼくも読んだけど、幻想的で不思議で、美しい表現が素晴らしくて!」

    「…いいよその話……黒歴史だから…。…それに私は小説家さんとか、詩人さんになりたいわけじゃなくって、ただ本を読むのが好きなだけだから。」

    …仲がいい、のか…?

    「…………何か勘違いを生みそうだから先に言っておくんだけど、美郷くんと私は初対面だよ。」

    「そうなのか?!てっきり昔からの友達とかかと……!!」

    「昔からの友達?!いいね、夢がある!素敵な想像だと思うよ!!実際は違うけど、そういう世界があっても素敵だよね!」

    「絵本作家の美郷くんは、夢とか想像が好きなのかな?素敵だね。わたしも好きだよ。」

    「わお!分かってくれるかい?えーっと、きみは…」

    「鈴井寧夢、カウンセラーだよ。」

    「鈴井さんだね!話が分かる人と出会えるなんて、ぼくは幸せ者だねえ!」

    ……なんか、置いてけぼりじゃないか、俺!?
    いや、これは美郷が変わり者すぎるだけだ。
    多分…きっと…きっとそうだ。そう、だよな…?

    「…………。」

    宮澤は相変わらず本を読んでいる。
    正直とても気まずい。

    「……………ペリドットみたいな瞳、奇麗だね。ねえ、あなたの名前は?」

    「あ、ああ!俺は東雲翔。超高校級の幸運だぞ。…まぁ、名乗っていいか分からないくらいにはツイてないけどな…。」

    「……そっか。よろしくね。」

    …美郷に気を取られていたが、宮澤も不思議というか、掴みどころがないな。
    本関連の才能のやつらは、なんかこう…独特な感じなのか?…流石に偏見が過ぎるか。

    そういえば、橋本の才能。宮澤は知っているのだろうか。
    あまり人と関わりを持たなさそうな宮澤に聞いて分かるかは分からないが、聞いてみる価値はあると踏み、おずおずと声を掛けてみる。

    「な、なあ。宮澤はさ、橋本の才能とか知ってたりするか?」

    「……知らないよ。見ての通り、私、人と話すの得意じゃないから。……予想、つかないよね。」

    「だよな…。」

    「………橋本くん、私は喋った事ないし、何も知らないけどさ。不思議というか、得体の知れない感じ?って、言うのかな…。授業中に教室に入ってきたカラスみたいな感じだったよ。」

    いや、怖。そんなヤバいやつなのか、橋本。

    今のところ俺が知ってる情報を纏めると、橋本という人間は人使いが荒くて、神出鬼没で、夜桜から見て信用に足らなくて、宮澤から見て得体の知れない人だ。
    話すときは気をつけようと心に決めると、鈴井は美郷と話し終わったようで、俺たちは美郷と宮澤と別れた。



    「ひ………ひぃ………………お、お助けをぉ……!!」

    「?!」

    弱々しい女子の声が聞こえたので 俺は鈴井とそこへ向かうと、高圧的そうな男子に睨まれて頭を抱えている女子、そして手にパペットをはめた、これまた気弱そうな猫背の男子というチグハグな3人組がいた。

    「えっと……これはどういう状況だ……?」

    『オレサマが説明してやろウ!』

    「え、えっと…誰…?」

    『オレサマはモノ!オオカミなのだ!オレサマを操ってるのは超高校級のパペッティアのヤナダヨリ(柳田依)っていうニンゲンだけど、まーコイツはオマケってやつダ!』

    パペッティアってあんまり聞き慣れないけど、おどおどした顔でずっと口を閉じている柳田を見ている限り、パペットを操る才能だよな。……逆に操られてないか?

    『オレサマに恐慄くのは分かるが、とりあえず話を聞ケ!…といってもまァタンジュンメイカイな話ダ!このびーびー泣いてるオンナがオレサマに挨拶に来て、才能を名乗った途端近くにいたコイツが急に怒りだしたんダ!』

    今すぐこの場所から逃げ出したそうな顔をする柳田と、自信満々に語るパペット元い「モノ」のチグハグさに理解が追いつかないが、聞いている限りどうやらこの女子は相当理不尽な目に合わされているようだった。

    「ぼ、ぼく……なんで怒られてるんですかぁ………?!」

    「当たり前だろう、君が諸悪の根源だからだ。」

    「しょ、諸悪の……根、源………?!な、なんでそうなるんですかぁ………!ぼくは…ただのゲームクリエイターで…………」

    「それが問題だと言ってるんだ。プログラミングの知識や賢さを持っておきながら、それをゲームなどという体、特に目に悪いものに使うなど考えられん。君のような者がいるから、視力の下がる人が後を絶たないんだ。しかも、君の肌、随分白いじゃないか。大方、ここに来る前は不摂生をし、昼夜逆転生活を送っていたんだろう。これだから不健康の馬鹿は…」

    「う、うわぁ…ぁ……………」

    一方的に詰められた女子は終に泣き出してしまい、慌てて鈴井は駆け寄った。
    「そんな言い方はないだろ!」と言いたいところだが、今は喧嘩をしている場合ではない。そもそも、俺たちもただ挨拶に来ただけなのだから、女子の事は鈴井に任せてここは穏便に済まそうと考え、一度深呼吸をして落ち着いてから声を掛ける。

    「俺たちも挨拶に来たんだ。俺は東雲翔、こっちは鈴井寧夢。よろしくな。」

    「……瀬戸口遥輝。超高校級の医者だ。これで満足か?」

    「あ、あぁ…!ありがとう。」

    「……フン、これ以上馬鹿が増えると僕にまで馬鹿が伝染る。ではな。」

    それだけ言い残し、瀬戸口は歩いていってしまった。気の難しいやつで呆気に取られていたが、ふと我に返り鈴井たちの方を向くと、女子はとっくに泣き止んでいた。

    「す、すみません……ぼくみたいなの助けていただいて………えっと…鈴井さんと東雲さん、ですよね………あ!えっと!ち、違うんです盗み聞きしてた訳じゃ………!!」

    「い、いや!!全然大丈夫だぞ!それよりお前は…?」

    「あぁっ、えっと、ぼ、ぼくは葵光波です…。先程も言った通り、超高校級のゲームクリエイターです…。ご、ごめんなさい。ど陰キャコミュ障拗らせてて、あんまり顔、見れなくて…。」

    「大丈夫だよ。話してくれてありがとうね。葵さんは何も悪くないから、気にしなくていいよ。」

    「あ、ありがとうございます………!えっと、柳田さんもご迷惑おかけしちゃって……。」

    『ヨリじゃなくテ!オレサマはモノだゾ!!
    ま、気にすんナ!オマエ、今日からオレサマの子分にしてやル!』

    「あ、あ、ありがとうございますぅ……!!」

    ありがとうで……いいのか……?


    次に、楽しそうに話している女子2人に話し掛けることにした。

    「…あら?お二人は先程いらっしゃった方ですか?」

    「まぁ、お初にお目にかかります。わたくしはフィオナ・ルニエシス、超高校級の令嬢ですわ。そしてこちらが…」

    「超高校級の薙刀部、桐羽和華と申します。宜しくお願い致しますね。」

    上品な雰囲気に少し圧倒されながら、俺たちも続けて自己紹介した。
    温和そうな雰囲気の二人だが、令嬢と薙刀部という才能ということは、知的だったり瞬発力があったり、所謂ギャップのある女子なんだろうな。

    「あーー!!見つけたぞ、この不届き者!」

    「お、おい!落ち着けって一ノ瀬!」

    な、なんだ今度は…?!

    身構えながら声のした方へ振り返ると、怒った様子の派手髪の男子と、それを止める為に腕を引っ張る男子がいた。

    「不届き者って、誰の事だ…?!」

    「どう考えてもテメーのことに決まってんだろ!東雲!!オレの鈴井ちゃんだけでは飽き足らず、他の女子とまで仲良さげに喋りやがって……!!」

    「えぇっ、俺?!というかなんで名前知ってるんだよ?!!」

    「ンなもん話聞いてりゃ分かんだよ!それより、鈴井ちゃんは渡さねーからな!」

    「…………こいつ、鈴井の知り合い?」

    「ううん。初めましてだよ。」

    そう言って鈴井は首を横に振った。ますます意味が分からない。こいつは誰なんだ…?どうして「オレの鈴井ちゃん」になるんだ…?

    「悪い、コイツそこの…鈴井ちゃん?に一目惚れしたみたいでさ。悪いヤツじゃないんだけど……。俺があとでキツく言っとくよ。はぁ、一応俺も全員と初対面のはずなんだけどなぁ…。あ、俺は風間龍成!超高校級のダンサー。仲良くしてよ!」

    「おう、よろしくな!」

    風間は気さくで話しやすいが、苦労性みたいだな……。

    「オレは一ノ瀬悠斗、超高校級のサッカー選手だぜ。ま!スポーツなら何でも好きなんだけどな!よろしくな、鈴井ちゃん!」

    「うん、よろしくね。」

    鈴井を一瞥すると、変わらない様子で微笑みながら優しく返事をしていた。一ノ瀬、結構強引だったよな?いくらカウンセラーと言えど、鈴井のメンタルはどうなってるんだよ…。

    「東雲と鈴井ってアンタたち?あ、お取り込みちゅ〜なカンジ?」

    風間、一ノ瀬と喋っていると、ギャルの女子が話しかけてきた。

    「ん?あぁ、大丈夫だぞ。………えっと…ど、どちら様で…?」

    「あ〜ね、ごめんごめん!ウチは麗瑠璃。う〜ら〜ら〜る〜りって、ちょっと言いにくいけど、がんばって呼んでよね〜。ちな、超高校級の吹奏楽部なんで。」

    吹奏楽部ギャル?!ちょっと、想像してなかったな。そういえば、よく見ると首に何か下げてる。これ、楽器下げる紐…?だったりするのかな。

    「麗さん、どうしたの?東雲くんとわたしに何か用かな?」

    「そう、それなんだけどさ〜。アンタたち橋本探してんでしょ?夜桜が今頭痛?で動けないらしくってさ〜。だから挨拶ついでにウチが呼びにきたってカンジ。」

    「あぁ、そうだったのか!ありがとう、麗。」

    「おけまる〜〜」

    風間、一ノ瀬と別れ、俺と鈴井は橋本に会いに行った。ヘッドフォンを付けていて、ドア付近に立っている人は1人しか居なかったので、すぐに見つける事ができた。

    さっきの情報をもう一度念頭に置き、少々身構えながら話し掛けた。

    「お、お前が橋本…で、いいんだよな?」

    「ん、そうだけど。…あぁ、やっと来たんだ。おはよ。」

    「お、おう…。俺は東雲翔。超高校級の幸運だ。よろしくな。」

    「鈴井寧夢だよ。超高校級のカウンセラーなんだ、仲良くしてもらえたら嬉しいな。」

    「…橋本新。よろ〜」

    「………え、そ、それだけか?!お、お前の才能は………?」

    「才能?……はは、それがさ、何か思い出せないんだよね。うん、思い出せない。そういう事にしといてよ。」

    「そういう事って…?!じゃあ覚えてるってことか?!」

    「ははは、まぁまぁ。人間ってさ、才能だけじゃないだろ?才能が全ての人間とか、居ないだろ?それとも、『超高校級の幸運』…それがお前の全てなの?なら、話は別だけど。」

    「ま、まぁ…そうだな……。あくまで要素だと、俺も思うぞ……。」

    「だよな、俺もそう思う。」

    な、なんだこいつ………?!ミステリアスどころの騒ぎじゃないぞ。
    「信用に足らず、得体の知れないやつ」、確かにしっくりくる。なんというか、橋本の言葉には謎の説得力がある気がする。俺が流されやすいと言えば、そこまでかもしれないが。

    「橋本くん、榊くんにわたしたちの居場所を教えてくれてありがとう。あのね、わたし、目が覚めたときに人影を見たんだけど…それってきみのことだったりしないかな?」

    「あぁ、俺かも。お前らのいた教室さ、多分奥から2番目だっただろ?俺が目を覚ましたの、1番奥の教室だったからさ。その時に2番目の教室で誰かのシルエット見たんだよね。」

    「そうだったのか……。そういえば、なんでお前はその教室に2人居るって分かったんだ?」

    「え、地図の裏に人数書いてたじゃん。…あ、もしかして持ってなかったりすんの?じゃあこれ、あげるよ。」

    手渡された地図の裏には、手書きと思われる簡単な説明が載っていた。



    春宵<シュンショウ>学園とは?

    才能溢れる高校生を「超高校級」つまり、日本の希望とし、育成・保護する学園のこと!
    キミタチは、学園長であるこのボクが厳正なる抽選の結果選ばれた16人なのだ!
    詳しいことはボクが直々に説明するので、とりま体育館にGO!!



    (…なんなんだ、このふざけた落書きは…?!春宵学園って、なんなんだよ…?!!)

    よくよく読んでいると、この紙には「16人」と書かれていることに気づいた。
    ざっと見て10人強いることしか分からなかったが、よく数えるとこの場所にいたのは俺を含め、ぴったり16人だった。

    「なるほど…だから橋本くんはあと2人足りないことに気づいて、榊くんに頼んだんだね。」

    「…いや、ちょっと待て。なんでお前は教室に2人いるって分かったんだ?!教室の窓はすりガラスだったし、中は暗かったぞ。見えても1人じゃないか…?」

    「俺、体育館に直行してないんだよね。校内1周しようと思って。…生徒数、多かったんだろうな。教室の数数えてたら俺がいたところ含め15個あったんだよ。高校なら、1学年5クラスって感じ?どうでもいいけど。で、地図の裏見て、なんとなくそうかなーって思って。」

    「なるほど。なら、どうして呼ぶのは榊くんに頼んだの?」

    まぁ、橋本が来たところで着いていっていた自信はないが、と 内心思いながら返事を待っていると、橋本が口を開いた。

    「え、だって面倒臭いじゃん。利仁って執事だろ?こういうのはそういうヤツに任せた方がよくね?」

    「………は?!お、お前………マジか………。」

    「俺さ、気になったことは自分の目で確認しないと嫌なんだよね。でも確認したら疲れたからさ。ほら、適材適所だよ。」

    ある意味予想通りの返事に唖然としていると、橋本は続けて言った。

    「そういえば、いつ来るんだろうな。学園長。もう全員揃っただろ?」

    「どういうこと?」

    「ほら、あれ。」


    橋本の言う"あれ"の方に目をやると、舞台があり、その中央に大きなモニターがあった。
    そこには、大きく文字が映し出されていた。




          ようこそ!春宵学園へ!

    入学おめでとう!まずはレクリエーション!
    全員揃ったら説明会を始めるので、それまで仲良く待っててね!

                   学園長より


    「地図の裏にも書いてあった春宵学園って、やっぱりここの事なのか…?!そんな学園、聞いた事ないぞ。鈴井と橋本は?」

    「わたしもないよ。不思議な響きの学園名だよね…。」

    「俺もない。ってことは、誰も知らないんだろうな。」


    あれこれ思考を巡らせる。

    そもそも、この学園は日本のどこにある学園なんだ?
    俺より先に目覚めていたこいつらは、本当に同じ境遇だったのか?

    誰も知らない学園…なら、不気味な教室があってもおかしくはない、のか…?

    俺が見たあの夢は?

    これが夢なら、今の現実は、全部、夢の夢、になるのか………?


    疑問を浮かべては、気分が悪くなっていく。
    そんな堂々巡りを繰り返していると、突然チャイムが鳴った。


    キーン、コーン、カーン…コーン…………


    ここは学園のはずなのに、それは何故かとても違和感があり、不快で、更に気分が悪くなった。


    「おやおや?全員揃った?揃っちゃったんだね?それじゃ、はじめよっか!!」

    不気味な声が体育館に響く。何が、何が起こっているんだ…?!


    「体育館中央にご注目くださーい!うぷぷぷ………!」

    不安げな表情で全員が体育館中央へ視線を送ると、そこには後ろ足がなく、代わりに角と翼の生えたツートンカラーのうさぎのヌイグルミ?が、マイクを持って浮いていた。

    「あー!あーー!!マイクテスッ!!………なーんて、野暮だよね!えー。生徒の皆さん!春宵学園へのご入学、おめでとうございまーすッ!!これから、入学説明会を執り行いたいと思います!学園長直々にだよ、ありがたく思いなね!」

    が、学園長?このヌイグルミが…?!

    「ちょっと!ヌイグルミって思ったやつ居るでしょ!違うよ、ボクはモノヴォルパー!この学園の、学園長なのだーッ!!」

    「モノヴォルパー…?姿を見る限り、ヴォルパーティンガーというやつか。」

    声の主を確かめると、神妙な面持ちの夜桜だった。

    「ヴォルパーティンガー?!な、なんだそれ………?!!」

    「角と翼の生えた、後ろ足のないうさぎのことだ。特徴は一致しているし、名前が酷似していたからな。……まぁ、ドイツに生息しているらしいし、白黒のうさぎなど聞いたことがない。そもそも、ヴォルパーティンガーはUMAだ。ワタシが言うのもおかしいのかもしれないが、存在するのは有り得ないはずだ。」

    「それはヴォルパーティンガーの話でしょ〜?ボクはモノヴォルパー!!UMAと一緒にしないでよねッ!!……えー、話が逸れちゃったけど、とりあえず言いたいのはですね……キミタチには、この学園で!永遠に!共同生活を送ってもらいまーす!!」

    「…………は?いやいや、ちょ、ちょっと待てよ…?!なんだよ、それ!?!」

    「なんだよってなんだよ!!言葉の通りだよ!」

    「いや、意味わかんねぇよ!!」

    「あ、出たかったら出てもいいよ?条件付きだけどね〜ッ!!」

    「じょ、条件……?」

    「そう!今から話そうと思ってたんだけど、ここから出たいキミタチの為に、"卒業"という制度を設けました!!条件は簡単、秩序を破ること………すなわち、人を殺すこと!………殺し方は問いません!!撲殺が好き?刺殺が確実?絞殺はコスパがいい?毒殺が楽チン?なんでもいいけど、お好きな殺し方で、お好きな相手を、お好きに殺してくださーいッ!!」

    「わ、わかったけどわかりませんよぉ…………ぼくたちが何をしたって言うんだぁ…………!!」

    さっき泣き止んだと思っていた葵がまた泣き始めそう言った。確かにそうだ、俺たちが何をしたって言うんだ……!!

    「………ねぇ、モノヴォルパー。その"お好きな相手"って言うのはさ、あなたも含まれてるの?」

    「そんな訳ないじゃーん!!モノヴォルパー、つまり学園長への暴力は原則禁止!うぷぷ!覚えといてねッ!!殺すなら、生徒の中の誰かを殺してください!!」

    「殺人なんて、する訳ないだろ………?!大体、なんでこんなことするんだよ、お前は…!!」

    「なんでって…はぁ、仕方ないなあ。お答えしましょう!ズバリ、『絶望』のため、だよ。」

    そう言ってモノヴォルパーは不気味に笑う。
    絶望のため?なんだよ、それ。あまりにもふざけてる。
    理解不能な状況が続いて今にも倒れそうになった。

    「だってさ!キミタチみたいな『希望』の象徴が、ここから出るためにコロシアイするんだよ?!最ッ高にエクストリームだよね!!まさに『絶望』的!うぷぷ……アーッハッハ!!」

    「……………だーーーッ!!モノヴォルパーだかなんだか知らねーけど、さっきから黙って聞いてりゃあ、調子乗ってんじゃねぇぞ!!」

    そう言って、一ノ瀬がモノヴォルパーに掴みかかる。

    「さ、さっきの話聞いてたぁ?!暴力反対!助けて!グングニルの槍ーーッ!!」

    「……………一ノ瀬!!」

    気づけば、俺の体は無意識に、多分今までで一番速いであろう速度で動いていた。
    俺は一ノ瀬に体当たりし、一緒に地面に倒れた。

    「…え……あ、あ………あぁあぁ…………ッ?!!!」

    「……あーあ。」

    「東雲くんっ?!!ち、血が…!!」

    「う、嘘だろ東雲…?!」

    「…………ッ僕が止血する!全員退け!」

    脹脛が熱を帯びているのを感じる。猛烈に痛い。どうやらさっき一ノ瀬を襲った「グングニルの槍」とやらは、俺の脹脛に突き刺さったようだった。視界が暗転し、更に激しい痛みを感じる。

    「し、東雲………?!くっそォ………オレなんて庇わなくても………!!!」

    一ノ瀬は無事らしい。……良かった、俺はツイてる。

    「クソ、患部が思っていたより大きい…!!誰か、大きめの布を…………!!…………いや、いい。」

    ビリビリと何かが破ける音がする。多分、瀬戸口が白衣を破いたのだろう。……あぁ、何やってんだ、俺。

    「患部を抑える。君が思うより痛いと思うが、我慢できるな?」

    「……ゔ〜〜〜〜〜〜ッ!!?!?!」

    有無を言わさず瀬戸口は布を押し付け、俺は声にならない声を上げる。あまりの痛みに呼吸が難しくなり、だんだん意識が遠くなる。鈴井の声が聞こえた気がしたが、何を言ったのか、聞き返すことも出来なかった。

    ………そういえば、感じる間は無かったと言えば無かったが、風が頬を掠めた感覚が今回はちゃんと残っていた。

    (なんだよ、これ…デジャヴじゃないか……)


    そんな事を考えながら、俺は意識を手放した。


    END
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