パンと煮込み料理と井戸端うっすらとした細い光が木窓から漏れている。
暖炉にはじりじりと熾火が燃え、薄暗い室内はほんのりと温かい。
太陽の位置がずいぶんと高く、もう昼に近いのだと知る。
少々寝すぎたらしい。
ぱちりと瞬いて、舞い踊る埃のきらめきを見つめる。
寝台からゆっくりと身を起こし、首を回せばごきりといい音が鳴った。
昨夜話ながら寝てしまったせいか。
隣を見ればばさりと畳まれた寝具。
気配が動いても気にせず寝ていたことが気まずく、寝乱れた月白の髪をくしゃりとかき回した。
人々の喧騒が遠く漏れ聞こえる。
ぱちりぱちりと意識を覚醒させるように瞬き、ヒュンケルはゆっくりと寝台から足を下した。
ひんやりとした敷物に淡く身震いし、横机の水差しを見る。
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