【飯PネイP】煙るバーカウンターにて/11トワイライト 十月も半ばに差しかかった月曜だった。急に打ち合わせが中止になった僕は、国道沿いの広い歩道を一人歩いていた。午後遅い穏やかな日差しの中、街路樹の金木犀が満開で、辺りは目の覚めるような香りに包まれている。
『Veil』のすぐそば、小さな植物園の前に差し掛かって、デンデの昼の職場がここだったと思い出した。途端、門をくぐる誰かが目に入る。長い手足に、柳葉のような膚……ネイルさんだ。僕へ気付くと、笑って手を振ってくれる。
「お仕事帰りですか? 店に飾る花を受け取りに来たんです。ご一緒しませんか?」
「お邪魔になりませんか」
「まさか。デンデも喜びます」
ネイルさんの言葉の通り、僕らを迎えたデンデはとても喜んでくれた。まずは花壇をひとまわりし、育てている花の説明をしてくれる。どの花もいきいきと咲いており、デンデがどれほど大切に世話をしているか伝わってくる。
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