触れられたい話「ねぇ、へべ…」
へべの細くて頼りない手首を掴む
「えっ…」
そして、ゆっくり、骨ばった手を
自分の顔の近くまで持っていく
「ちょっと、まって…!」
へべの指先は震えていて、視線を泳がせてる
手から冷たい汗が伝わってくる
恥ずかしさからくる照れよりも
怖さの方が上回っているような様子だ
しまいには、目を強く瞑って、俯いてしまった
「ねぇ、大丈夫だよ」
寝起きのときみたいに
ゆっくり目を開けようとするへべ
「僕は、そう簡単には壊れないから」
へべの手を自分の頬のあたりに持っていき、そのことを身体に実感させる
へべは、一瞬、ようやく視線を自分の方に向けてくれたかと思うと
驚いたときのように、目を見開き
また俯いた
「どうして…、こんなことをするの…?」
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