内番も昼食も既に終わり、男士たちもそれぞれ自由に過ごし始めた頃。
今日は、近侍として彼女と共に事務仕事をしていた。休憩の時間を迎え、お茶やお茶請けを用意して彼女の部屋に持っていき、さて休憩しようと気をすこし緩めながら座布団に腰を落とした、その時だった。
「はい、これ」
「ん…?」
僕の隣に腰を落とした彼女の頬は、ほんのりと、一斤染を溶かしたような色に染まっている。
おとこの身を得ている自分とはまるで似つかない、しろく細い指でおずおずと差し出してきたものは、ひとつの封筒。可愛らしい大きさで、桜の花の柄が透明に刷られているのが分かった。差し出されている方の面には、「水心子へ」と、流れるような綺麗な文体で書かれていた。
1475