無題 海藤が三日も意識を失っていた事件は、大量殺人と報道され、各地で話題をかっさらった。
長引いた出張から帰ってきた八神が東に聞かされたのは、どうやら海藤は今回の事件を引き起こした犯人に毒を盛られ、一時は予断を許さない状態だったらしい。
自分の不在時にとんでもない事件が起きた。
そんな事を思いながら、八神がフルーツの盛り合わせを持って病室に顔を出した時には、本人の意識は戻ってはいなかったものの、いびきをかいて寝ていたので安堵の息を漏らした。
簡単に海藤の容態を聞いたあとは、これ以上ここにいても仕方ないとその場を東に任せて事務所に戻り、苦戦した離婚調停の件の報告書をまとめにかかった。
なので、意識が戻った海藤から事件の詳細を語られている時、隣にいる赤髪の少年のせいで八神の頭にはちっとも言葉が頭に入ってこないでいた。
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