水よ花よ展示小説 四角いテレビの画面の中で、若い男女が見つめ合っている。今まさに告白が成就して晴れて恋人となった2人は照れくさそうに微笑み合ってからゆっくりと距離を縮めていき、そして──唇が重なった。
「ふむ…」
テレビの真正面に座った桜木が、勉強中にも見せないような真面目な顔で1人頷く。常の彼ならキスシーンなんて目に入ろうものなら気恥ずかしくてチャンネルを変えただろうが、今の桜木の思考は別のところへと飛んでいた。そもそも恋愛ドラマどころか他の番組すらとんと見ない桜木がわざわざテレビをつけ食い入るように見つめているのは、別に流行っているらしいこのドラマに感動しているわけではない。興味があるのは、恋人になったあとの2人がどう行動しているか、である。
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