🐟昼下がりの事務室。
魔法狂いの同僚が発表したばかりの論文を持って現れ、感想よろしく!と叫んで嵐のように立ち去ってから一時間ほど経つ。
カウチに腰掛けて読んでいたレンフレッドは、ひと段落したところで息をついて背を伸ばし、冷めたコーヒーを啜った。
長居する予定ではなかったし、温かいうちに飲み切るべきだったなと思いながら空にしたカップを置くと、視界の端で光を反射した水面がちらつく。
水槽にぼんやりと目をやっているうちに浮かんだ疑問を、レンフレッドはそのまま口にした。
「アドルフは魚が好きなのか」
キーをタイプする指の速度をさして緩めないまま、唐突な質問を投げかけられた部屋の主はうーん、と唸った。
「魚……?さかな……、が好きと言われると、どうなんでしょうか……」
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