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    マホロアかわいーーーー!

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    ──ぜんぶ忘れたぼくに残ったのは、きみだけだったよ。生きていてさえくれれば、もしも死ぬ運命でも生きて、ただ生きていてほしいだなんて、ぼくたちの神様への冒涜かもね。裏切りにも等しい。だからこれまでのぼくは誰かに生きていてほしいだなんて、思ったことが無い気がするよ。
    きみが、息をしてる、手を振ってくれる、笑顔で出迎えてくれる! 幸せそうなきみに心が奪われてしまった。──好きだよ、マホロア。

    厄介な来訪者と支配人「だって、顔が!顔が見えたんだもん!マホロアの!!マホロアはいないの!?」
    「困りますお客様、今彼はお休みされていて──」

    (エッ、何、何がアッタノ)

     楽屋から出てきた途端、耳に入ってきたのはそんな喧騒。この遊園地に相応しくない、泣き喚くような声。

    「やだやだやだ、マホロアの遊園地なんでしょ、会わせて! 会わなきゃ、安心できない、生きてるの!? 生きてるって、見せて!!」
    「お客様落ち着いて、えっと、えっと……支配人は生きてます、生きてますから!」

     ──どういう状況だ、コレは。
     ボクの思考は一瞬停止した。そののち、まず浮かんだのは「厄介な客が来たな」という感想。そして次になぜボクの生存を知りたがって泣き喚いているんだこのひとは、という疑問。観察してみよう、と、かれの様子を一通り見てみる。青み掛かった銀の髪、螺旋の冠、白い肌、青い目、白衣、妖精のような薄い羽、五本指の胴体から離れた手──その姿にはどこか見覚えがあった。……まさか、あいつが生きている? いいや、確かに一刀両断して彼は死んだはずでは? しかしそれでも確証はない?
     仕方ない、確かめるしかない。最悪、ボクには抗う力がある。
     ボクは恐る恐る、現場へと歩いていき、話しかけた。
    「お客サマ、ボクにご用カナ?」
    「……!!」
     キャストの真ん中で泣き喚いていた、華奢なその客はボクを見るなり目を輝かせた。

    「マホロア!! 支配人のマホロア、本物? 本物、だよね!」

     ボクの名前を呼ぶその高い声に、聞き覚えがあった。

    「キミ、さ。前会ったことアル……ヨネ」
    「!!」

     客は駆け寄ってきて、ボクを無言で抱きしめた。マントの隙間にかれの涙が染み込んだ。
     なれ果てたボクを閉じ込めて、そして記憶を取り戻させた張本人、決意のつるぎで両断した存在、そしてボクがココにいる理由のひとり。……生きていたのか。あの状態で。
    「……よかった、生きてる、息をしてる、血が流れる音が聞こえる、よかった……嘘じゃない」
     ボクの胸元で蚊の鳴くような声がした。
    「当然ダヨ、キミもソノツモリだったデショ」
     
    (それにしても、随分と小さくナッチャッテ)
     ──シュリ、と名乗っていた。初めて出会った時のかれは、腕と脚の長い、大きな生き物だった。今ではボクと同じような離れた手に、小さな体、妖精のような羽までつけてしまって、すっかりその面影もないが。

    (モシカシテ、ボクを追ってココまできたノ?)
     泣き止むまで抱きしめていよう。癪だけど、このひとはボクの恩人だ。涙が止まったら離してやろう、スタンプカードの一枚や二枚をくれてやって。

    「……アリガトウ、シュリ」
     しばらくして、ボクはかれを引き離した。
    「……記憶にある通り、きみは夢を叶えたんだね、良かった」
    「キオク?」
    「ううん、こっちの話」
     かれは微笑んでそう言った。さっきまで泣き叫んでいたのに、嵐のようなひと。

    (サッサとスタンプカード渡して入場料取ルカ)

    「それはそうと、お客サマ、入場料は払ッタ?」
    「……ごめんぼく、一文無しなの」
    「ハァ!?」

     まさかの無賃入場に乱痴気騒ぎに支配人呼び出し。迷惑コンボを決めきっている客に、ボクは心底呆れてしまった。

    「……あははっ、なんで顔してるんだい? そうさ、クラウンに呑まれたきみを助けて助けられて、ぼくは記憶も住処も職もチカラも失った! そして異空間を彷徨い、辿り着いた先がポップスター。そこでぼくの目に飛び込んできたのがきみの顔がかたどられた大きな建物さ。もはやこれは運命だね♡」
    「……クソッタレ!」

     演劇風に語られるかれの過去は悲惨そのもの。しかし態々ボクの昔の発言をなぞるように言うだなんて。なんてムカつく奴!

    「……でね、異空間での話も聞いてよ。ボロボロになってしまったぼくを迎えにきたのが、なんとあのローアさんだったんだ!」
    「ハァ!? ローア!? ナンデ!?」
     まさかの名前が出てきてボクは当惑した。かれはさらに話を続ける。
    「さぁ? でも事情話したら泊めてくれたの。ポlポップスターまで連れてきてくれたのはローアさんだよ。きみとこの遊園地作ったんだってね? 今度遊びに来るって。ランディアと一緒に」
    「ランディアも!? ウー、来ないデ……マジで」
     ボクは頭を抱え込んだ。酷いことをして謝れていない2人(ランディアは1人カウントか?)が来るだなんて、気まずいにも程がある。
    「すっごく嫌そうじゃん。……大丈夫、こんなに素敵な場所を作る人を許さない船もドラゴンも居ないよ。大事なお客さんなんだから笑顔で──」
    「マテお前、ソウダヨ、客ダヨ! 無賃入場はカービィ以外許してないノ、金払え」
    「ええっ……待って、わかった、ちゃんと払うから、あの、就職先斡旋してくれませんかね!? ここのことよくわかってないし家もなくて! 差し当たり、日雇いでも──」
    「……ハァ」
     つくづく面倒な客だ!
    「仕方ないナァ、暫くウチの楽屋に住んでていいカラ、街に行ってサッサと仕事見つけて来いヨ」
    「いいの!?」
    「楽屋3は空き部屋ダシ、ソファもアルカラ」
    「ありがとうマホロア!」
     かれはそう言って楽屋の方へ走ろうとしたが、人混みに囲まれて「わぁ」と声を上げた。
     そうだった。2人で話していると思っていたが、周りには客もキャストもいたのだ。しかもこの街の人たちのことだ、こういった感動の再会や茶番が大好物で、どこからともなくゾロゾロと集まってきてしまう!
     ガヤガヤと、彼らはボクたちの噂話をしているに違いない。
     
    (顔がアツイ!)
     ボクは声を張り上げて言った。

    「……散った散った! ミセモノじゃナイヨォ!」

     ……マッタク、ナンテ厄介な来訪者ダ!
     ボクはフードを深く被った。
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    マホロアかわいーーーー!

    DOODLE──ぜんぶ忘れたぼくに残ったのは、きみだけだったよ。生きていてさえくれれば、もしも死ぬ運命でも生きて、ただ生きていてほしいだなんて、ぼくたちの神様への冒涜かもね。裏切りにも等しい。だからこれまでのぼくは誰かに生きていてほしいだなんて、思ったことが無い気がするよ。
    きみが、息をしてる、手を振ってくれる、笑顔で出迎えてくれる! 幸せそうなきみに心が奪われてしまった。──好きだよ、マホロア。
    厄介な来訪者と支配人「だって、顔が!顔が見えたんだもん!マホロアの!!マホロアはいないの!?」
    「困りますお客様、今彼はお休みされていて──」

    (エッ、何、何がアッタノ)

     楽屋から出てきた途端、耳に入ってきたのはそんな喧騒。この遊園地に相応しくない、泣き喚くような声。

    「やだやだやだ、マホロアの遊園地なんでしょ、会わせて! 会わなきゃ、安心できない、生きてるの!? 生きてるって、見せて!!」
    「お客様落ち着いて、えっと、えっと……支配人は生きてます、生きてますから!」

     ──どういう状況だ、コレは。
     ボクの思考は一瞬停止した。そののち、まず浮かんだのは「厄介な客が来たな」という感想。そして次になぜボクの生存を知りたがって泣き喚いているんだこのひとは、という疑問。観察してみよう、と、かれの様子を一通り見てみる。青み掛かった銀の髪、螺旋の冠、白い肌、青い目、白衣、妖精のような薄い羽、五本指の胴体から離れた手──その姿にはどこか見覚えがあった。……まさか、あいつが生きている? いいや、確かに一刀両断して彼は死んだはずでは? しかしそれでも確証はない?
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