ゼンのために無茶をするかべ
「君の行動は独りよがりだ。実際、今回の件は君がこんなことをするまでもなく、」
「君がっ、アルハイゼンが怪我をするよりずっとマシだ!」
「カー、」
「わかってるよ! どうせ君は、僕の助けなんか必要なかった、勝手に行動して勝手に怪我をして、全部僕の浅はかな選択のせいだっていうんだろ。それでも僕は……例え間違っていたとしても、君を失うのかと思ったら怖くて仕方なかった……。頼むよ、アルハイゼン。君まで、いなくならないでくれ」
「カーヴェ」
「……」
「カーヴェ」
「な、なんだよ」
「はぁ。俺はいなくならないよ、カーヴェ」
「そんなのっ、わからないだろ……」
「確かに約束はできないな」
「っ、君は」
「だが、少なくとも君よりは上手くやっている。こんなところで死ぬようなことは絶対にしない」
「……そうかよ」
「それよりカーヴェ、君の方が……」
「僕が?」
「いや、なんでもない」
「なんだよ、気になるじゃないか!」
「そうだな、君が先輩らしい行動でも見せてくれるというなら教えてやらなくもない」
「き、みって、やつは……! っ、く、そっ」
「……泣いているのか」
「泣いて、ないっ」
「……ごめん」
「え、」
「俺だって、君を失うのは惜しいよ」
「……それは、僕が死んだら家賃も酒代も滞納したまま払われないからか?」
「君は優秀なのに、なぜそう馬鹿げた発想ができるのか。興味深いと言えなくもないが、この場合はただの愚か者の思考と言わざるを得ないな」
「な、」
「だいたい、その理屈で言えば君がいなくなれば俺は払われない家賃を待つ必要もないし、今後酒代を立て替える必要もなくなる。違うか?」
「それは……っ」
「君が家にいない夜はとても静かだ」
「……」
「静かすぎて、最近は少し落ち着かない」
「え、」
「俺が、誰彼構わず他人を家に住まわせる人間に見えるか?」
「見えない」
「そうだろうな。つまり、そういうことだよ」
「な、そういうことってどういうことだよ! おい、アルハイゼン……っゲホッ」
「これ以上は、その優秀な頭で考えてみる事だな。……今はひとまず、怪我の手当が先だ。もう立っているのもやっとだろう」
「は、ァ……、何なんだよ、僕は君が何を考えてるか、さっぱりわからない、のに……君ばっかり、ズルいじゃ、ない、か……」
「俺ばっかり、か。そうでもないよ、カーヴェ先輩」