原稿74.
いつもより早く目が覚めてしまい、隣にある温もりの元を見つめる。少し焼けた肌、真っ直ぐな眉、閉じた目の奥には深い海がある。青みを帯びた黒髪が、枕の上に広がっている。湿ったままで眠ったので、寝癖が酷いだろう。眉間に寄った皺を指で撫でながら、この男の見る夢を思う。
痛む腰を押さえながら、ベッドから抜け出した。昨夜は夢も見ずに、ぐっすりと眠ってしまった。開いたままの窓のせいで、室内の空気は清浄だ。事後の気配は消え去っている。床に落ちていた昨夜の下着に足を通した。
裸足のまま音を立てぬようにドアを開けて、キッチンへと向かう。食器棚の中から安物のグラスを見つけて冷蔵庫を開けると、賞味期限前の未開封のオレンジジュースを探し出す。勝手に封を切りグラスに注ぐと、甘い香りが漂ってきた。ジョルノは一気にオレンジ色の液体を胃袋に流し込む。
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