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    ゴミ箱

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    ゴミ箱

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    上から下へなぞるように、指先で胴体のやわらかい部分に触れる。一枚の薄い布越しに、ぴく、と震えが伝わった。ちいさな窪みを確認して、そこから少し上の位置で手を止める。ここだ。と印をつけるように柔く押し込んだ後、手をグーの形に変えた。肩にかけられた手は汗ばんでいた。

    「…本当に、いいですか」
    「いいから、」

    好きなタイミングで、好きにしていいよ。と熱を孕んだ目で、しかしどことなく青褪めた顔で微笑まれる。好きにしていいなら、今すぐこの行為を辞めさせてもらいたい。というのがグラスの本音だが、その主張が通らないことは重々承知している。溜息を押し込むように、静かに息を吸った。先ほど定めた位置に視線を合わせ姿勢を正す。拳を後ろに下げて、そして勢いよく突き上げた。

    「ぐッ」
     
    鈍い音が響く。めり込んだ拳をぐりぐり押し付けると身体が痙攣し始めた。条件反射から逃げを打とうとする身体を捩じ伏せるように何発か打ち込んでいく。

    「ぁがッ、う゛ぅう゛ッ、ひゅッ…」
     
    「うぶッ、ご、ぶッ、ごぼッ」

    「ぐ、うッ…ぐ、らッ、ぐ…ッ」

    力が抜けたのか、ふいにブライトの姿勢が崩れた。衝撃で前屈みになっていた身体を支えながらそっと床に座らせる。べちゃ、と吐瀉物が下敷きとなってブライトの衣服を汚した。虐め抜かれた胃はぎゅるると不快な音をたて、えずく声は止まらない。丸まった背中は震えながら胃の逆流を促進させ、舌を突き出したままの口が床を汚している。そんな様子を眺めながら、特に何をするでもなくぼーっと突っ立っていると、袖を弱々しく引っ張られた。

    「ぐら、ころし、てよ、」

    お願い。汚れた口元は息も絶え絶えで吐息混じり。汗ばんだ肌に髪が張り付いて、痛みと快楽で潤んだ瞳が見上げてくる。

    「…そうしたところで、何も変わりませんよ」
    「そう?…ふふ」
    「何がおかしいんですか…早く片付けを」
    「たってる」

    つつ、と下から上へ中心をなぞられた。座り込んだブライトの頭上では、苦しそうにズボンの布が押し上げられている。不意に訪れたちいさな快楽に戸惑い、ここで初めて自分が興奮していることに気づいた。そんな、そんな筈は。これは違う。

    「悪い子だ」
    「やめてください!こんなの、おかしいです」

    本当に嫌なら、殺してでも止めればいいんだ。先程までブライトの腹を虐めていた手で顔でも殴ればいい。この細い首を絞めて黙らせたらいい。のに、それをしない。つまりそういうことだ。本当はどうしたいのか、どう思っているのか。答えは頭上のソレが示してくれている。ブライトがそこに顔を近づける。口元の酸っぱい香りの他に、グラスの匂いが仄かに伝わってきて。痛みを孕んだ腹の下の、深い、深い部分が疼く。

    「…ぁ…、ね、グラス…すごい顔してる」
    「…ブライト博士こそ」

    興奮してるんだ、どうしようもなく。
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