ブレス 荒々しい発砲音が訓練場の湿気た空気を震わせる。
無機質な空間に確認できるのは見知った背中である。間断なく上がる重たい銃声はなんだかやぶれかぶれにも聞こえ、それがいっそう刺々しく鼓膜に突き刺さるようでジルは顔を顰めた。今さらこの男が躍起になって射撃の精度を高めようとしているとは思えない、おそらく訓練が目的ではなかろう。
「ここ空気悪くない?」
「ジル」
ジルに気づいたクリスがイヤーマフを外しながら振り返る。目が合うなり彼の視線が和らいだ、ということはマンターゲットに据えられた視線は相当剣呑だったに違いない。他に人がいないのはおそらく彼に配慮してのことだ。配慮というかおそれてというか。
「あなたってこういうところほんと変わらない」
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