ブレス　荒々しい発砲音が訓練場の湿気た空気を震わせる。

　無機質な空間に確認できるのは見知った背中である。間断なく上がる重たい銃声はなんだかやぶれかぶれにも聞こえ、それがいっそう刺々しく鼓膜に突き刺さるようでジルは顔を顰めた。今さらこの男が躍起になって射撃の精度を高めようとしているとは思えない、おそらく訓練が目的ではなかろう。

「ここ空気悪くない？」
「ジル」

　ジルに気づいたクリスがイヤーマフを外しながら振り返る。目が合うなり彼の視線が和らいだ、ということはマンターゲットに据えられた視線は相当剣呑だったに違いない。他に人がいないのはおそらく彼に配慮してのことだ。配慮というかおそれてというか。

「あなたってこういうところほんと変わらない」

もしも前世があるのならもしも前世があるのなら



もしも、もしも前世があるのなら、

私はあなたとどんな関係だったのか、

家族？恋人？友達？宿敵？それとも




出会ってすらいなかったのかな







目の前で幸せそうに眠る彼の顔を見ながら、
そんなことを考える。



ねぇ、あなたは前世の私と出会っていたの？

私はあなたを好きだったのかな

あなたの方は





私を好きだった…？





あなたといる今が幸せで、私を愛してくれるあなたが好きで、誰にも盗られたくなくて…




あなたは前世で違う女の子と結婚したのかな

子供はいたのかな

今より…幸せだったのかな



あるかも分からない前世にまで嫉妬する

きっと前世で彼に愛された人は、

これ以上ないほどに幸福な人生を歩めたのだろう




その隣にいたのが、私であればどれだけいいか