典包本 書下ろし分の進捗「いい加減にさ、なんとかしなよ」
盛大に溜め息を吐きながらそう言う加州清光の前には、漫画的に表現するならば「ズーン」という効果音付きで縦線を背負っている男がいた。
雑多な物置となっている蔵の片隅で膝を抱えているその男、大典太光世は、加州の呆れ声にも顔を伏せたまま、
「無理だッ!」
と悲鳴を上げて首を振った。
「も~、またそんなこと言って! 今日こそ大包平さんに話しかけるんじゃなかったの?」
そう言って大典太を叱咤するのは乱藤四郎で、厳しい言葉とは裏腹に、その顔は楽し気と言っても良い。恐らく乱は今のやり取りを〝少女漫画のヒロインを鼓舞する友人〟というポジションのようだと思っているのだろう。
加州、乱、そして大典太という組み合わせは、他所では少し珍しいかもしれない。何しろお互いにあまり接点が無い。
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