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    我楽(Garaku)

    @GaRaku_2DMobOji

    原神/崩スタ
    字書きにも絵描きにもなれなんだ腐女子

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    我楽(Garaku)

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    軍パロなヌヴィリオです。糖度は低め。Twitterのツリーに繋げて投稿していたものをまとめたものです。

    軍パロヌヴィリオ 当時戦災孤児であった俺は孤児となった瞬間、軍へと身柄を引き渡された。どうやらこの国は戦力が足りていなかったらしい。それこそ孤児を兵とする位には。
     同年代は数え切れない程いた。だがマトモに受けられない訓練に頻度の高い出兵。数ヶ月経つ頃には顔見知りは殆ど居なくなっていた。
     尤も、総数が減る事はなかった。なにせ失った分また追加すればいいのだから。
     俺はそれでも生き続けた。殆ど具のないスープを啜り、不味いレーションを咀嚼して、塹壕に身を潜め、そして死に物狂いで敵を殺した。
     18を超えた頃、漸く軍に正式に徴兵された。
     幼少期の約10年間を戦地で過ごしたからか周囲から奇異の目で見られたが特に気にはしなかった。
     正式に徴兵されたからには昔の様に人権のない道具の様な生活は免れるだろう、そう思っていた俺はどうやら世間知らずだったらしい。劣悪な国の軍は劣悪だ。そうに決まっているのに。
     軍服を着崩して、手を後ろ手に縛られたまま硬い地面に膝をつき、体を激しく揺さぶられる。好きでもない奴に無理矢理に体を拓かれ、その度に出そうになる悲鳴を歯を食いしばって噛み殺した。確か数人相手する日もあったか。隣には同じ様な目に遭っているお仲間もいて、自分を客観視した様な、そんな胸糞悪い気分になった。
     だが、俺が軍を辞める事はなかった。きっと辞めても今の国ではマトモな職につける気がしないし、軍も今はクソだが昇進さえすれば幾分かはマシになる。…なにより、俺には桁外れな膂力があった。
     少年時代、まだまともな兵ですらなかった頃、袋小路に追い詰められた事がある。
     銃は弾切れでナイフすら持っていなかった、相手も弾切れではあったようだが手にはナイフが握られていた。
     死ぬかもしれないという極限状態。息は荒く、瞳孔は限界まで広げられ、鼓膜には己の鼓動がうるさく響いている。
     相手がナイフを振り下ろしたその時、ぷつりと意識が途切れた。
     俺の自我を取り戻したのは手の痛みだった。グラグラ揺れて倒れそうになる体を必死に支えながら眼下を見下ろせば、そこには真っ赤な世界が広がっていた。敵兵の顔面はぐちゃぐちゃに潰され、四肢はへし折られている。当然息はなかった。
     痛む拳は血に濡れていて、己がやった事は明白で。鼓動を落ち着けることすらなく、恐怖に息を乱したまま自陣営へと逃げ帰ったのを覚えている。
     今同じ様な状況に陥った時、また我を失えばきっと昔よりも甚大な被害が出る。それに俺は今や立派な人殺しだ。まともに生活は出来ないだろう。
     戦って戦っていつかは戦場で野垂れ死ぬ。それでよかった。それでよかったのに。
     気がつけば徴兵されて十数年。今現在、俺は軍の幹部へと昇り詰めていた。我ながら自分のしぶとさには辟易する。
     そうか、十数年か、もうそれくらい経っているのか。だというのに、未だに俺達の国は戦争を続けているのか。
     リオセスリは幼少期から今まで様々な戦地を駆け抜け、そして何度も開戦と終戦を見届けてきた。だが国の戦績は言わずもがな、過去小さな国に一度勝った程度で、それ以降は敗戦続き。次敗けたならここはもう国とは呼べない代物になるだろう。
     今度の敵は自国の十数倍の国土と軍事力を持つ大国だ。敗色は濃厚。国のトップはついに狂ったのか?ああ、元から狂ってる様なものか。
     だがきっと、次の出兵で全てが終わる。こんな血塗れな人生にも終止符が打たれる。ならせめて華々しく散ってやろう。
     今までの人生を振り返って、リオセスリは軍帽を目深に被った。
     そうして覚悟を決めた数日後、戦地へ送られた兵は敵兵の波に消えて、拠点は悉く占拠された。


    ────────────────


     結果から言えば、俺の人生に終止符を打つ事は叶わなかった。敵軍の捕虜となり輸送される間、舌を噛み切って自害してやろうと考えたが、勘づかれた兵に猿轡をかまされた。
     収容所の檻へぶち込まれた時も食事や入浴以外は猿轡はかまされたままだ。当たり前といえば当たり前だが食事中も入浴中も監視がつけられ、自害しない様に見張られながら食う飯は味を感じなかったし、特に人にジロジロみられながら入る風呂は新兵だった頃の地獄を思い出してしまい気分が悪くなった。
     監視のついた食事や入浴に慣れた頃には口の猿轡は外されていた。最早生きる気力も死ぬ気力も湧かず、ただ毎日規則正しい生活を送るだけ。まるで自分が血肉で出来た人形になったかの様だった。
     俺が囚われてから一体何日が経ったんだろうな。数日?数ヶ月?最初は数えていたが今はもうやめてしまった。
     寝床に寝転がりながら収容所の天井をぼんやりと眺めていると、格子の外から俺の名を呼ぶ声が聞こえた。なんだ?処刑でもするのか。なら早く殺してほしいもんだ。
     両手に手錠をかけられ、数人の兵に銃口を突きつけられながら連行されてゆく。何かがおかしいと気づいたのは、護送車に乗せられた時だった。
     てっきり外に連れ出され処分されるのかと思っていたのに、いや、もしかすればおあつらえ向きに処刑台でも用意しているのか?
     揺られながら思考を巡らせるがそれでも確信を得られる答えは出てこない。そうこうしているうちに護送車は目的地に辿り着いた様で、揺れはぴたりと止まった。
     外の景色には当然ながら見覚えはない。だが、ここがどこかはすぐに分かった。
     拠点を占拠した敵軍の本拠地だ。


    ────────────────


     無意識に地形や屋内構造を観察しているのは過去の習慣か。手ぶらで敵兵に囲まれているというのに、俺の体は健気なものだった。
     再び銃口を突きつけられ歩を進まされる。立ち止まれば背中に脅すように銃口を押し当てられた。
     やがてたどり着いたのは扉の前。そのやけに重厚な作りに顔をしかめる。この扉の先には何が…誰が待っている?
     俺を囲む兵の1人が声を上げた。緊張からか顔は真っ青で、全身に冷や汗をかいている。
    「大元帥様、例の捕虜をお連れしました!」
     口にされた人物に思わず目を見開いた。
     大元帥。国の全軍を統括する人物。それがこの扉の先にいるというのか。
     自国を襲撃し、敗戦まで追い詰めた人物が。
    「──入室を許可する、入れ」
     全身の毛が総毛立った。悍ましかった訳ではない。恐ろしかった訳ではない。
     その声に酷く魅了されそうだったからだ。
     気を抜けば座り込んでしまいそうで、震える息を吸って大きく深呼吸し、扉の先に足を踏み入れた。
     広い室内の奥に配置された机、その奥にひとり、男が座している。
     腰まで伸ばされた銀髪に、透き通った紫水晶がはまり込んだ切れ長の目。纏う軍服はシミや皺ひとつなく真っ白だ。
     大元帥という呼称があまりにも似つかわしくないと、そう思うほどに美しい男がそこにいた。
    「捕虜の護送、ご苦労であった」
     男が口を開く。先程聞いた、凛とした厳かな声。足元に傅きたくなる衝動をぐっと堪え、目の前の男を見据え続ける。
     こめかみを伝う汗が地面へと落ちた。
     護衛に付こうとしたのだろう兵二人が男に近づくが、男はそれを手で制する。
    「諸君らは下がって良い、私はこの男と二人きりで話がしたい」
    「で、ですが大元帥様」
    「下がって良いと言っている」
    「…承知いたしました」
     その場にいた全ての兵が退室していく。中には俺を睨む輩もいたが、足を止めることはなく速やかに姿を消した。
    「あんたが、軍の統括か?」
    「いかにも、自己紹介がまだだったな。私はヌヴィレット、この国の大元帥だ。貴方は幹部のリオセスリで間違いないな?」
    「ああ、わざわざ国の大元帥がご苦労な事だな。なぜ敵軍の幹部である俺をここに連れてきた?…護衛すら残さずに」
    「急に連れてこられて混乱しているだろう。順を追って説明したいのは山々だが、国外の者、ましてや敵軍に内情を知られる訳にはいかないのだ。単刀直入に言おう」
     爛々と輝くアメジストがこちらを捉える。その視線には一切の揺らぎはない。
    「───我が軍に、加わる気はないか?」
    「…あんた、ふざけてんのか?」
     喉の奥から唸る様な声が出た。俺の国を敗戦まで追い込んだ上で、俺に軍門に降りお前に尻尾を振れと?ふざけるな。
     殺気や怒気を孕んだ声をぶつけられても相手は顔色ひとつ変えていない。流石はトップか。
    「真剣だが?冗談ひとつの為に捕虜一人を連行させるほど私は酔狂ではない」
    「いいや、あんたは酔狂な馬鹿だ。──なんせ敵軍の幹部相手に護衛もつけず二人きりで話すんだからな」
     後ろ手で拘束していた手錠を腕力のみで引きちぎる。勢いをそのままに机を乗り上げ男の首を圧し折ろうと拳を振り抜いた。
     だが首に手が届く寸前、首元に強い衝撃を受け勢いよく地面に叩きつけられた。
    「がっ、は、」
     衝撃で脳が揺れたのか意識が朦朧とする。痛む首を見やれば、杖の先端が首元に押しつけられていた。
     体を起こそうと両手に力を込めるが、杖はびくともしない。明らかに膂力が人間の範疇を変えている。
    「まるで獣の様な身のこなしだな。私でなければ命を落としていただろう」
    「っ、クソ…殺すんならとっとと殺せ。俺は寝返る気は無い」
    「最後まで話は聞くべきだ、リオセスリ。ただ裏切れと言って簡単に裏切る者が居ないのは私とて承知の上だ。交換条件を用意してある」
     未だ杖を突きつけ続ける男を見上げる。やはり顔色ひとつ変えていない。
    「お前がこちら側につけば、そちらの兵の無事を保証する。誰一人として処刑しないと誓おう」
    「──ッ、」
     この男は、俺が断れない事を分かった上で条件を叩きつけている。飲み込めば敵に手を貸す事になり、だが拒めば自軍諸共処刑される。そして俺たちを殺したところでコイツ等はなんのデメリットもない。
     完敗だ。認めよう。こちらにはなんのカードもない。あるのはこのクソッタレな現状だけだ。
    「…あぁ、分かったよ。あんたの軍門に降ってやる。あんたの犬になってやる」
    ──だから、せいぜい首輪を掛けていろ。
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