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    我楽(Garaku)

    @GaRaku_2DMobOji

    原神/崩スタ
    字書きにも絵描きにもなれなんだ腐女子

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    我楽(Garaku)

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    ヌが500年ぶりに目覚める話

    秩序の国、フォンテーヌ 微睡の中、ゆっくりと意識が浮上する。あれから何年が経ったのか、再び天理との戦いが始まり、そして敗れ、深い眠りについた日から。
     最初に感じたのは、冷たさだった。目を開ければ目の前に広がっているのは薄暗い闇で、身を包んでいるのは凍る寸前まで冷えた海水。昔のフォンテーヌの海は暖かかったはずなのに。
     海には巨大な氷が蓋をする様に浮かんでいた。水流を操りそれを退けて、水面から舞う様に跳んで氷の上に降り立った。
     ふう、と息を吐けばあっという間に凍りつき、風に混じってどこかへ流れていく。辺りは見渡す限り真っ白で、空は分厚い雲に覆われていた。
     私が倒れたのはフォンテーヌの筈だ。だが何故ここまで気候が変わっている?

    「…い!おーい!そこの貴方!大丈夫ですか!?」

     少し遠くの岸から声が聞こえる、どうやら私に呼びかけている様だ。恐らく遭難したとでも思われたのだろう。声がする方向を見やると、男が必死に手を振っていた。


    ────────────────


    「いや、驚きました。なにせ氷の上に人が居たものですから」
    「すまないな、気を遣わせてしまった」
    「いえいえ、ご無事な様で何よりです…ここフォンテーヌは、年中雪が降る程冷え込んでいますから」
    「…フォンテーヌだと?」

     聞き慣れた名に目を見開いた。フォンテーヌ?此処が?だがあの海は似ても似つかないではないか。
     そんな私に対し、男はにこやかに笑いながら甲斐甲斐しく丁寧に説明してくれた。

    「はい、なんでも500年ほど前に同じ名前の国があった様ですが、一度滅んだそうなんです。そして氷神様が現在の国を再建なさる際、再びこの名を国に冠したのです。街並みも模しているんですよ」
    「その氷神とやらはどこにいる」
    「氷神様は、中心都市フォンテーヌ廷にあるパレ・メルモニアにいらっしゃいます。お姿を晒すことは殆どありませんがね」

     男は不思議そうな顔で私を見つめている。何か?と問うと、少し申し訳なさそうに目を逸らし頭を掻いた。

    「ああ、失礼しました。恐らく貴方は異邦の方ですよね?」
    「…ああ」

     厳密には違うが、人間にとっては数百年前の人間もとい龍など、もはや異邦の者に変わりないだろう。すこし間が空いてしまったが、相手は納得した様だ。

    「やはりそうでしたか、国内であの方の事を氷神と呼ぶ方は中々居ませんから。中々奇妙な話なのですが…あの方は自身を氷神ではなく、こう呼ばせるのです」

    公爵、と。


    ────────────────


     私が眠りについている間プネウムシアは制御を失ったのか、そのエネルギーはとうに消え失せ、広大な異海源水は見る影もなく、白銀の氷海がそれに代わり国土を支える様に広がっていた。
     中心都市であったフォンテーヌ廷は未だに国の首都として繁栄していた。それだけではない、一度滅んだはずなのに、多少の差異はあれどあの男が言った通り街並みは昔のそれと何ら変わりなかった。
     フォンテーヌ廷の中心にはパレ・メルモニアが姿形を変えず聳え立っている。内装も殆ど同じ。受付のメリュジーヌでさえも。
     私を見つけた瞬間彼女は目を見開いて、涙をたっぷりと目に溜めた。

    「あぁ、あぁ!ヌヴィレット様!もう目覚めないのかと…」
    「すまない、セドナ。心配を掛けてしまった」

     それから少しの間、らしくなく泣きじゃくる彼女を宥めてやった。辛かったろうに、不安だったろうに。手のひらが撫でる頭は一回り小さく感じた。

    「長い間、本当にご苦労だった」
    「ありがとうございます。…私達が不安で押し潰されそうになった時、ずっとあの方が励ましてくださったんです。…ヌヴィレット様」

     セドナが顔を上げる。真っ赤に泣き腫らした目が、訴えかける様に私を見た。

    「あの方は、ずっとずっとヌヴィレット様を待っています。初めて出会ったあの場所で」

     彼女の言葉にこくりと頷き、踵を返す。向かうは歌劇場。私達が出会い、私達の運命が変わった場所。


    ────────────────


     重苦しい音を立て、巨大な扉が開いた。
     この場所も昔と変わらず、荘厳な空気に満ちている。
     中央の通路を下っていくと、舞台の前で一人、誰かが佇んでいるのが見えた。特徴的な癖のある黒い髪は一部分だけ青白く変色しているが、それ以外は何も変わらない。ダークグレーのコートも、それに掛けてある神の目も。
     駆け寄りはしなかった。ただ一歩一歩、噛み締める様に歩を進めた。

    「随分と遅かったな」
    「すまない、長い間待たせてしまった」

     ふわり、とコートのファーを揺らして、男が振り向いた。
     男は微笑んでいる。500年前と何も変わらない、温かさを秘めた氷の瞳を細めて。

    「秩序の神、リオセスリの名の下に…俺たちの再会を祝そう。おかえり、ヌヴィレットさん」
    「あぁ、ただいま。リオセスリ殿」
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