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    あーや

    @puruaya

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    ぶぜまつのらく描きとらく書き

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    あーや

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    にゃんちょぎとぶぜまつ前提で、にゃんが豊前に膝枕してもらう話。刀帳順個室の本丸です。

     その日の風呂と晩ごはんを済ませた南泉一文字は、寝るまでの暇な時間を持て余していた。一日中暇だったわけではない。毎日馬当番をしている。ふかふかの藁との戦いだ。最近はなぜか毎日、山姥切長義と馬当番に当てられている。長義は嫌そうにしているけど、南泉はそんなに悪くないと思っている。嫌そうにしている長義が、馬の反応を見て、小さく笑う瞬間を見つけるのが好きだ。
     昼間しっかり働いたんだから、夜くらいゆっくりしてもバチは当たらないはずだ。友達が少ないアイツも暇だろうから、俺が構ってやらなきゃな。なんて思って、南泉は長義の部屋の戸を叩いた。
    「おーい、俺だ。入るぜー」
     返事はない。戸に手をかけてみるが、鍵がかかっている。
     ふすまなのに、わざわざ鍵かけるんだよなアイツ。留守の間に物盗んだりするような悪いヤツ、この本丸にはいないと思うけど。
    「山姥切なら、いないぞ」
     声がした方向に振り返ると、縁側にひとり腰掛ける豊前江がいた。
     南泉は目を細めて、なんでお前が知ってんだにゃ、という顔で睨みつけてやった。
    「あるじに連れて行かれた」
    「あるじに?」
    「夕飯のすぐあと、ちょっと話がある、つってあるじが俺の部屋に松井を呼びに来てさ。山姥切にも声がかかって、ふたり一緒に連れて行かれたまま帰ってこない」
    「話にしては長くねーか?」
     夕飯といえばもう1時間くらい前の話だ。
    「そんでお前はここで松井の帰りを待ってたのかよ」「ああ。暇だから、星とか見てた」
    豊前の隣に腰をおろす。
    暇だにゃー。暇だからアイツのこと構ってやろうかと思って来たのに。
    「アイツら働きすぎじゃねー?」「だな」「あるじが働かせすぎなんだにゃ」「だよな」
    豊前は生返事でスマホに何か打ってる。
    その下の膝が目に入った。


    「山姥切長義」
    「なんだい松井江」
    「君の部屋に猫が来てるらしいよ」
    「…!」
    「早く終わらせよう」
    フフ、と小さく松井が笑う。
    十中八九、豊前江からの伝達だろう。
    「勤務中の私用連絡は程々にしてくれ」
    「はーい」
    悪びれない様子で松井が返事をした。

    仕事を終えた長義と松井が部屋に向かって廊下を歩いていると、豊前の部屋の前に人影があった。
    ふたりが来たことに気づいた豊前が手を振ったあと、人差し指を口の前に立てて、静かにするよう促し、下を指差す。豊前の膝の上には大きな猫がいた。
    すやすやと寝息を立てている。

    篭手切や桑名が膝枕してもらってるところはよく見るが、他の刀が膝の上にいるのは珍しい。
    長義はしゃがんで南泉の顔を覗き込む。
    「俺の膝よりも気持ちよさそうにしてるじゃないか」
    へえ〜お前も膝枕してんのか、と口走りそうになった豊前の肩を松井が叩いて、無言で制する。

    「ね・こ・ご・ろ・し・く・ん!」
    長義が7回、南泉の鼻の頭をつつく。
    「うるさいにゃ…」
     顔の前を飛び回る虫を払うような手つきで、南泉は長義の手を払い除けたあと、ぱち、と目を開けて、がばりと体を起こす。起きた勢いで南泉の頭が豊前の顎にぶつかった。
    「痛ってっ…」
     後ろにのけぞった豊前を、松井が後ろから抱き止める。
    「随分と気持ちよさそうに寝てたじゃないか」
     にこにこと笑っているが、笑ってない。いつも余裕綽々の山姥切長義の、意外と嫉妬深い面を見て、豊前と松井は目をぱちくりさせている。
    「ちが、これはっ」
    「何が違うのかな?」
     身に纏う布をバサリと翻して、長義が自室に戻り、戸をぴしゃりと閉める。
     慌てて飛び起きた南泉が長義を追いかける。戸を開けようとするが、ガタガタと鳴るだけでびくりともしない。
     そんなふたりを呆気にとられて見ていた豊前と松井。豊前がプッと吹き出したのにつられて松井も笑う。
    ふたり分の笑い声が聞こえてきて、
    「何笑ってんだにゃ!元はと言えばその膝が悪いんだからにゃー!」
    と豊前の膝に責任をなすりつけてくる。
     松井はその膝を優しく撫でた。
    「身内だけじゃなく、よその子もたぶらかすなんて、本当に悪い子だよね」
     松井は胸元のリボンと同じ青色で彩られた細い指先で、豊前の膝から太ももを、つつりと意味ありげに撫で上げる。豊前が息を飲む音が聞こえる。
    「松井も妬いてんの?」
    「ちょっとだけ」
     豊前は思わず口角を上げる。至近距離で見つめ合う松井の目が、キスしたいと言っている。それに応えようと豊前が顔を近づけようとした瞬間、「お前らそれ以上は部屋ん中でやれ、にゃあー!?」開かなかった戸が突然開いて、バン!と音が鳴る。
    内番服に着替えた長義が部屋から出てきて、廊下の向こうに去っていこうとする。
    「お、おい、どこ行くんだよ!」
     振り返りもせずに長義は2つ隣の部屋の前まで行き、戸に手をかける。
    その瞬間、南泉の顔がパッと笑顔になり、あとを追いかける。この瞬間は猫というよりも犬だった。尻尾を振るのが見える。
     南泉の部屋の中にふたりが消えたのを見届けて、豊前と松井は顔を見合わせる。
    豊前の上に半分乗っかる形だった松井がまず立ち上がり、コートの裾を整えている間に豊前も立ち上がる。ふたりも豊前の部屋の中に消えていった。
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