いろいろ2髪
「手前、髪伸びたな」
中原が太宰の上に手を伸ばした。肩より少し上辺りまで伸ばした黒髪に触れる。さらりと揺れた柔らかな黒髪から、仄かに香る花の匂い。シャンプーにも拘っているのだろう。
「ちょ、急に何」
「女みてぇに細っこい手足しやがって、だから敵に捕まったりするんだろ」
「はぁ?あれはそう云う作戦で……」
きめ細かい色白な頬に掛かる艷やかな黒髪を、靭やかな指先が掻き上げた。黒目がちの大きな瞳に、瞬く度、睫毛が揺れて影を落とす。胸の膨らみこそ無いが、女性と見紛うばかりの淡麗な容姿である。同性とはいえ、日を追うごとに女性らしさの増す相棒に、思わず息を呑んだ。
「そろそろ、髪、切った方がいいんじゃねぇのか」
「簡単に言うけれどねぇ、僕だって、好きでこんな事しているわけじゃないの!君だって髪を伸ばしているんだから、中也が女装をすれば、全ては丸く収まったんじゃあないか」
「俺だって御免だァ、女装なんて」
そうは云っても、此処まで様になるとは思っていなかった。マフィアの構成員、其れも最年少で幹部の座についた太宰治だとは、誰も思わない事だろう。
コンテナ暮らしだざは不健康な生活習慣を繰り返していた為に体調を崩しがちで、身兼ねたちゅやに拾われる。世話を焼かれている内に絆されて、ちゅやの家に入り浸るようになる。ちゅやが長期遠征に出る度に体調を崩すだざに手を焼いた首領が、2人を相棒とした。あれ程ちゅやを犬扱いしていただざが、実は世話を焼かれまくっていたとかめっちゃ可愛くて萌えるから、これは絶対小説化したい!!!!絶対!!!!!✨✨✨✨✨
低血圧
「…ざい、太宰」
「……ッ、うぅ」
数値が低血圧スレスレだからギリ正常範囲ってことでスルーされるだざ。朝起き不良は甚だしくちゅやに散々悪態をつき、食後の猛烈な寒気、極度の冷え性を訴え、頭痛、倦怠感、眩暈、立ちくらみで日々辛そうにする
劇薬
人通りの少ない道の曲がり角。其処は丁度、マフィアの隠し通路に繋がる裏道で、一般の人にはあまり知られていない筈だった。
「うおッ、」
不意に人にぶつかった弾みに、手から小瓶を滑らせた。
「不味い、其奴は……!」
何故、こんな時に限って異能のコントロールが効かないのだろう。そうでなければ、襲撃の可能性を鑑みて異能を発動していたのに、人にぶつかった程度で小瓶を落とす筈はないのだから。
「息を吸うなッ」
空中で掴み損ねた小瓶は陽の光を受けてキラリと光り、混凝土に当たってパリンと砕けた。慌てて口元をきつく抑えた。梶井曰く、其奴は試験中の揮発性の薬品らしい。