蘭方医安田の憂鬱 「はぁ・・・」
安田は、装飾の施されたドアを見て1つ溜め息を吐いた。
「失礼します」
コンコン、コン
躊躇いのある気持ちを表わすように、最後のノックだけが遅く感じた。中から静かに聞こえた入室の許可。もう一度、溢れそうになる溜め息を飲み込んでドアノブを捻る。
「安田?どうしたピョン?」
「お話が・・・」
***
安田がこの屋敷に来てもう1年になる。蘭方医として、まだ自立しておらず未熟な見習い医師の安田にとっては驚くほどの待遇の良さで雇われた。
軽く、雇い主の深津から話を聞いた。担当したのは、同じ歳の男子である宮城リョータ。
「よろしく・・・」
初診の際に酷く、疑り深い目で見られたのを覚えている。更に、この屋敷専属の安田の師が診察する際には小さく手が震えていたのを見逃さなかった。
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