錐で突かれる頭の奥が、重い。黒い火に炙られた肺が、壊れた音をしきりに立てている。ひりひりと焼ける喉は、呼吸も拒絶して痛みに呻く。汗ばむ灼熱の体がただただ心地悪くて、それでも動くのすらままならない。本来なら祭りの余韻に包まれるはずの夜の天井を力なく見上げながら、ロナルドは数も覚えていない咳をした。
(……最悪だ、何で、こんな時、に)
罅が入りそうに軋む肋骨の鈍痛に、顔を歪める。濁った汗が目に染みて、悪態混じりの息が漏れた。
本日は、常夜神社の夏祭りの日だった。吸血鬼退治人の恒例行事として、ロナルドは退治人仲間と共に、祭りの警備に赴く予定であった。けれど。
昨夜から、妙な寒気がしていたのを、覚えている。普段は存在すらも感知出来ない、不気味な冷たさを纏う熱だ。それをどうしても振り払えず、早々に休む結論を下したまでは良かったが、魘されて目覚めてみれば、既に病に蝕まれていた。
6158