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    mzk__mzk

    @mzk__mzk

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    INFO知人の本の表紙を書いたらprskを何も知らない知人が司類を書いてくれた。天才か???許可もらったのでシェアします……
     彼と出会ったのは、一年前の金曜日の夜のことだった。
     世間は花金だプレミアムフライデーだと騒ぐが、弊社にそんな概念は存在しない。仕事が終わっていないのに定時で帰ろうとする部下。無理難題ばかり押し付け、それが終わらないと怒鳴りつけてくる面倒な上司。間に挟まる僕に自由なんてものはほぼなく、ただ毎日家と職場を往復する毎日だった。
     鬱々とした気分で夜でも明るい街を歩き、逃げるように入った暗い公園。そこで一人、ショーを行っていたのが彼だった。
     それからというもの、彼のショーを見るのは毎週の楽しみになった。彼は様々な場所でショーを行っているらしいが、僕が見られる場所はこの公園だけだった。僕の他に客がいることは珍しく、ショーが終わった後に二人で話したこともある。どこからか騒ぎを聞きつけた警官と共に逃げたこともあり、変わらない毎日をただ藻掻いていた自分にとって、彼は麻薬のような存在だった。会社でどんな無茶なことを言われようと、週末になれば彼と話せると思えば耐えられた。僕はお前らの知らない、凡人とは違う彼と話せる存在だ。そして彼も、きっと僕のことを認めてくれている。僕が笑顔になれば彼も笑い、様々な夢を語ってくれた。彼がショーに掛ける思い、それは僕の中だけでの宝物だった。社会に揉まれて擦り切れた心に、彼の純粋な思いは痛いほど染みた。お金を出資したい、マンションを提供したいと言っても、彼は首を縦には振らなかった。そのこと自体は残念だったが、それもまた彼の良さだった。
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