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    Taranzar_Z

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    Taranzar_Z

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    割とノリで書いたサヨネ小説

    一応ここに置いておきます
    色んな人に読んでもらって評判良かったら…なんか考えます……

    ハート・トゥ・プラネット・ネモ第一話〈エリー、その声を聞いて〉

     奇跡は一体何を持ってそうするのか。
     当たり前も突き詰めれば天文学的な確率の元で成り立っている。
     生命を授かることに比べれば、くじ引きで特賞を取ることも大した奇跡ではないのかもしれない。

    「で、私が聞きたいのはなんでお前らがここにいるのかってことなのね」

    「お前とは失礼だネ。僕はカービィに会いに来たんダ」

    「お前こそなんでここにいるのサ?あんな空気の薄いところに比べたらここも大して居心地良くないだろう?」

     マルクとマホロアは怒りに震えるタランザを見てくすくすと笑っている。

    「いつになってもカービィが私から借りた本を返さないから堪忍袋の尾を切らして来てやったのね……!!!そしたらなんだ!!!カービィの家にお前たちが屯していて!!!!通れないのね!!!!!」

    「あーそれで怒ってたんだ、大変ダネェ」

    「くだらん世間話に花を咲かしている暇は全くと言ってないのね!!!用がないならさっさと玄関から消えて欲しいのね!!!!」

    「まぁまぁそうカリカリしないでヨ、カリカリ梅になっちゃうヨ」

    「やかましいわ!!!!」

     タランザはついにはマホロアの胸ぐらを掴んで怒鳴り散らかす。
     その様子を見ていたマルクは笑い止み、少し真剣な表情でタランザを見た。

    「なーんだ、坊ちゃんもカービィ探してたんだ」

    「探してた?いやまぁ探してたけど…お前たちも探してたってのはどういう意味なのね?」

    「別に僕たちがただただカービィの家に突っ立ってたわけないでしょ。僕も用があったんだけどどうやら彼は留守みたい」

    「留守!?はぁ…ここまで片道どれくらいかかると思ってるのね……」

     タランザは肩を落とし、ガッカリした表情で二人に背を向けた。

    「留守みたい、とは言ったけどすこし気になることがあるのサ」

    「……気になること?」

    「カービィの家、明らか誰かいるのサ」

    「は?留守じゃなかったのね?」

    「ああ、ノックをしても、名前を呼んでも返事すら返ってこない。返ってくるのは不審な物音だけ」

    「それって……居留守……?」

    「まぁ、そう考えるのが妥当なんだけど……そうすると……」

     マルクがスンっとめんどくさそうな顔をする。
     それと同時に、マホロアが話に割って入ってきた。

    「カービィがそんなことするわけないジャン!!!絶対誰か中に不法侵入してるんだヨォ!!!!」

    「ってなるのサ」

    「あー…だから玄関付近でぐちぐち話ししてたわけ……まぁでもマホロアの言いたいこともわからないこともないのね。私の訪問ならまだしも、お前たち相手に居留守使う必要は全くと言っていいほど感じられないし」

    「僕は正直どうでもいいんだけど、居留守使ってるなら使ってるでなんかイタズラでもしようかなって思ってたのサ」

    「性根が腐ってるのね」

    「筋が通ってるって言って欲しいのサ」

     玄関をじっと眺めるタランザ、その瞳には微かに魔力が宿っていた。

    「なんだいタランザ、透視なんて卑猥な魔法いつ覚えたのヨ」

    「覚えるに越したことはないのね。それに、お前らがぐちぐちやってるから見てやってるんだからちょっと黙るのね」

    「ははーん、バカだネタランザは」

    「あ???」

    「煙たいことがあるのにコソコソ企むのは悪手って言いたいんだ……ヨォ!!!!」


    ドガッッ


     大きな物音と共に、マホロアはカービィの家の玄関を殴り飛ばした。
     
    「品が無いのね……」

    「全くなのサ、これ後で怒られるのマホロアだけだからな」

     二人の言うことなんて知らないと言いたいのか、マホロアは堂々とカービィの家に入室した。
     だが、そこでマホロアが見たのは、あまりにも散らかった室内だった。
     それはそう、空き巣に入られたような。

    「おっと……これはちょっとまずいのカナ?」

    「何が?」

     マルクが顔を覗き込んで聞く。

    「居留守ではなさそうだネ」

    「……じゃあ、侵入者ってことなのサ…?」

     マホロアとマルク、二人の体に魔力が帯びてゆく様子をタランザは見ていた。
     タランザは一瞬とはいえ透視で室内の状況をある程度把握していた。
     室内の荒れ具合、カービィの不在、そして侵入者の存在でさえも。

    「クローゼットの中、カービィじゃない何者かがいるのね」

    「そのスケベ魔法も役に立つんだネェ……マルク……行こうカ」

    「卵は黙ってろ、僕が見に行くのサ」

    「何の取り合いなのね……」

     二人はジリジリとクローゼットの方へ近づいてゆく。
     二人が強い魔力を放つに従って、クローゼットの中から明らかな物音が鳴り始めてきた。
     そしてマホロアが力強くクローゼットの取っ手を握り、開く。
     すると、その中には一人の少女が蹲りながらガタガタと震えていた。

    「ン?女の子?」

    「どっちでもいいのサ、お前…何しにこの家に入ったのサ……!!!」

     問い詰められる少女はひどく怯えているように見えた。
     その姿を見てもマルクは鋭い眼光を途切らせることはなかった。

    「待つのねお前ら」

     タランザは二人の間に割って入った。

    「悪戯しに入ったならやってることは普段のお前たちと大差ないのね。そこまでにしてあげなさい」

    「僕たちがやるのと、このクソガキがやるのとじゃ話が違うのサ。カービィへの悪戯は誰にも渡さないのサ」

    「いちいち発言がきしょいのね。一旦黙れ」

     マルクはタランザをじっと睨みつけている。
     だが、それに打って変わってマホロアはすんなりとタランザの言うことを聞いた。

    「怖がらせてすまなかったね。私はタランザ、この家の持ち主の友達なのね。お詫びと言ってはなんだが、何か食べるものでも恵んであげよう」

     ガタガタと蹲っていた少女はゆっくりと顔をあげ、タランザの方を見る。
     タランザは少女に手を差し出し、にっこり微笑んで見せていた。

    「へっ…恵んであげよう〜だってサ。貴族ぶってんじゃねぇよ」

    「……部屋の荒れ具合を見る感じ、おそらく食べ物を探していたんだろう。明らかに食べ物が入っていないであろう場所…このクローゼットとか特にそうなのね。荒らされた痕跡がない。きっと君は、食べ物を求めてここに来たのね。そうだろう?」

     タランザが少女に優しく聞く。
     すると少女はコクリと頷いた。

    「君、名前は?」

    「……エリー」

    「そう、エリー……立てるのね?」

     エリーは再びコクリと頷き、タランザの手を取った。





    「えらく扱いが慣れてるネ。子供とかいたっけ?」

    「いなかったけど……欲しいとは思った事…あったり……」

    「じゃあどうだい?子供ができたカンソウは?」

    「…減らず口だなぁ、お前たちまで付いてくることはなかったのね」

     タランザはエリーの手を握りながらずっとまっすぐ続く道を進んでいる。

    「だって結局カービィいなかったんだモン。それに恵んでくれるんでショ?ゴハン」

    「おしぼりくらいなら恵んでやってもいいのね」

    「ケチだネェ…マルクはどう思う?」

     ベラベラと喋り続けるマホロアとは違い、マルクはずっとエリーを見つめて黙り込んでいた。

    「エリーとか言ったな」

    「……」

    「お前はなんでカービィの家にいたのサ」

    「……」

    「優しい奴にしか返事をしないのか?」

     エリーは変わらず黙っていた。
     無視していたわけじゃない、答えようとしたが口の中でそれが解けていくような、そんな感覚に襲われていたのだ。

    「マルク、お前は帰らないのね?」

    「なんなのサ、えらく帰って欲しそうじゃないか」

    「それもあるが、君がここにいる理由が見当たらないのね」

    「理由やら理屈やら、まさしくインテリ思考なのサ。タランザ、今日はなんだかお前の言葉が癪に障るのサ」

    「そうか、なら尚更なのね」

    「やだね、そのガキの素性が知れるまで帰らないのサ」

     あたり一体にピリついた空気が走る。
     マホロアはため息をついた。
     居心地の悪さに帰ろうかと思ったのだろう。
     「さようなら」を言おうとした時、細い声があたりに響き渡った。

    「……私はエリー…あそこは…私の帰る場所……」

     一行は驚いた。
     名前を呟いて以降、言葉という言葉を発してこなかったエリーがはっきりと応答したからだ。
     マルクもこれには目を丸くし、質問を続けた。

    「あそこはお前の家じゃないのサ。家を間違えたんじゃないのか?」

    「ううん…あそこが私の帰る場所……あそこにじっとしていなさいって……」

    「は〜?よくわかんないのサ……」

     マルクはさっきまでの睨み顔を崩し、あからさまに困ったような顔をした。

    「なぁ、マルク」

    「あ?なんなのサマホロア」

    「これはさっきから思ってたことなんだケド、このエリーって子、カービィの友達なんじゃないかなって」

    「カービィの?あー……」

    「迷子の子を拾ってきたのカモ。カービィ優しいし」

    「言われてみればそうとも取れるのサ…てことは……」

     二人は揃ってタランザの方を向く。
     すると、声を合わせて言った。


    「「うわー!誘拐だー!!」」


    「うるっさいのね!!まぁその可能性も全然ある…というかこの子が嘘ついてない限りそれが妥当なのね……」

    「じゃあ早くこの子をカービィに返さないト。カービィに怒られちゃうヨ!」

    「で…でも!この子が空腹で飢えてたのは事実なのね!!!困ってる人助ける行為には流石のカービィも怒らないはずのね!!!それに、食事が終わったらすぐ帰してあげるから!!!」

     タランザは二人の方を振り向き、必死に弁明している。
     しかし、二人は思いのほかニヤついており、タランザの目からは何か企んでるように見えた。

    「まぁ、お友達が消えて困ってるカービィも見てみたいけどネ♡」

    「そうなのさ♡」

    「……なんか私これに加担してるみたいで嫌なのね……」

     タランザは妙にテンションを上げてる二人を見て酷い嫌悪感を示した。
     エリーは黙って前を見ていた。
     日はもうすぐ沈もうとしている。
     そんな夕日を横目に、エリーは無表情のまま、ただ無情に進み続けていた。





    「なーんだ、結局奢ってくれるんジャン!」

    「そう言われると腹立つのね…せめてありがとうをだね……」

    「モー!めんどくさいなぁー!!」

    「何をどうしたらそこまでクズを極められるのね」

     無事レストランに着いた一同は周りの静かな雰囲気なんてお構いなしにベラベラと喋りながらやかましく食事をしていた。
     無論、二人を除いて。

    「このステーキ焼けてないのサ、焼くなら焼くではっきりしろっての」

    「そのステーキはレアなだけでちゃんと火は通ってるのね」

    「れあー?どうせならSSRのステーキ出せよ」

     マルクは嘲笑いながらタランザに言う。
     タランザは眉間に皺を寄せ、言いたいことをグッと堪えながら鮭のムニエルを丁寧にナイフとフォークで切り分け、口に含んだ。

    「ねぇ、タランザ?」

     エリーがそんな騒がしい二人を気にすることなくタランザに質問を投げかけた。

    「私、この道具の使い方わからない」

    「ん?ナイフとフォークの使い方?もしかしてお箸を使う地方出身なのね?」

    「わからない…いつも手で掴んでた。でもここじゃ誰もそうしない」

    「カービィはそもそも手使わないし、そう言う人もいるのかな…?エリーは空気が読めていい子なのね。じゃあエリー、私の真似をしてナイフとフォークを持ってごらん」

    「私、手6個も無い」

    「よく見て、2個しか使ってないよ」

     エリーはタランザの持ち方を真似てナイフとフォークを手に取る。

    「私が一回使ってみるから、その後に続いてやってみるのね」

    「うん」

     エリーはタランザの言葉に相槌を打った。
     タランザは慣れた手つきで料理を切り分け、上品に料理を食べ、よく噛み、そして飲み込んだ。

    「どう?わかった?」

    「…うん」

    「難しいよね、一旦やってみようか」

     エリーはその言葉に従い、腕全体を小刻みに振るわせながらナイフとフォークを使うのに苦労していた。
     すると、それを見たタランザは残りの手を使ってエリーの肘に手を添えた。

    「肘、張り過ぎなのね。もう少しリラックスして、軽く曲げるだけで良いのね」

    「う…うん」

    「それとそんなに大きく切り分けると一口じゃ食べきれないからもう少し小さく切る…ほら、後は口に運ぶだけだよ」

    「ありがとう…」

    「手が6個あるの、結構便利でしょ?」

     エリーはにこりと微笑む。
     タランザは添えていた手を離した。
     エリーが料理を口に運び、そしてまた同じように切り分ける姿を見てホッとタランザは安心した。

    「タランザは…私を歓迎してくれる?」

    「歓迎…?」

     エリーの言葉をタランザは少し不思議に思った。

    「歓迎…祝福みたいな…」

    「…よくわからないけど、君を拾った彼は誰よりも優しくて、ここに居る…私を含めた3人はその彼に助けられたことがあるのね。そんな彼に助けられた君…君を助ける義務はきっと私たちにもあるはずなのね。それにね、人助けは別に嫌いじゃないんだ。そうしてる間、昔の自分に慣れるような気がして……」

     タランザは昔を懐かしむよう、エリーから目を逸らした。
     エリーは依然として料理を見つめていた。
     そして、料理を見つめながら、ボソリとつぶやいた。

    「じゃあ私も…祝福する……」

     その言葉を聞き取りかけたその瞬間、タランザを含んだ3人は異常なほど強大なエネルギーを感じ取った。


    バシャーーン!!!!!!!!!


     レストランの窓ガラスが一斉に割れ、粉々になって床に散らばる。
     客の悲鳴、それと共に強いインパクトが津波のように4人に迫る。
     タランザは咄嗟にエリーの前に防御魔法を展開し、守ろうとした。
     マホロアもまた、同じようにして自信を守った。

    「タランザ!なんで僕も守ってくれないのヨ!!!」

    「黙って魔法に集中するのね…!一体なんだ…!?!?」

     マルクはじっと、エネルギーを発していた方向を見つめる。

    「よぉ!お前が犯人か??」

     割れたガラスをガシャガシャと踏み、誰かがこちらに近づいてくる。
     マルクはその気配にいち早く気づいた。

    「悪いが事を大きくしたくない、抵抗するなら手加減はしないぞ」

     暗闇の中から声がする。
     男の声だ。
     そしてその正体が光に照らされ明かされる。
     それは武装に武装を重ねた大男だった。

    「抵抗だぁ???それが今から泣きべそかく腰抜けのセリフかよぉぉ!!!!!」

     マルクは防御体制の2人を置いて1人で飛び出した。
     そして、その大男目掛けて飛び蹴りをした。


    ドガッ!!!!!!!


    「ぐぉ!」

     大男はその蹴りを両手で受け止める。
     だがあまりに強い蹴りだったのか、少し後退りしてしまった。

    「お前、敵だろ?何が目的なのサ」

    「歓迎されないってのは辛いな…あいつの気持ちがわかったかもしれねぇ……」

    「質問に…答えろ!!!!」

     そう言うと、マルクは大男を勢いよく蹴り飛ばした。

    「やるな!!!」

    「御託はここまでなのサ」

    「はっ!せっかちさんは嫌いじゃねぇぜ!!!!」

     大男はニヤリと笑い、グローブをキツく締めた。

    「ここは危険だ…マホロア!エリーを連れて早く逃げるのね!!」

    「なんで僕が!!!タランザがやってヨ!!!!」

    「私はマルクに加勢する!!!君じゃ役不足なのね!!!!!」

    「ああ!?!?お前ふざけてんじゃネェヨ!!!!!」

    「別に君の方が弱いって言ってるわけじゃない!!!適材適所を言ってるだけなのね!!!!!早く!!!!!!」

     タランザは必死に自分の言いたかったことを伝えるが、どうしてもマホロアには伝わらない。
     マホロアの魔法の多くは一人での戦闘を前提としている物が多い、それゆえ味方のサポートという面においてはタランザに劣る。
     マルクは火力特化、その代わりに超耐久を持ち合わせている化け物だが、相手の強さが未知数な以上、彼一人に全てを任せるのは得策ではないとタランザは考えた。

    「君たちさ、ちょっとノロすぎない?」

     タランザとマホロアの背後から聞こえる謎の声、二人はその気配に気づけなかった。
     即座にその声の方向に攻撃魔法の魔法陣を展開するも、その時には誰もそこにはいなかった。

    「こっちだよ、動揺してるね」

     また再び声が背後から聞こえた。

    「お前は…誰だ……!?」

     タランザが聞く。
     即座に攻撃をしなかったのは、エリーの苦しそうに悶える声が聞こえたからだ。

    「教えない」

    「なら質問を変える、その子をどうするつもりだ……!?人質にでもするのか……??」

    「残念ながら不正解、この子さえ手に入れば君たちの生死はどうでも良い」

    「おや、今度は答えてくれたのね?」

    「…何が言いたい?」

    「煙たいことがあるのにコソコソ企むのは悪手って…こと!!!!!!」


    ガッ!!!!!!!


    タランザは机の裏に隠していたもう二つの手で背後の男の首を絞めた。

    「後ろの眼って飾りじゃなかったんダ」

    「最初の振り向きがブラフだって気づけないのは三流なのね」

     男はエリーから手を離し、首を締め続ける手を必死に離そうともがいていた。

    「さぁエリー、早く手を取って……なっ!?!?」

     床に倒れ込むエリー、その手を取ろうとタランザは彼女に触れた。
     その瞬間、タランザは気づいた。
     騙されていたのは自分たちであったことを。


    ビリリリリリッッッ!!!!!!!!!


    「がぁっ!!!!ぐぐっっっ!!!!!」

     タランザの体に激痛が走る。
     それと共に目の前が真っ暗になった。
     マホロアは目撃した、タランザから発せられた青白い光、電気の如く走る衝撃、ばたりと倒れるタランザと、その手に握られていたエリーの姿を模倣したぬいぐるみを。
     そして、タランザに黒い棒を当てた張本人を。

    「も…もう一人いたんだネ……」

    「自己紹介はいらないな?」

    「教えてくれないんでショ?」

    「まぁな」

    「そいつ、僕の友達なんだけど…死んでないヨネ?」

    「さぁな」

     その声を聞き、マホロアは魔法で剣を取り出し、そしてその男に切り掛かった。
     だが男は動じることなく、その剣を持っていた黒い棒で受け止めた。
     マホロアは男のニヤついた顔を見た瞬間、剣から手を離した。
     すると、剣は電撃に包まれ、青白く光り出した。

    「コスい真似しやがっテ…!!!」

    「怒んなよ」

     マホロアは両手から魔法陣を展開した。
     そして攻撃を放とうと魔力を溜める。
     だが次の瞬間、マホロアを酷い脱力感が襲った。

    「ナニ…を……」

     マホロアもまたその場に倒れ込んでしまった。
     その後頭部には針が一本刺さっていた。

    「背中に不用心だね、こいつら」

    「蜘蛛野郎は背中まで注意向いてたけどな、まぁそれを突破しちゃうのが俺ってわけだ」

    「君のそれ、僕にも欲しいよ」

    「バーカ、俺だから使えんだよ」

    「まぁそっか。エリーは回収したよ。ここを離れよう」

    「そうだな」


    ドガーン!!!!!!


     建物から少し距離を置いた地点で爆破に違い衝撃が発せられた。

    「ナックル…あいつまた……」

    「ほっとくわけにいかないよね…ボスのお気に入りだし」

    「連絡入れるか……」

     数々の家屋を破壊しながら二人は互いの力をぶつけ合っていた。
     大男の顔は狂気を帯びていた。
     マルクの顔はもっと帯びていた。

    「お前よぉ!街一つ壊せるんじゃねぇか!?!?」

    「だからなんなのサァ!!!!!」

    「俺はな!!!星にヒビ入れる男だ!!!!!テメェとなら仲良くできそうだぜ!!!!!!」

    「星にヒビ入れる友達なら一人で結構なのサ!!!!!」

    「つれねぇなぁ!!!!!」

     夜の街に二人の笑い声が響く。
     互いに互いの攻撃を楽しんでいた。
     だが、大男は攻撃をやめてしまう。

    「チッ…なんでこんな時に限って……」

    「あ?」

    「…悪いが決着はつけられそうにねぇな……」

     そう言うと、大男の体が消え始める。

    「!?行かせるかよ!!!!」

     マルクが飛び込んだ時にはもう大男はいなかった。

    「クソっ!!!何がなんだって言うのサ…!!!!!」

     マルクはその場で地団駄を踏む。
     そして不意に空を見上げた。
     その空に、マルクは驚愕した。
     小さな光がちらほど空全体を埋め尽くし、それはまるで巨大な飛行船のようだった。
     ハルバートなんかよりももっと巨大で、果てしない。
     マルクの頭をよぎったのはギャラクティック・ノヴァだった。

    「いや…そこまで大きくはないのサ……」

     だが、その圧倒的な巨大さに、マルクはただただ後退るだけだった





    「ん…んぁ……?」

     目を覚ましたその世界は先ほどまでの景色とは違い、青く、明るかった。

    「もう朝…なのね……?」

     タランザは酷く体が傷んでいることに気づく、そして自分の寝ていた場所を見た。
     木屑やガラス片がちらほらと、ベッドの上ではないのは確かだ。

    「タランザ…起きたんだネ」

    「マ…ホロア……?」

    「ソリャ一番遅いか…一番ヒドイ事されてたし……」

    「マルクは…どうしてるのね……?」

    「先行ってるよ、僕らも行こうカ」

     タランザは未だ頭の整理が追いついていなかった。
     だが、マホロアに言われるまま店を出て、道をずっと進んだ。
     街を出て、しばらく進むと崖の上にマルクが立っていた。
     そしてその視線の先には、今もなお前進を進める巨大な飛行船があった。

    「あ…あれは……!?」

    「昨日のことは覚えてル?」

    「確か私たちは何者かに襲撃を受けて…そして……エリー!?エリーは無事なのね!?!?」

     タランザは昨日のことを思い出し、質問を投げかける。

    「無事かどうかは知らない。でもエリーは、あの船にいるのサ」

    「捕まえられた…のね…?」

    「ああ」

     マルクは静かに頷いた。
     それを見てタランザは、無言で前に進む。

    「どこに行くんダイ?」

    「エリーを助けに行くのね」

    「単身で?僕たちは昨日負けたんだヨ??」

    「じゃあお前たちは一緒に行ってくれるか?タダ飯食べただけの君たちにはそれほどの義理はないはずなのね」

     マホロアになんと言われようとタランザは止まろうとしなかった。
     すると、その姿を見てマルクは言った。

    「彼女は多分カービィの…何かだ。それを勝手に連れ出して、そんで攫われました…じゃ、カービィに合わせる顔がないのサ」

    「……」

     タランザはあえて黙った。
     単身で乗り込んででエリーを助けることができるとは思っていなかった。
     エリーを助けるには2人の協力が必要不可欠だ。
     でも、2人が名乗り上げてくれるとは思っていなかった。

    「義理はなくても…義務はあるってコト。カービィが留守なうちに事件を終わらせないとネ」

    「……そうなのね」

     風に靡くマントを見て、タランザはこれから起きることを予感していた。
     簡単じゃないこと、上手くいかないこと、その全てを覚悟した。
     それはまた2人も同じだった。
     空は決して晴れてはいなかった。
     それは雲を広げていた。
     
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