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    ich1_1111

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    ich1_1111

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    こういう新刊を出したい…間に合えば…!
    字下げとかしてなくて読みにくくてごめんなさい…
    ※11/23間に合いました!無事、本に出来ました~

    さめししが鬼ごっこする話カラス銀行主催の違法賭博、悪趣味なタッグマッチを制してすぐに重大な真実に気がついた。
    それはタッグマッチでのチームメイトでありオレの想い人である村雨礼二がオレのことを憎からず思っているということだった。

    ――つまり、オレと村雨は両想いだったということ。

    とうに気が付いていて状況を楽しんでいたであろう村雨に複雑な感情を抱きながらも、それを上回る喜びで口を開いた。
    「あのさ、気が付いてると思うんだけどよ」


     ◇  ◇  ◇


    「あの状況で振られるとは思わないだろ、フツー!」
    真経津宅のリビングルームに空しくオレの声が響く。
    「敬一君ダッサー!」
    「獅子神さんカワイソー!」
    次いで響いたのはオレに話の水を向けた二人――叶と家主である真経津の声である。表情は当然嬉々としている。
    オレが村雨に告白したことなど、この家にオレ達が踏み込んだ時にすぐ気が付いただろう。それが今更話題にあげられるとは。興味を引く内容ではないと思っていたが、どうやら暇つぶし程度にはなるという評価だったらしい。
    「本人の前で恋愛相談とは斬新だな」
    言葉とは違い、対して気にしていない様子なのは村雨である。
    そう、別にオレが恋愛相談のために召集したワケではないので普通に件の男も同席している。というかそもそも相談しているつもりなどなく――するならもっと適した相手にする――いつもの如くあれよあれよという間に勝手に暴かれてしまっているだけだ。腹立たしいことに。
    ちなみにきっかけは叶の『そういえば、どうして告白したのに付き合ってないんだ? 礼二君、敬一君のこと好きだよな?』という発言であった。ので、「やっぱりそうだよな⁉」なんて話題に乗っかってしまったのだ。腹立たしいことに!
    「まあ大体何て言われたかはわかるぞ」
    「ね。吊り橋効果、とかだろうね」
    ニヤニヤと笑いながら口にする様は、他人事だと思って完全に楽しんでいる。
    しかし、悔しいがまさしくその通り。オレの告白に対して返ってきたのは『吊り橋効果を知っているか?』という一言だけ。
    初めは断り文句だと思わず、マヌケにも村雨自身の想いについての照れ隠しだと思ったが、それを察した村雨に淡々と間違えようなく交際を断られた。
    だけど絶対におかしいのだ。どう考えても村雨はオレのことが好きなのだから。
    「だが黎明の言う通り、村雨君は獅子神君のことを好いているのにどうして交際を断ったのか」
    そう言って首を傾げたのは天堂だ。今日初めて会ったばかりの男にも〝そう〟見えているらしい。
    「そうだね。村雨さんは獅子神さんのこと大好きなのに、なんで振っちゃったの?」
    真経津は村雨の方を見て天堂と同じ方向に首を傾げた。無駄にお綺麗な顔が揃ってそうしているせいで、可愛らしさよりもあざとさを感じてしまう。
    村雨はそんな男共をちらりと見ることもせず、ただ淡々と口を開いた。
    「あなたたちは勘違いしているようだが、あくまで私にとって獅子神は友人の一人だ」
    ――いや、何回オレは振られればいいワケ?
    ふうん、なんて分かったような返事を頭につけて、真経津は続ける。
    「それって特別仲がいいって付くやつだよね?」
    「礼二君、ちょくちょく敬一君ち泊まってるもんな? 頻繁過ぎて既に恋人の頻度だと思うけど」
    言いながらぐるりと村雨の方を向いて、他二人と同じように首を傾げる叶。叶が並ぶと急にホラー感が出るのは何故なのか。
    「そう、それだよ」
    三対の、否、三人分の瞳がすべてこちらに向けられる。強すぎる目力に恐怖を感じる。
    けれどもオレの言い分を口にするチャンスは逃すまい。
    「付き合うのは嫌だっつーけどよ、もうオレらほとんど付き合ってるみたいなもんじゃねーの?」
    「私が友人だと言うのだから友人だ。特別仲の良い」
    村雨の眉根が面倒くさそうに寄せられた。心理的な距離の近さは認めるくせに、恋情だけは絶対に認めない。数多の行動が肯定しているにも関わらず、一体何故そんなに頑なに否定できるのか謎である。
    村雨礼二と言えど、己の恋を客観視することは困難なのだろうか。
    「……わかったよ。じゃあ、お前はそうでもオレはそうじゃないから泊まりに来る頻度落とせよな」
    悔しさから思わず吐き出した言葉に、村雨は思いの外素早く反応した。
    「なぜ? 告白を断ると関係すべてが清算されると?」
    こちらを向いた村雨は急降下した機嫌を隠さず、刺々しい口調で問うてくる。
    「……いや、そうじゃなくて、フツーは気にすんだろ、そういうの」
    「抽象的過ぎる」
    不貞腐れて言った言葉に意味など無かったため、内心慌てて返答を考える。
    どうせ流されると思っていたのに、まさか噛みついてくるとは。こういう小さな反応の一つ一つが正しく好意の片鱗だと思うのだが、本人に自覚はないのだろう。
    じっとこちらを見つめたまま返答を待つ男の視界の外、他のギャンブラー三人は楽しそうな笑みを浮かべていた。
    己の恋情に無自覚な男の様子を面白がっているのだ。ああもう、人の恋路を面白がるな、腹立たしい!
    「えーっと、つまりアレだ、オレはお前が好きなんだからもう少し警戒心を持てって話で…」
    「それこそ無用な心配だろう。あなたはそういう男ではないからな」
    とりあえず口にしたそれっぽい理由は、言い切る前に迷いなくきっぱり切り捨てられた。適当に取って付けた内容だったので当たり前の結果だが、好意を寄せた相手に信頼されていると思えばどうしたって嬉しいものである。
    「そりゃ、まあ、そーだけど…」
    「なら問題ないな?」
    ぼそぼそと返した言葉に被せ気味で念押しされる。
    オレの言葉が適当に繕ったものだと分かっているくせに指摘もせず、言質だけ取るって。お前、そんなにオレんちに泊まりてーの?
    「…問題ないけど、そうじゃねーんだよな…」
    「敬一君チョロいなー。信頼されて嬉しいって顔じゃん」
    叶の言葉にオレが反応するより早く「なにより、」村雨が再び口を開いた。
    「私と会うだけで嬉しいだろう、あなたは」
    にやり。不機嫌そうだった顔は、いつの間にかそんな擬音が似合う表情に塗り替わっている。
    「はあっ? 何言ってんだオメー!」
    「なんだ、違うのか?」
    意地悪く笑ったまま、こちらを射抜く様に見る目に耐えられず目を逸らして吐き捨てた。
    「うるせぇ! 勝手に言ってろ、マヌケヤロー!」
    「ねえ、コレ何を見せられてんの? オレ達」


     ◇  ◇  ◇


    「で、言った側から泊まるってさぁ…」
    「あなたは数時間前のことも忘れたのか?」
    自宅のガレージに愛車を停め、今更過ぎる言葉を零す。案の定、当の本人は片眉を跳ねさせて言外に〝今更か〟と示してきた。
    わかっている。真経津の家から帰ろうと乗り込んだ愛車に、当然のように乗り込んできた時にこそ言う台詞だったということは。
    けれど、それ――オレの家に泊まる、または送れという意思表示で、今回は前者だった――はあまりにもよくあることで、拒否する理由もなく、行きも同乗していたのだし、…つまりタイミングを逃してしまったのだ。
    「問題あるとかないとかじゃなくてさぁ…」
    「ないのではなかったか?」
    「だから、そういうことじゃないんだって。…それに明日は仕事なんだろ? このまま送ったっていいんだしよ」
    そう言いながらも、〝じゃあ送ってくれ〟と言われないことはわかっている。村雨の勤める病院は十分通勤圏内だし、病院まで車で送ることになったとしてもそう負担もない。今までもこんなことはよくあったのだ。それこそ〝今更〟だろう。
    うだうだ続く無駄話にそろそろ飽きられ、溜息でも吐かれて切り上げられる。そう思ったが意外にも聞こえたのは溜息ではなく、ふ、と小さく笑う音だった。笑う?
    「駐車した時点でそんな気もないくせによく言う」
    意地悪く笑う顔は完全に状況を楽しんでいる。オレが惚れた腫れたで右往左往している様を面白がっているのだ。
    そしてその、人の悪い顔に可愛げを感じるのは〝あばたもえくぼ〟というやつだろう。ハンドルに突っ伏して赤らんだ顔を隠してみるが、どうせこれも読まれているに違いない。
    「もーお前、ホントやだ…」
    あまりにもよくあることで、拒否する理由もなく、行きも同乗していたのだし、つまりタイミングを逃してしまった――のではなく、単純にもっと一緒にいたいだけだったのだ。どれもこれも全て見透かされている。
    告白からこっち、何も変わらない男に複雑な心境である。
    一世一代の告白、とは言わないが、それなりに腹を括ってしたのだ。少しくらい変化があったっていいのではないだろうか。
    お前、オレに惚れているんだぞ。声を大にして言いたい。

    ――お前、オレに、惚れているんだぞ!

    そんなことを考えているとやっぱり納得がいかない気持ちばかり湧いてくる。
    「なー」
    「まだなにか?」
    「ホントに付き合ってくんねーの?」
    少し首を起こして視線だけ投げてみると、村雨は平素の表情に戻り、口を開いた。
    「まだ言うのか?」
    文面だけだと冷たく感じるが、実際には単純に疑問を零しただけだ。呆れてはいない。むしろ意外、と言った方が近い顔。
    「あなたが私とどうなりたいかを口にするのは勝手だが」
    村雨は続ける。
    「私はそれに応える気はない、とだけ言っておこう」
    突き放すような声色ではない。振っているのではなく、ただ事実を述べている。
    オレとの関係が気まずくなるとか、そんなこと考えちゃいないんだろう。けれどオレのことを軽視しての発言というわけでもない。〝こんなこと〟で離れないと〝知っている〟のだ。そうだ、確かにそう。
    だけど一つだけ読み間違えている。
    村雨は今度こそ話は終わりだといった様子で、降車するためにドアを開けた
    「なるほどな」
    オレの声に村雨は、降りようと片足を車外に下ろした状態でこちらを振り返る。
    さすがにめげると思ったんだろ。諦めると思ったんだろ。だとしたら読み間違えている。
    ハンドルへ伏せていた身を起こし、両眼で睨むように村雨を見た。その顔は、自分の予想と違うオレの様子に少しだけ驚いている。
    そうだ。オレは諦めの良い人間じゃない。
    「オレがお前とどうなりたいか口にするのはオッケーってワケだ」
    「なに?」
    この勝負は恐らくオレの方にアドバンテージがある。
    「上等じゃねーか」
    あの村雨礼二を、出し抜くことが出来るかもしれない。
    「ぜってぇ自覚させてやる」
    己の恋心を認識出来ていないこの男に、恋心を自覚させてやる。それだけで出し抜くことが出来るだなんて、そんな機会はそうそうない。その一方で勝算は十分ある。
    だって、こんなに面倒な展開になっているのに村雨は喜んでいる。そしてその自覚がないのだから。
    「楽しい鬼ごっこの始まりだな、先生」
    「一人相撲の間違いだ、マヌケ」

     
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