BREAK TIME カラン、とドアベルが鳴った。
「おじゃましまーす……」
くろーずど、と手書きの札が掲げられたドアをおそるおそるといった様子で開けて入ってくるアルスを視界に捉え、戌亥は目を細めた。
「いらっしゃい、アルス」
まっすぐ戌亥のいるカウンターまでやってきたアルスは、他に客のいない店内を見渡してから戌亥へと戸惑ったように視線を向ける。
「ねえとこちゃん、お店閉めて待ち合わせに使わせてもらっちゃってほんとにいいの?」
「ええのええの、店長の道楽でやってるようなもんなんやから。いつでも気分次第で臨時休業よ」
常連さんもその辺わかってくれてるしな、と戌亥はからからと笑い飛ばした。あっけらかんとした、その全くもってなんでもないような言いようにアルスはほっと息を吐く。
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