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    melrose_E

    えれめんたるの某村に住んでるよ
    HLなうちよそのお話をupするよ。

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    melrose_E

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    転生ネタなうちよそです。
    現代日本をベースにした不思議世界なので名前とか気にしたらいけない。

    ゆめもまぼろしの類い どうして大学というのはこんなに空き時間があるのだろうか。そんなことを考えながら私は同じ授業を選択している友人たちの後ろをついて歩いていた。私は別に構内にある食堂で本を読んで過ごせればそれでよいのに、どうも友人たちは授業と授業の間にバイトを入れたり、バイトをするほどの時間がない場合は喫茶店に行ったりと忙しくしている。
     ファミレスよりもお値段が高くなるけれど、本当に美味しいお店と出会えるのは嬉しいのだけれど、友人たちはどうもそれよりも店員さんに夢中みたいで。お店までの道すがらどれだけ店員さんがかっこいいのか、素敵なのかを延々と語っている。まあいいんだけれど。気持ちはわからないではないし。
     ただ、私の中で一番カッコいい人はもうずっと前から決まっている。どんなにテレビや雑誌で持て囃されている芸能人を見たって私の心は揺らがない。ずっとあの人が一番。そんなこと言ったらどこの誰だってうるさく問い詰められるから言うつもりはない。
    (そもそも、私だって知らないし)
     神々に愛され、エーテルに満ちていたあの世界で生きていた時には想像も出来ないような世界に生れ落ちてからそろそろ二十年になる。最初は何が起こっているのかわからず混乱したし、両親をよく困らせていた。もっとも、幼稚園にあがるような年齢になった頃には今の状況を理解したし、諦めもついた。
     幸か不幸か、両親は私がよく知る両親だったし、あの世界では義理の弟だったあの子は本当に正真正銘私の弟として生れてきた。この世界でも可愛い。私とは全く似てないけれど、両親は気にしていないみたいだ。
     両親はあの時とは違って元気に過ごしている。弟が成人するのを待っていたかのように、一昨年から仕事と趣味であちらこちら飛び回っているけれど。突然「明日からちょっとイギリスに行ってくるね!」なんてこともよくある。
     両親が遠くに出掛けるのは少しだけ不安が過ぎるけれど、まさか前世で二人を失った時を思い出すから行かないでなどと言えるわけもない。弟は私がよくわからないけれど不安をになっているのがわかるみたいで、そんな日は友達と何かを約束していても断って私の側にいてくれる。
     あの頃も私が寂しい時、辛い時はそばにいてくれたなあ、なんて懐かしく思いながら歩いていたものだから友人に全く話を聞いていなかったのがバレた。
    「あんた本当男に興味ないわよねえ」
     呆れた声でしみじみと言われた。どうやらどれだけ顔がいいかを熱く語っていたらしい。ごめんなさい。
    「別に興味がないわけじゃないんだけど」
    「その割に全然話に乗ってこないじゃない。どうせこれから行く店の人も軽くスルーするんでしょ」
     多分そうだろうと今この場で言えば揉めることになるのは目に見えているから口をつぐんだ。本当に興味がないわけではない。私だってちゃんと彼女たちや過去のクラスメイトたちが騒いでいた人をカッコいいと思わなかったわけではないのだ。ただ私はその人たちよりも格好いいと思う人がいて、その人以外には騒ぐ気にならないというだけだ。
     これから行くお店とやらにいる店員さんがどれだけ顔が良いとしても、私が求めている人じゃないなら意味がないのだ。
    「素敵な人との出会いを待っているんだけどね」
     自分で積極的に探しているわけじゃないくせにこんなこと言っているから彼女たちも最近はあれこれ言わなくなってきた。それでもこうやって新しいお店を見つけたら連れていってくれるのだから優しい人たちだと思う。
    「ま、今日のお店はバイトさんがかっこいいだけじゃなくてケーキも美味しいから期待しててよ!」
    「それは凄い楽しみ!」
     甘い物が大好きなのは昔も今も変わらない。エオルゼアのお料理も美味しかったけれど、圧倒的に今の方が美味しい。正直美味しかったという記憶があるだけで味なんて覚えていないから本当に今のお料理の方が美味しいのかはわからないけれど。でもルカくんがこの世界にいたら大喜びでお料理を作っているだろうと容易に想像が出来る。
     ああ、ルカくんというのは私の旦那様だった人で。うさぎの耳が彼の感情を時々伝えてくれて可愛かった。うん、まあつまり私が誰よりもかっこいい素敵な人と思っているのはそのルカくんなんですけれど。だってみそっかすな私にたくさん優しくしてくれて、大事にしてくれて、愛してくれた。世界を救っちゃう英雄なのに、私なんかに捕まっちゃった可哀そうな人。
     そんな日々を覚えているのだから他の人を好きになるなんてないわけだ。ありえない。
     またルカくんが作ったごはんが食べたい。ケーキが食べたい。きっとすごく美味しい。だって前の私が嬉しそうに美味しそうに食べていたもの。あの世界では有名なレストランの料理よりも美味しいと言い切っていた。どんな味なのだろう。時々エオルゼアの夢を見るけれど、夢の中で食べたお料理の味を覚えていられたらいいのに。
     覚えていられないけれど再現は出来ないだろうか。そんな風に思考が飛んでいき始めた時、かろんと低いベルの音が聞こえて問題の喫茶店に到着したのだと気付いた。あまり大きくはないビルの一階。残念ながら、窓からはあまり店内の様子は見えない。壁には蔓植物が程よく茂り、夏場には涼し気かもしれない。雰囲気は好きだなあと思いつつお店のドアをくぐった瞬間息が止まりそうになった。いや、一瞬止まったかもしれない。つい、名前が口から溺れて出てしまったけれど、ほとんど掠れていたから本人の耳には届かなかったみたいだ。多分目の前の友人にも聞こえていないだろう。大きな声をあげなかった自分を褒めてあげたい。
    「いらっしゃいませ、三名様ですか?」
    「あ、もう一人いまーす!」
     今日の店を探してきた子が私の腕を引くと、人数の確認をする店員さんの前に突き出した。なんてことをしてくれるのか。私は慌てて頭を下げて自分の顔を店員さんから見られないようにした。大丈夫、店員さんは私よりも大きいから私の顔なんてよく見えていないはず。
    「四名様ですね、あちらの窓際のテーブル席にどうぞ」
     やわらかい声は聞き覚えがあった。聞き覚えがあるなんてものではない。ずっと夢の中で聞いた声だ。間違いない。
    「なに、どしたの?」
     ずっと俯いたままテーブルまで歩いた私に友人が声を掛けてくれたが声を出すのは怖い。もしかしたら、私と同じようにあの世界のことを覚えているかもしれない。そうしたらきっと声を聴かれただけでわかる。姿は違うからわからないかもしれないけれど、多分声は変わっていないはずだから。
    「え、っと」
    「わかった。そういうことか。ついにかあ!」
     ちらりと店員さんに視線を動かしただけで察してくれたみたいで、友人たちはにやにやとした笑みを浮かべた。ちょっと気に入らないけれど、でも騒がないでくれるのはありがたい。
    「メルにも春がやってくるか。頑張れ」
    「いや、いいの! そんなの求めてないの」
     長いお耳がなくても顔立ちは変わっていないし、身に纏う空気が彼が彼であると教えてくれる。あの頃彼が営んでいた喫茶店に似た雰囲気のお店で働いしてる彼はきっと今幸せだろう。左手に指輪が光っていることもないから特定の相手はいないかもしれないけれど。でもあの頃を覚えている私が付きまとうとどうしてもあの頃の彼を求めてしまうし、良くないだろう。彼はもう英雄でもなんでもない一人の普通の青年として生きているのだからそっとしておくべきだ。


     確かにそう思ったのに。口にした紅茶もケーキも友人たちが薦めるだけあって本当に美味しくて。私は誘惑に勝つことが出来ず、この店に通うことにしてしまったのだった。
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    Replies from the creator

    melrose_E

    DONE暑い日が続くので。涼しいお話を書きたいなってなったのです。
    あと純粋に新しい水着を仕入れたので…

    ヴィエラとララフェルのCPの小話。勢いで書いてるので誤字脱字等々ご容赦くださいな。
    眩しすぎるのは太陽じゃなくて 今日の朝ごはんは私が作った父さん直伝のドードーオムレツと、ルカくんが作ったパースニップサラダにウォルナットブレッド。ウォルナットブレッドは私が食べやすいようにちょっと小さく丸い。しかもほんのり甘い。私の大好きなパン。
     二人でキッチンに立って準備をした朝食は簡単なものばかりだけれど美味しい。何より二人で作って、同じものを食べる日々が楽しい。
    「ねえメルさん海に行かない?」
     オレンジジュースを口に含んだところで突然のお誘い。ちょっと驚いた。
    「この前新しい水着、買ってたよね?」
     確かに買った。去年貰った水着も嫌いではないけれど、先日タタルさんから譲ってもらった無人島で交易を頑張って頑張って頑張ってやっと勝った水着は上に半袖のシャツを羽織れるようにとセットになっていたから重宝しそうだなあと思ったのは確かだ。普通の水着と違って、そのシャツに合わせたショートパンツもあったから、海に入らないにしても暑い時にはいいかもしれないと思って。買ってすぐにルカくんに見せたのも事実なんだけれど。
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