夢を渡り歩く者 時刻は未明、午前三時。睡眠薬の魔力に意識を融かし、夢遊病者も孤独な舞踏に終焉を告げる頃。ノースディンはあてもなく深夜の街を彷徨いていた。
深夜の公園には誰もいないと踏んでいたが、本の頁を捲る音が静寂を切り裂いた。彼は不意に音の主に気を取られて視線を寄越すと、夜目の利く赤い瞳は忌々しいほどに明るい色を目視した。
ベンチで脚を組むYは本に視線を落としたまま、ゆっくりと吐息を吐き出すように言葉を紡ぐ。
「裸体は交流状態であって、それによって存在の可能な連続性の探索が明るみに出る。肉体は猥褻の感情を抱かせるこの秘かな行為によって、連続性に道をひらく。裸にすることは、それが十分な意味を持つ文明のなかで考察されるならば、死刑にひとしい」
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