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    aya_Heroine

    @aya_Heroine

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    aya_Heroine

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    モブ視点のエー監♀
    エース寮長設定です。
    後半少しだけ雰囲気注意。
    モブに自己投影して楽しんでください。

    .









     僕の前に現れたあの人は、まさに女神様だったのだ。




      憧れだったナイトレイブンカレッジに入学出来て早数ヶ月が経った。だけど実際入ってみたら、そこは勉強も運動も苦手な自分には厳しい世界だった。あまつさえ選定されたのはハーツラビュル寮。どうして自分なんかが、なんて入学式は闇の鏡を睨み付けてやろうと思った。寮長もいかにもな陽キャ人で副寮長の方が僕には好ましく思えた。しかもこの寮、なんでもない日のパーティとかよく分からないパーティを定期的に開催している。今日だってそのパーティに使うハリネズミが皆逃げ出してしまい、この薔薇の迷路まで追いかけて来たら自分が迷子になってしまったのだ。全くもってついてない。
     『……だから嫌だったんだ、ハーツラビュル寮なんて……』
     そうして一人ぶつくさと文句を垂れながら、途方に暮れつつある時だった。音も気配もなく、いきなり後ろから声を掛けられたのは。
     『……君、迷子? 見ない顔だから一年生……かな? あ、ごめんね。自分、怪しいものではないです! 脱走したハリネズミを追ってきたら迷子になっちゃって』
     いきなり現れ喋りだした人に遠慮なく誰だと不躾な視線を向けると、その人は慌てて説明してくれた。ちょこんと手のひらに乗っているのは、ハーツラビュル寮生ならば馴染みのハリネズミ。捕まえるのが大変だと聞いているが、すやすやと眠っている様は見ている分には可愛らしいものだ。
     『君、も迷子だったらここから抜けられないねぇ』
     『すみません……』
     申し訳なさそうに謝る僕にその人は、陽だまりのような温かみのある顔をして笑ってくれた。
     『大丈夫だよ』と。
     その瞬間、自分の脳が雷に撃たれたような感覚に陥った。一目惚れとは、多分こんな感覚なのではないかと、そう感じた。
     長く話す暇もなく、直ぐに寮長と副寮長が僕達を探しにやって来て、僕とその人は事なきを得た。
     『寿命縮むわほんと』
     『仕方ないじゃない。ハリネズミさん追いかけてたら迷子になっちゃったんだから』
     『……バカ。ハリネズミもだけど、お前がいなくなる方が困るっつーの』
     『……心配した?』
     『……した』
      その時は深く考えていなかったけれど、あのいつも澄ました顔をしている寮長が取り乱した姿を見せたのは、いつもとある人の前だけだったと後からになって気付いた。

      ――オンボロ寮の監督生。

     あの時出会った人が噂の監督生さんだったと知ったのは、パーティの最中だった。
     寮長や副寮長どちらかが常に隣にいたせいで会話を交わすことは出来なかったけれど、コロコロと変わる表情が魅力的だと思った。ドキドキと脈打ち始める自分の鼓動に、不思議とワクワクしていた。
     この学園に来て、初めて楽しい日々が待ち受けていたと実感出来そうだったからだ。










     「……まぁ、上手いこと行くわけないよな」
      パーティが終わって一週間が経過した。僕と監督生さんはあれから特に会うこともなく過ごしていた。元々学年も寮も違う。見かけたとしてもあの人の側には魔獣がいて、魔獣がいないと思ったら寮長か副寮長がいる。しかも他寮の寮長達とも監督生さんは仲がいいらしく、本当に誰かしらがあの人の側にいる。これじゃあ全く話しかける隙さえない。後々調べて分かった事だが、監督生さんは女性だということ。理由あって一年生の時にこの世界に迷い込んでしまったという異世界人。性別を隠しているわけではないらしいが、あの人は専らパンツスタイル。スカートを履いている姿は見たことがないらしく、プロムで着飾る姿は貴重らしい。……僕も見てみたい。
     「……好き、です」
     誰もいない中庭で、一人ぽつりと呟いてみる。一度自覚した恋心は止まることなくすくすくと育ち続けている。あの時話し掛けてくれた笑顔が忘れられない。こんなことならば、もう少し会話をしておくべきだった。……まぁどうせ僕みたいなのが認知されるはずもないけれど。
     でもこの学園にいる限りは見掛けることが出来るのだ。今はまだそれだけでも、なんて瞳を伏せた瞬間。
     「あっ、すみません! この辺でグリム見ませんでした?」
     「え……」
     声がしたのだ。忘れるはずがない。あの時と、同じ声。
     「ってあれ? 君、パーティで迷子になってた……」
     「ぼ、僕の事……覚えてくれてたんですか……?」
     「うん。君の瞳の色で覚えてた」
     「っ……!」
     そう言って風のように柔らかく笑った彼女に、胸が締め付けられた。ああ、やっぱりこの人のことが、好きだ。あの日、迷子になっていた僕を見つけてくれたみたいに、今日も僕を見つけてくれた。
     きっとこの人なら、僕の知らない僕をもっと見つけてくれる気がして。
     「あ、あの……!」
     「ん?」
     無防備にこちらに向けられた瞳と、下ろされている手。その手を取ろうと、勇気をだして伸ばした。あと僅かで監督生さんに触れそうだった時――
     「ユウ」
     「!!」
     「あ、エース」
     気配が全くなかった。突如として現れた寮長に、慌てて手を引っこめる。
     「グリム、デュースが捕まえたから。行くぞ」
     「流石だね。ありがとう」
     「あとお前直ぐどっか行くのやめろって言ってんじゃん」
     「ごめんって」
     目の前で仲睦まじくやり取りされる会話に、僕はただただ立ち尽くす事しか出来ずにいた。寮長が当たり前のように監督生さんの頭に触れる。僕には出来なかったことを軽々とやってしまう寮長に、僅かながら嫉妬した。
     「お前、ウチの一年でしょ? ちょうど良かった。夜、二十時にオレの部屋来てよ。一年生に話したい事あっからさ」
     「は、はい」
     「んじゃ、宜しく」
     「あ。またね」
     「! は、はい!」
     残念ながら監督生さんはそのまま寮長と共に行ってしまったが、僕は嬉しさで満ち溢れていた。監督生さんが、自分の事を認識してくれていた。それだけでも、今後自分と監督生さんに何かあっても不思議ではないと希望が持てるからだ。
     「っ……やった……」
     この時僕はまだ愚かにも気付いていなかった。後に待ち受ける出来事に、何一つも勘づいてなかったのだ。








     夜。昼間寮長に言われた通り僕は寮長部屋へと向かっていた。相部屋の三人は行かないのかと不思議に思ったが、もしかしたら一人ずつ呼び出しているのかもしれない、なんて呑気に考えていた。
     ハーツラビュルの寮長は歴代の寮長に比べれば規則的な方面では緩いらしい。一代前の寮長がガチガチに法則に厳しい人だったらしいが、そんな人が後継者にと選んだのが今の寮長だそうだ。
     (悔しいけど顔は良いんだよな、寮長……)
     パッと見ちゃらんぽらんで遊び呆けていそうな人なのに、行事ごとはしっかりとこなしている。
     そして、監督生さんとずっと一緒にいる人。そう思うだけでやはりムッとなってしまうのだから、僕は監督生さんが好きだし寮長は……嫌いだ。
     そんな寮長と今から二人で対面しなければならないのかと思うと気が滅入ってしまう。要件を聞いてさっさと帰ってしまおうと、目に見えてきた寮長部屋へ順調に足を向けていた。のだが。
     (……開いて、る?)
     寮長の部屋は他の寮生の部屋と違って一際奥にある。当然いつもは閉まっているし、一年生の僕なんかでは入る機会がない。だけど、今日に限って薄らと開いていた。仄かな明かりしかない廊下から漏れ出ていたのは、人の声だった。
     やっぱり他にも一年生が来ていたんだ。寮長と二人きりではなかったことに少しだけホッとして、意気揚々と近付いた。
     「っあ! あぁあ!」
     「っ!?」
     中から聞こえてきた声に、思わずドアの前でピタリと足を止めた。
     (なんだ、今の声は)
     ここは男子校であって、あんな、女の人の喘ぎ声が聞こえるはずがない、はずなのに。
     「ね、やらっ、今日、なんか激しっ……!」
     「ん、そーね。……頑張って」
     ギシギシと激しく鳴るスプリング音に、交わされるやり取りの声。この部屋の中で何が行なわれているかなんて、瞬時に気が付いてしまった。声の正体はもちろんこの部屋の主である寮長。そしてもう一人も、僕には聞き覚えがあった。否、認めたくなかった。だって、だって、これは。この声は。
     「意地悪……!」
     「まーね。ユウだけには、特別意地悪かも」
     「ひゃああっ」
     〝ユウ〟
     聞こえた名前に、否が応でも耳が反応して、胸が苦しくなっていく。僕に気付くことなく一層激しくなる行為。監督生さんの聞いた事がない女の人の声と、厭らしく響く水音。互いに名前を呼び合いながら影が深く重なり合う。
     「っ……」
     見ていられなくなって、僕はその場から駆け出した。現実を受け止めたくなくて、必死に逃げようとした。
     「……これで分かったでしょ」
     「……? エ、ース?」
     「ん、なんでもない」
     僕が逃げ出したすぐ後にこんな会話が成されていて、パタンとドアが閉められたのも気づくわけがなかった。
     寮長の呼び出しなんて、嘘だったんだ。あれを僕に見せつけるために、ワザと僕だけを呼び出したんだ。
     監督生さんは、自分のだからと。
     「うっ、うううぅぅぅっ」
     小さく咲き始めていた僕の恋の花は、花になる前にこうして呆気なく散らされた。
     部屋に帰って早々泣き喚いた僕に、寮生達がどうしたと慰めてくれて、そこから彼等と仲良くなれたのだけはいい思い出になった。
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