監督生は急いでいた。あながち何時でも慌ただしい生活を送っていると言われればそれまでなのだが、この時ばかりはトレインに見つかったら反省文が待っていると分かっていながら廊下を全力で走っていた。
次の授業までに1度寮に戻る必要があった。それも、誰ともすれ違わずに。
生徒があまり使わない通路を使うということは遠回りになる。だから、監督生はとにかく急ぐことに全神経を集中させていた。運動は決して得意では無い。息もきれている。
次の曲がり角を左に曲がれば学園の外に出れるという所まで来て、油断もあったのだろう。
気づいた時にはもう遅かった。
静かな廊下に響き渡る衝突音。
臀部の痛みを感じ、監督生はそこで初めて己が誰かとぶつかり尻もちをついたことを理解する。
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