愛の在処ver.2◆
胸の奥が痛いのだと、初めてそう伝えたのはいつだったか。
情報を敵に売ろうとしていた職員のことを伝えた時。公安がマークしていた思想犯の息子に近づき、入手した情報を報告している時。悲しいという感情も辛いという言葉もよくわからないままで、ただ、胸の奥にツキンと棘が刺さったような痛みがあった。
どんな些細なことも報告するようにと言われていたから、ホークスは感じたままを報告した。その時の担当の表情をよく覚えている。痛みを訴えるホークスに始めは慌てふためき、求められるまま説明をしていくうちにその表情は驚愕から悔し気なものへ変わり、そして、ホークスよりもよほど苦しそうな顔をして、冷たい手が頭を撫でた。
『すみません、ホークス……僕たちは、本当に、なんてことを』
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