「イオリ、イオリ、起きて」
かなり雑に体を揺さぶられ、そして「起きて」という命令の声に反応して、イオリはバチ!と音が鳴りそうなほど勢いよく目を開けて飛び起きた。
「ふみやさん、どうしました?お腹空いた?冷蔵庫にふみやさんの分のご飯あるから温めますね。デザートもありますよ。ちょっと待っててくださいね。あ、洗濯物あるならください。それから、」
ふみやはベッドサイドに立っていた。当然部屋は暗いので表情も服装も、体の輪郭ですらイオリからはぼやけて曖昧に見えた。それは冬の畑に意味もなく立てられたカカシのようにも見えた。
ふみやはイオリのマシンガン隷属トークを虫を払うように普通に遮る。
「うん。食べた。生姜焼き。あと牛乳寒天。うまかった。ありがとう。洗濯物もある。あとで洗って」
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