年明けの一幕「ああ、年が明けたね」
ワイルダー邸からでも広場の騒ぎや教会の鐘の音が聞こえる。しいなはゼロスの書斎の窓からカーテンを少しめくって貴族街の広場の様子を確かめる。
「まさか、仕事とはいえ、ここで年越しすることになるとは思わなかったよ。」
「俺様はうれしいけど?」
気づいたら窓越しに背後をとられている。少し嫌な予感がする。
「だってさ、このまま…」
窓に挟まれて、灰色がかった蒼い瞳が近づいてくる。
「姫初めができるでしょ」
嫌な予感は的中していたようだ。抱き抱えようとしているのか膝裏と背中に両手が近づいてきたのを察知してその手をはたく。
「いって!」
「仕事!終わってないだろ!」
「30分!いや、15分でいいから!」
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